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3.2 廃プラスチックのリサイクル手法
1)廃プラスチックリサイクルの3つの手法
 廃プラスチックのリサイクル処理には、大きく分けて、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルとよばれる3通りの処理工程がある(表3.2-1)1。このうち、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルでは、多くの場合、廃プラスチックは再度プラスチックとして利用されるが、サーマルリサイクルでは、固形燃料などプラスチック以外のものに再利用されている。
 
■マテリアルリサイクル
 廃プラスチックをプラスチックのまま原料として再び使用する方法で、溶かすなどして製品原材料に戻してから、再生利用する方法。材料リサイクルとも呼ばれる。
■ケミカルリサイクル
 廃プラスチックを何らかの化学的プロセスを経て再利用する方法で、熱や圧力を加えて元の石油や基礎化学原料に戻してから、再生利用する方法。
■サーマルリサイクル
 廃プラスチックを燃料として利用する方法で、廃プラスチックを燃焼させて、プラスチックが持つ熱エネルギーを温水、蒸気、電力として回収する方法。ただ、燃やしてしまうため、ダイオキシンや他の有毒ガスの発生といった問題もあり、その利用には十分な注意が必要となる。また、「燃やしてもリサイクル」という認識ばかりがひとり歩きするとごみの排出抑制を妨げることにつながるおそれがあるため、他リサイクル手法とのバランスが重要である。
 
1現在、容器包装リサイクル法が再商品化(リサイクル)手法として認めているのは、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル(原料・モノマー化、油化、高炉還元剤としての利用、コークス炉化学原料化、ガス化による化学工業原料化)、サーマルリサイクル(油化、ガス化)である。
 
表3.2-1 廃プラスチックリサイクルの3つの方法
分類(日本) リサイクルの手法 ヨーロッパでの呼び方
マテリアルリサイクル
(材料リサイクル)
再生利用
・プラ原料化
・プラ製品化
メカニカルリサイクル
(Mechanical Recycle)
ケミカルリサイクル 原料・モノマー化 フィードストックリサイクル
(Feedstock Recycle)
高炉還元剤
コークス炉化学原料化
ガス化
油化
化学原料化
サーマルリサイクル
(エネルギー回収)
燃料 エネルギーリカバリー
(Energy Recovery)
セメントキルン
ごみ発電
RDF*1 RPF*2
*1:Refuse Derived Fuel(生ごみや可燃ごみや廃プラスチックなどからつくられる固形燃料)
*2:Refuse Paper & plastic Fuel(古紙と廃プラスチック類を原料とした高カロリーの固形燃料)
 
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会
 
2)マテリアルリサイクル
 マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックをさまざまなプラスチック製品として再生すること、すなわち、プラスチックからプラスチックへのリサイクルのことをいい、材料リサイクルとも呼ばれる。
 リサイクルされる廃プラスチックには、(1)工場等で発生する産業系の廃プラスチック、(2)家庭等から排出される生活系の廃プラスチック、(3)量販店や事務所などから排出される事業系の廃プラスチックがあり、これまではその大部分を(1)が占めてきた。これは、産業系の廃プラスチックには、使用している樹脂の種類がはっきりしている、汚れや異物が少ない、量的にまとまっているといったリサイクル上の利点があるため、原料として再利用しやすかったからとされている。
 一方、(2)や(3)のように、流通・使用の過程でさまざまな汚れや異物が付着したものや素材そのものが分かりにくいもの、量的な確保が不安定なものは、リサイクル効率や経済性の面で不都合な点が多く、再利用が難しい(表3.2-2)。特に、廃家電や廃自動車のように多くの部品・材質(成分)により構成される製品は、再生プラスチック原料という観点からみれば不純物が多く含まれる廃材であるため、マテリアルリサイクルに向けては、分解してそれら不純物を取り除き、素材ごとに適切な分別を行う必要がある。なお、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法等の施行により、現在では、容器包装や廃家電といった家庭や店舗、事務所などから出る廃プラスチックもマテリアルリサイクルの対象とされ、これら廃プラスチックに対するより一層のリサイクルの推進が求められてきている。
 これまで、プラスチック製品はリサイクルを繰り返すごとに品質が低下するため、従来のマテリアルリサイクルの手法では、リサイクルを繰り返すことができないとされてきた。しかし最近は、廃プラスチックを純度の高い良質のプラスチックに戻すための技術の開発が進み、再生品であっても、その品質や強度は新しいプラスチックに勝るとも劣らないほどとなっている。
 マテリアルリサイクルにより再生されたプラスチック製品には、道路や住宅の建築用資材のほか、ベンチやフェンス、遊具といった公園緑地用施設、農林水産関係の各種用品・施設などさまざまなものがあり、繊維製品、包装資材、文房具、ビデオカセットのように、私たちの暮らしの中の身近な商品としても数多く流通するようになった(図3.2-1)。
 
表3.2-2 マテリアルリサイクルの難易度
(拡大画面:207KB)
*容器包装リサイクル法では、プラスチックを指定表示ペットボトル(清涼飲料、しょうゆ、酒類の3種類)とその他ペットボトル及びプラスチック製容器包装の二種類に分けており、指定表示ペットボトル以外のプラスチック製容器包装を通称して「その他プラ」と呼んでいる。
材質説明)PET: ポリエチレンテレフタレート、PSP・EPS: 発泡ポリスチレン、PE: ポリエチレン、PP: ポリプロピレン、PVC: ポリ塩化ビニル、PS: ポリスチレン、FRP: 繊維強化プラスチック
出典)東京都廃棄物審議会答申「廃プラスチックの発生抑制・リサイクルの促進について」(平成16年5月)
 
図3.2-1 マテリアルリサイクル商品の例
(1)洗面器 (2)ロードボラード (3)擬木 (4)パレット (5)防草シート (5)断熱/防音シート (7)塩ビパイプ (3)雨水枡の蓋 (9)カラーボックス (10)中央分離帯ブロック (11)車止め(パーキングブロック) (12)すのこ (13)測量・境界杭 (14)レンガ (15)鋼材用枕木 (16)ビデオカセット (17)カラーコーンの重し (18)植木鉢
 
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会
 
◎ペットボトルのマテリアルリサイクル
 一般家庭などから排出される使用済み包装容器や日用品等の中でも、PETボトルや発泡スチロール製トレイのように、分別しやすく、単一の素材からなる製品についてはマテリアルリサイクルが進んでいる。
 一般家庭などから分別排出されたPETボトルは、まず、市町村によって収集され、リサイクル工場に運ばれる。リサイクル工場では、PETボトル以外の不純物が取り除かれ(選別)、粉砕、洗浄された後、異物・異樹脂の分離工程を経てフレークやペレット状の再生原料に加工される。その後、これらの再生原料は繊維工場やシート製造工場等に送られ、そこで各種繊維製品や包装資材、文房具といった製品に加工される。なお、PETボトルのマテリアルリサイクルでは、再生原料から再度飲料用PETボトルに再生されることはない。これは、いったん使われたPETボトルは、衛生面や匂いの点で清涼飲料や酒、醤油用ボトル等の原料には適さないとされているためである。
 
図3.2-2 マテリアルリサイクルの流れ
■PETボトルの回収から新しい製品に生まれ変るまで
出典:PETボトルリサイクル推進協議会
出典)「プラスチックリサイクルの基礎知識2006」(社)プラスチック処理促進協会


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