日本財団 図書館


資料4 シンポジウム合意文書
(仮訳)
「マラッカ・シンガポール海峡の航行安全と環境保全の向上のためのシンポジウム」合意文書
2007年3月13〜14日
クアラ・ルンプール、マレーシア
 
 マラッカ・シンガポール海峡(以下「海峡」という)の航行安全と環境保全の向上のための本シンポジウムは、マレーシアのマレーシア海事研究所(MIMA)、インドネシアの東南アジア研究センター、シンガポールのS. ラジャラトナム国際研究大学院(RSIS)及び日本の日本財団によって、2007年3月13日と14日に、マレーシアのクアラ・ルンプールで開催された。
 
 海峡の航行安全と環境保全は、沿岸3ヶ国(インドネシア、マレーシア及びシンガポール)の責任である。日本財団及びマラッカ海峡協議会の協力と支援を受けて、沿岸3ヶ国は、航行安全と環境保全の向上のために必要な対策を講じてきている。現在、航行安全と環境保全のためのコストは、沿岸国、利用国及び海峡を通航する他の受益者の間で、公平かつ衡平には負担されていない。このような状況にある中で、本シンポジウムを開催することは、時期を得たものであり、大変価値がある。
 
 本シンポジウムは、2005年ジャカルタ会合及び2006年クアラ・ルンプール会合で沿岸3ヶ国が合意した、費用分担のための協力枠組みの提案を、更に前進させることを目的としている。
 
 この2007年クアラ・ルンプール・シンポジウムは、
 
2005年8月2日に海峡の沿岸国による第4回沿岸3ヶ国大臣会合で合意されたバタム共同宣言を認識し、
 
ジャカルタ会合の成果を想起し、及び、2005年9月8日にジャカルタ会合で合意されたジャカルタ宣言を支持し、
 
クアラ・ルンプール会合の成果も併せて想起し、及び、2006年9月20日にクアラ・ルンプール会合で合意されたクアラ・ルンプール宣言を支持し、
 
定期的会合、情報交換及び海峡の航行安全と環境保全のための費用分担の選択肢を含む協力を促進するための、沿岸国並びに利用国、海運業界及びその他の利害関係者による協カメカニズムの構築に向けての進捗を推奨し、
 
海峡の航行安全と環境保全の向上のために沿岸国及びその他の利害関係者が行ってきており、また、今後も継続する貢献を、賞賛をもって銘記し、
 
4つの主催者は次の事項を合意した。
 
A. 海峡の航行安全と環境保全の向上は、次の事項から来るものであること。
 
1. 海峡は、国際海運における最も重要な通商経路であり続ける。世界貿易の拡大に伴い、通航量は2004年の40億DWトンから2020年には64億トンに増加することが予測され、それに伴って事故と海洋汚染の危険性も増加する。
 
2. 増加する海峡通航量は、生態多様性と海洋環境、沿岸住民の生活、漁業や観光産業に対して、重大な危険性を引き起こしている。
 
3. 海峡通航量の増加に伴って、航行援助施設やその他の安全対策を提供し、維持していくためのコストは、大幅に増加することが見込まれる。
 
4. 準備的な費用便益分析の結果として、航行援助施設を設置することによって得られる便益は、そのコストよりも明らかに大きいことが示された。
 
5. この状況において、日本が、海峡の航行安全と環境保全の向上のために過去30年以上にわたって自発的に150億米ドル以上の資金援助をしてきたことは、賞賛されるべきである。
 
6. 国連海洋法条約第43条により、海峡において航行援助施設を設置し、維持し、海洋汚染を防ぐために、利用国が沿岸国と協力する責任があることを認識して、最近、いくつかの利用国が、2006年クアラ・ルンプール会合において沿岸国から提案されたプロジェクトを支援することを公約した。
 
7. 主たる受益者として、海運業界やその他の利用者も、海峡の航行安全と環境保護の維持促進のために必要となる経済的コストを分担すべきである。
 
B. 費用分担方策は、次の原則に基づくべきであること。
 
1. 海峡の各領海部分における沿岸3ヶ国の主権は尊重されるべきであること。
 
2. 費用分担方策は、海洋法条約の規定、特にその第43条に規定された協力枠組みの具体化を目指すべきであること。
 
3. 海運会社とその他の利用者は、海峡の航行安全と環境保護に向けての企業の社会的責任を認識し、沿岸国に対して必要な支援を自発的に提供すべきであること。
 
C. 海峡の航行安全と環境保全のための基金は、次のように設立されるべきであること。
 
1. 基金は、クアラ・ルンプール会合で議論されたように、海運会社やその他の利用者に対して、航行援助施設の維持更新及び海峡における安全と環境保全のためのその他の対策に対する自発的な経済的支援の道筋を提供するために設立されるべきであること。この基金は、「マラッカ海峡基金」と称され得る。
 
2. 海運業界とその他の利用者は、汚染と海難事故の主要な潜在的原因者として、上記基金に自発的に貢献すべきであること。その他の主体からの貢献も同じく歓迎される。
 
3. 現在、推計で年間40億DWトンの船舶が海峡を通航している。もし仮に、全ての通航船舶が1DWトン当たり僅か1セントをマラッカ海峡基金に貢献するだけで、年間40百万米ドルの基金を生むことになる。
 
4. 監査や費用便益分析の実施を含む、上記基金の設立に当たっての管理その他の関連事項は、主要な貢献者と協議し、IMOと協力して、合意されるべきである。
 
D. 次を歓迎すること。
 
1. 日本財団が、利用者からの自発的な貢献を含む基金の設立を含め、航行安全と環境保全の向上に向けての更なる協力に係る見解を示したこと。
 
2. 日本船主協会が、海峡の航行安全と環境保全の向上のための自発的な貢献という形で、引き続き支援を続けていくことを申し出たこと。
 
3. ICS、BIMCO及びINTERTANKOから、基金設立のための自発的な貢献の様式とメカニズムに関する関係者との議論に参加する関心が示されたこと。
 
E. 次の協力を強化していくこと。
 
1. MIMAは、4機関を代表して、このシンポジウムの合意文書を沿岸3ヶ国政府に提出し、2007年シンガポール会合において本結論を提出することに努めること。
 
2. 4機関は、上記基金の設立・運営管理についての更なる研究を共同して行うこと。
 
 クアラ・ルンプール・シンポジウム期間中の手際の良さと親切なもてなしによって、卓越した手配をしたマレーシア海事研究所に対し、深く感謝の意を表する。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION