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(3)保存活用の暮本方向

?舞鶴の赤煉瓦建造物群の現状
 保存活用のあり方を考える上でまず現在の赤煉瓦建造物群のおかれている状態を正確に把握する必要がある。それを保存活用面で整理すると次のようになる。
(A)既に保存改修され活用されているもの
  (赤れんが博物館、市政記念館)
(B)現在、使用され今後も引き続き使用されると考えられるもの
  (日立造船工場、倉庫、北吸赤煉瓦倉庫群、JR線鉄道構造物、その他)
(C)現在、未使用であり、放置すれば滅失が考えられるもの
  (旧北吸配水池、神崎ホフマン式輪窯、砲台跡、鉄道廃線部等)

 以上が、現状の置かれた状況といえるが、(B)と判断できるものについても経済活動の変化に伴い、(C)に移行する危険は常にはらんでいるといえる。
 また、舞鶴の赤煉瓦建造物群の多くが民間施設(自衛隊施設などもあるが、舞鶴市にとっては民間施設と同じ位置づけとなる)であり、今後の保存活用においては、民間協力が不可欠となる。

?赤煉瓦建造物群の将来像
 では、舞鶴市における赤煉瓦建造物群の将来あるべき姿はどういうものなのだろうか。これは、舞鶴市のまちづくりの方向と切り離せない課題である。舞鶴における赤煉瓦建造物群は全国で屈指の質と量を誇っており、それが、全面的に保存活用されることにより、その意義と特徴が発揮され、将来のまちづくりの核となるものと考えられる。そのためには、赤煉瓦建造物のそれぞれの置かれた現状を尊重しつつ、暮らし、生産活動の中で地域に息づく「赤煉瓦地域博物館(フィールドミュ一ジアム)構想」を将来像の柱とする。


赤煉瓦地域博物館(フィールドミュージアム)構想


 赤煉瓦地域博物館(フィールドミュージアム)とは、単に一つの施設としての博物館とは異なり、舞鶴市に展開する赤煉瓦建造物がそれぞれの置かれている立場のちがいを認めながら、保存活用に努め、地域(舞鶴市)全体を赤煉瓦建造物の博物館としていこうというものである。その中には、市の施設として保存活用されるものや、民間の手による利活用施設として再生されるもの、また従来の施設利用を建物保存しながら継続していくもの等種々が考えられる。そして、それらがネットワークとして位置づけられ、町全体に展開する赤煉瓦建造物の全てがそれぞれ地域の活きた博物館としての役割を担うことを目指すものである。

?保存活用の基本方針
 赤煉瓦地域博物館棚想を実現していくために基本方針を次のように設定する。

<全的保存を指向する>
 できるだけ現存の赤煉瓦建造物を全的に保存することを目指す。そのための保存方策を模索する。

<無理なく暮らしの中に位置づける>
 凍結的保存ではなく、暮らしや生産の中で活用されながら無理することなく保存を実現する。そのための方策を考える。

<市民とともに考える>

 赤煉瓦建造物を市民の財産として位置づけ、その保存活用のあり方を市民とともに考える。そのためのシステムを確立する。

 

 

 

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