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4.4 廃プラスチックリサイクルのまとめと課題の整理
 廃プラスチック類のリサイクルについては、ここまで整理してきたように、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルのそれぞれについて、すでにさまざまな手法が確立している〔各手法(事例)についての要約を表4.4-1に整理した〕。
 しかし、サーマルリサイクルの場合を除き、リサイクルできるプラスチックの種類(素材)は手法ごとに限られ、多種多様なプラスチック製品を一度にまとめて処理できる手法はまだ確立されていない。このため、“海洋ごみ中の廃プラスチック類”を対象としたリサイクル(マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル)では、およそ次のような技術的課題がある。
 
■海洋ごみ中にはさまざまな素材のプラスチックが混在するため、そのまま処理することは難しく、素材別の分別作業が必要となる
■同質のプラスチックでも、製造メーカーによって添加剤(混ぜもの)の種類や割合などが異なり、一律に処理するのが難しい
■外国製品など、素材が不明瞭なものも多く、適切な処理方法の選択が難しい
■着色(塗装)や特殊なコーティング加工(防草加工、難燃加工など)が施されたものは、そのままでは処理が難しく、塗膜の分離・剥離作業が必要となる
■砂やカニ、貝類など異物が付着したものも多く、リサイクルに際してはその除去が必要となる
■紫外線や波などによって材質が劣化したものも多く、リサイクル製品に対する品質の確保が難しい(品質の低下)(マテリアルリサイクル)
■薬品類の残留など、事前の処理(前処理)が必要となる場合もある
 
 さらに、この海洋ごみ(廃プラスチック類)リサイクルを事業ベースで考えると、以下にあげるような点で採算面の課題があり、これらが海洋ごみのリサイクルが進まない要因となっている。
 
■リサイクル原料としての安定的な確保が難しい
■リサイクル可能・不可能品の選別に手間(コスト)がかかる
■素材ごとの分別に手間(コスト)がかかり、また、その分別にはある程度の経験が必要とされる
■廃漁網やロープなどは、漁網どうし、あるいは他のごみや生物が絡みつくため、分別には特に手間(コスト)がかかる
■発泡スチロールなどは輸送にかかるコストが大きい
■再生原料とバージン原料との価格差が縮小しており、再生原料を使用するメリットが弱まっている
 
 よって、この先、海洋ごみのリサイクルを促進していくためには、こうした技術面の課題とコスト面の課題を同時に解決できるような仕組み(社会システム)を構築していくことが必要である。そのためにも、まずは現場と行政、メーカー関係者等が海洋ごみ問題に関する共通の問題意識をもつことが重要であり、その上で、これらが一体となって海洋ごみリサイクルに取り組んでいくための仕組みづくりを早急に進めていくことが重要である。
 例えば、廃漁網や廃フロートのようにある程度発生源がはっきりしており、同種の廃棄物が一度に大量に発生するようなものについては、発生源対策(漁業関係者の意識改革を含む)を充実させ、ごみを海域に流出させないよう徹底していくことが必要であろう。しかし、法的な枠組みで一方的に漁業者に負担を押しつけるだけでは、現場は悲鳴を上げるだけである。まして、高齢化や魚価の低迷で体力のない漁業者にとって、廃資材の処理・処分に係る費用負担の増大は重大な問題となる。その結果、適切に処理したくとも処理できず、港内に野積みしたまま放置したり、不適切に処理・処分したりと、かえって環境に悪い影響を及ぼすことが懸念される。このため、漁業者に対してだけでなく、メーカーサイドをも包含し、漁業者の負担を極力少なくした回収・処理システムを構築することが、また、行政サイドに対しては、それをうまく機能させるための制度づくりを推し進めつつ、活動のバックアップを図っていくことが望まれる。
 一方、上記のほか、主として焼却・埋め立て処分されているような一部離島地域で回収された海洋ごみや、回収困難な地域に蓄積された海洋ごみについても、今後、リサイクル資源として有効に活用していけるような仕組み、とりわけ、財政面の支援を柱とする海洋ごみの回収・運搬・処理システムの構築が望まれる。
 また、サーマルリサイクルについては、多種多様なプラスチック製品を分別することなく、また、他の可燃性ごみも一緒に焼却できるため、とりわけ、コスト面でマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルに比べ有利な手法といえる。しかしながら、サーマルリサイクル(焼却処理)の場合も、一般的に次のような課題があるとされる。
 
■水分や塩分を多く含むごみは、炉を傷めるおそれがあるため、焼却には不向き
■難燃剤等を含む一部のプラスチックは、焼却時に有害化学物質を発生させるため、その対策が必要
 
 さらに、リサイクルの仕方によっては、焼却灰の処分が必要になることもあり、何より、サーマルリサイクルの普及によって「燃やしてもリサイクル」という認識ばかりが先行してしまっては、安易な焼却が推し進められていくおそれもある。このため、サーマルリサイクルの導入にあたっては、再使用、再生利用といった資源の再循環プロセスを妨げるようなことのないよう十分な注意が必要となる1
 
 次に、海洋ごみの組成割合で多くを占める廃プラスチックのリサイクルの意義等について考えてみたい。日本のプラスチック原料の生産量は世界トップクラスであり、今やその製品は、容積的には鉄製品をも越えると言われているほどの存在となっているだけに、プラスチック素材の海洋ごみの減量化は大きな意味をもっていると思われる。
 また、適正で継続的なリサイクルを日本国内の現在の市場メカニズムにのみまかせていてはほとんど進まないであろう。それは、労働賃金に比べて原料資源やエネルギーの価格が相対的に安価であるという、現在の先進国の経済状況では、利便性や時間効率を求めるがゆえに、その代償として資源やエネルギーを使い捨てている構造になっているからである。したがってリサイクルしようにも、その回収や再生に要するコストでは、安い天然原料等に太刀打ちできないのである。
 しかし、日本の将来、地球環境保全の観点から、資源保護のため、リサイクルを促進しなければならない。
 そこで適正なリサイクルを実施するにあたっては何らかの社会システム制度を導入して使い捨ての流れを変えることが必要である。
 先ずは法制度によって半ば強制的にリサイクルの仕組みを作ってしまう方法が考えられる。次には、デポジット制度等の経済的手段の導入によってリサイクルを促進させようとする試みである。
 このような法制度や経済的導入によって様々な物質が廃棄物とならず資源として回収されることになると、次の問題はいかにこれらを再生し、再び市場に投入するかである。そのためには、消費者や事業者が積極的に再生品を購入・使用するようになっていかなければいけないのである。つまり需要が活性化しなければリサイクルも進まないのである。
 このように海洋ごみを含めた廃棄物のリサイクル社会の実現は難しく、消費者へ再生品購入の意義を十分に理解等してもらうことが今後の重要な課題と思われる。
 
1「循環型社会形成推進基本法」(平成12年6月)では、循環型社会の形成に向け、廃棄物等の循環的利用の優先順位を(1)発生抑制、(2)再使用、(3)再生利用、(4)熱回収、(5)適正処分と定めている。
 
表4.4-1(1)  廃プラスチック・リサイクル技術の事例一覧(まとめ)
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表4.4-1(2)  廃プラスチック・リサイクル技術の事例一覧(まとめ)
(拡大画面:445KB)


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