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第2節 事業の軌跡
(1)高齢化社会の先駆的モデル施設「ケアポート」
 日本財団では1990年から5年間にわたって、高齢福祉先進国といわれる国々の専門家を招聘し「高齢者ケア国際シンポジウム」を開催してきた。
 これは、老人問題が加速度的に深刻になる日本の現状を踏まえて、医学者あるいは看護、ケアの専門家だけではなく、老人施設に働いている人々とも一緒に、大きく深く考えるべきであるという考え方に立って企画されたものである。
 その最終年度にあたる1994年には、同シンポジウムを通して、各国のさまざまな経験や取り組みについて学んだことや、日本の文化に根ざした独特の介護のありかたなどを議論し、「日本の高齢者ケアビジョン」をまとめ上げた。
 この成果を踏まえて、先進国の優れた事例を取り入れ、多様化する高齢福祉に対応するための機能を集約した未来型高齢者施設「ケアポート」の建設を行った。この施設は、全国3カ所に、異なった3タイプの高齢者施設として建設された。
 ケアポートは、福祉の総合施設としての機能のみならず地域住民のコミュニケーションの場としても注目を集めた。老人問題すべてを国や地方自治体に任せるという従来の考え方ではなく、ボランティア活動などを通じ、一般市民に対しても幅広い参加を期待する考え方を示した。オープンからこれまでに、三つの施設合わせて7万人を超える見学者が訪れている。
 長野県で(社福)みまき福祉会によって運営されている「ケアポートみまき」は、入所型のモデル施設である。当時は集団処遇型のケアが中心であったが、このモデル施設は全室個室型の特別養護老人ホームであり、個人の自立と尊厳を大切にした新しいケアの在り方として大きな波紋を呼んだ。
 厚生労働省は、2002年度予算から4人部屋主体の居住環境を抜本的に改善し、個室・ユニットケアを特徴とする「居住福祉型の介護施設」としての特別養護老人ホームの整備費補助を行っている。ケアポートみまきの構想は、その10年以上前のことであった。
 また居住ゾーンを備えた通所型のモデル施設として、島根県の(社福)吉田村福祉会によって運営されている「ケアポートよしだ」は周囲の自然や家並みの調和を考えたデザインで、シルバー大学なども併設されている。未来居を見据えた過疎地型デイサービス施設のモデルとして全国から多くの見学者が訪れている。
 この2つの施設のほか、先行して建設された富山県の「ケアポート庄川」も、地域と高齢者福祉のあり方を問い直す、大きなきっかけとなった。
 
高齢者のニーズに応じた様々な機能が集まる
「ケアポートみまき」
 
「ケアポートよしだ」で行っている自立的高齢者のための「転倒予防教室」
(2)地域で暮らす豊かな人生を
  〜福祉車両の全国配備
 目前に迫った超高齢社会に備え、社会福祉基礎構造改革が進む中、社会福祉分野での日本財団の新たな展開として、在宅サービスを中心とした事業に力点を置くことに移行する方針を打ち出し、1999年から日本全国の多くの体の不自由な高齢者、障害者等に利用してもらえる福祉車両の配備を開始した。
 本財団の統一デザインによる福祉車両の配備事業は、ボランティア支援部において車いす対応車の配備を1994年度から開始し、1998年度までの5年間に合計511台の車両の配備を行っていた。環境福祉課としては、1999年度から訪問入浴車の募集を開始。それを機に、これまでのデザインを一新し、2001年度までにボランティア支援部と合わせて3,930台の配備を行った。
 2000年4月に施行された介護保険制度の影響などにより、地域福祉においては、利用者側がサービスを選ぶように変わりつつある。このため、地域で暮らすために必要不可欠なこの福祉車両には多くの助成要望が寄せられている。こうしたニーズに対応し、2001年度には車いす対応車、訪問入浴車のほかに、8人乗りの送迎支援車およびホームヘルパーが効率よく活動できるための介護支援車を新たに加えた。さらに、2002年度には29人乗りのマイクロバスを増やし、車種も充実させ、増加する新たなニーズに対応している。
 
在宅介護支援事業で活躍する訪問入浴車
(3)「街に暮らす」
  〜知的障害者福祉研究会
 日本財団の知的障害者関連施設への助成は、施設助成全体の半数以上を占めるに至った。このことは、本財団の直轄事業として取り組んだ「知的障害者福祉研究会」の考え方が基礎となっている。
 知的障害者福祉の分野では長年にわたって、対象となる障害者を、施設の中で親に代わって、社会の偏見と差別から守っていこうとする施設収容保護型が中心となっていた。そのことが結果的に長い間、社会とは隔離された状況をつくってしまっていた。しかし、1981年の国際障害者年を境に大きく変化し、障害を持つ人も、持たない人も、共に生きられる社会づくりをしようという考え方が、社会での主流となってきた。
 我が国でも「地域で共に生活する」「社会的自立の促進」「バリアフリー化を促進する」等の視点から、地域生活というものを中心に据え、障害者本人の社会参加、あるいは要望に基づいた取り組みや、自立を積極的に支援する方向が、遅まきながら1995年に策定された障害者プランに掲げられた。
 本財団では早くからこの問題に着目し、1993年にはアメリカにおけるグループホームや援護就労に関する実情調査等を経て、「新たな支援システム」「将来的に求められる施設の在り方」等をテーマに、学界・団体・職場・保護者等それぞれの立場で活躍の方々を結集した「知的障害者福祉研究会」を発足させ、北欧など先進国の試みや、我が国固有の問題点や課題について、さまざまな角度から討議を行い、具現化してきた。
 1995年には、その研究成果を踏まえ、決定基準外においてグループホームの建築に支援することを決定した。また、入所施設を全廃して、障害者とともに共存しているスウェーデンの実態や日本での現状や先駆的な試みを紹介したビデオ「街に暮らす」を制作。このビデオは、多方面から反響を得、知的障害者福祉全般を見直すきっかけとなり、今日に至っている。
 2003年4月から、長年続けられてきた障害者に対する措置制度が廃止され、支援費支給制度となる。この利用契約型の福祉サービスによって知的障害者福祉を取り巻く環境も大きく変化し、今後ますます障害者本人による、それぞれのスタイルを選択できるような自立環境が求められてくることが予測される。
 本財団としても、そうした需要に対して積極的かつ柔軟に対応し、有効な支援を考えていく方針である。
 
知的障害者の自立のあり方を提言したビデオ
「街に暮らす」
(4)我が国初の盲導犬に関する調査
 盲導犬は、視覚障害者の外出時の誘導に重要な役割を果たしている。しかし、我が国の盲導犬育成・貸与事業については、これまで社会福祉関連法令に何も規定がなく、実態のみが先行してきていた。そのため、これまで盲導犬を取り巻く状況などについて正しく知るための資料が少なく、盲導犬の育成や普及について妨げの一因となっていた。
 1998年、日本財団は、このような状況に着目し、その現状と課題そして今後あるべき方策についての委員会を設置し、盲導犬に関する調査を実施した。特に初年度に実施したアンケート調査は、盲導犬訓練士や盲導犬使用者など盲導犬に関わる関係者すべてを対象とし、我が国初の盲導犬に関する資料となった。日本で初めて盲導犬育成事業が開始されてから、現在約850頭の実働犬数に達しているものの、潜在需要者は約7,800名いる実態などが、この調査で明らかにされた。
 2001年には、社会福祉基礎構造改革の1つとして社会福祉法に盲導犬訓練施設が法定化され、盲導犬事業をより飛躍させる意味で非常に時宜を得た調査であった。
 調査から、1)盲導犬訓練施設の供給体勢の改善、2)盲導犬に対する意識の向上、3)盲導犬の快適な利用環境の構築などの課題が浮き彫りにされ、委員会は課題別に3つの分科会を設置し、検討を深めた。
 その後、本調査を基に(財)日本盲導犬協会を通じて、盲導犬を広く理解してもらうためのハンドブックの作成や、盲導犬訓練士の養成にかかる事業などを実施した。
 
法律が整備され、さらなる活躍が期待される盲導犬
(5)終末医療を充実させQOLの向上をめざす
  〜ホスピスプログラム
 ホスピスとは一般的には、末期のがん患者やエイズ患者の緩和ケアを行う病棟施設や、訪問看護などによる在宅での緩和ケアプログラムのことを言うが、それを支える理念や運動のことも含めて総称してホスピスと呼んでいる。
 死を間近に控えた患者に対する末期医療については、治療よりも心身の苦痛や不安をできるだけ軽くし、残された人生の質を高める援助に重点を置く必要があり、患者の人間としての尊厳を守る医療の見直しが社会的に叫ばれ始めた。
 ホスピス・緩和ケアは、治療不可能疾患の終末期にある患者および家族の生活の質(QOL)の向上のために、医師、看護師、ソーシャルワーカーなどの専門職やボランティアが協力してつくったチームによって行われるケアである。そのケアは、患者と家族が可能な限り人間らしく快適な生活を送れるように提供されている。
 専門職や家族、ボランティアなどを加えたチームによって、温かい雰囲気をつくり、余命を安らかに過ごすための施設として広がり始めたのがホスピスであり、国内には103施設(2002年6月現在、厚生労働省承認施設)がある。
 その数は徐々に増えつつあるものの、がん患者数なども年々増加しており、今後は施設の供給不足が予想される。それを補う面から、現在、在宅型ホスピスが着目され始めているが、介護の負担や医師が常時近くにいないという不安など、多くの問題を抱えている。
 また、ケアについても家族の精神的・身体的な苦痛、本人への告知、スタッフの質・量の不足などの問題に対し、さまざまな角度から、さらに検討されなければならない。
 このような状況の中、日本財団では「ホスピス研究会」を設置し、この分野において、現在活躍している専門家の協力を得て、先進諸国の試みや、我が国固有の問題点や課題について検討し、今後求められる日本の地域や文化等に根ざした独自の取り組みについて、ソフト・ハードの両面から研究を行っている。
 特に、同研究会において、質の高い看護職の育成が急速に必要になってきているとの提言を受け、1998年度から(社)日本看護協会(※1)および(財)笹川医学医療研究財団(※2)と協力し、終末期ケアの現場で質の高いケアを実践し、かつ指導者的役割を担える看護職の養成支援を行ってきた。研修を終えた約600名の看護師(ホスピスナース)は、全国の各医療機関等で活躍している。
※1 (社)日本看護協会:同協会が行う「認定看護師・緩和ケアコース」に対して支援を行う。
※2 (財)笹川医学医療研究財団:同財団を通じて、全国8カ所(東札幌病院・聖ヨハネ桜町病院・ピースハウス病院・聖隷三方が原病院・淀川キリスト教病院・六甲病院・亀山栄光病院・聖心病院)の病院と協力体制を組む。
 
全国のホスピスで活躍しているホスピスナース



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