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(4)保存活用を実現するために(いくつかの提言)

 以上の保存活用の基本方向に従い、調査委貝会としていくつかの具体的提言を行う。

?保存物件を担保にするために
今回の調査の最大の成果は、舞鶴市内にある全ての赤煉瓦建造物のリスティングを行ったことである。これを保存物件として担保していくことが望まれる。そのためには、前述した「赤煉瓦地域博物館構想」の市民的理解が前提となるが、担保方策としては次のことが考えられる。
<「(仮)舞鶴市赤煉瓦まちづくり要綱・条例」の制定 >
 この要綱・条例は、舞鶴市における赤煉瓦建造物を全て登録物件とし、登録されたものの改変には届出を義務づけるものである。居出に対して行政指導を行うとともに、できれば保存改修に対する助成措置或いは登録物件に対する税制優遇措置の検討が望まれる。
<登録物件の指定文化財への移行及び定期検診>
 登録物件の担保性をより強めるために、重要と考えられるものについては、市あるいは府の文化財指定としいくとともに、文化庁の「文化財登録制度」による「登録文化財」も活用する。また、市として、登録物件に対しては定期的に現状を把握する定期検診を実施する。
<面的保存の検討>
 北吸等集団的に赤煉瓦建造物が残存しているところについては、景観形成地区などの指定(景観条例等が必要)による面的保存方策も検討する必要がある。こうしたことにより、単体としてだけではなく面的なエリアでの保存担保が可能となる。面的保存の最も強いコントロールと助成は、「重要伝統的建造物群保存地区」の制度ではあるが、舞鶴市においてはむずかしい面もあるものの不可能ではなく一考の余地はあると考えられる。

?保存整備につなげるために
 現存する赤煉瓦建造物の中で既に未使用で破損が進みつつあるものや、将来的に改変が望まれるものも数多い。これらについては保存整備を図っていくことが望まれる。
<公共事業による先導的整備>
 公共が所有しているものについては、積極的に保存整備を図りたい。既に「赤れんが博物館」と「市政記念館」の2棟が整備されているが、引き続いて整備が望まれる。この時大切なことは、市民の二一ズを十分調査し、必要な施設として再生を図ることと各種補助事業を研究してできるだけその採用を行うこと及び維持迎営費をその施設で生みだすことを総合して考える必要がある。
<民間活力の導入>
 公共整備はその財源からみても限界がある。このため、ウォーターフロントなどにおいてはリゾート整備などの民間活力の導入が望ましい。民間利用となる場合はその経営的必要性から、活力ある施設となっている場合が多く、舞鶴市の活性化にも貢献する。阻し、基礎整備などの問題があるため、公共の面整備事業とタイアップする方が導入しやすいものと考えられる。施設内容に寄っては第3セクター方式も考える必要があろう。
<民間建物の保存改修の惟進>
 以上のある程度公共が関わる事業に加えて、数多くの民間赤煉瓦建造物の保存改修の自発的推進が不可欠である。このためには前述の保存物件の担保方策に加えて、各種助成措置の導入が望まれるところであるが、何より大切なことは、まちづくりの中で赤煉瓦建造物の価値を理解してもらい、それを活用することによるメリットを市民の協力の下に生みだしていくこであろうと考えられる。そのために表彰制度をはじめとする啓発・PR活動が重要視されるであろう。

 

 

 

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