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<感想>
立命館大学大学院先端総合学術研究科
非常勤講師 天田 城介
 
 8月19日(土)に開催された「IBD九州大会in熊本――越すに越されぬIBD」(於:熊本市国際交流会館)の「第1部 シンポジウム『難病と福祉施策』」においては4つの先駆的な実践報告がなされたことによって極めて積極的な議論が行われた。
 第一報告は、熊本県福祉総合相談所所長の樫山隆昭氏より「熊本県の主な難病施策」が発表され、現在に至る熊本県における難病政策の現況と熊本県難病相談・支援センターの設立の経緯などが説明された。また、現在、厚生労働省における難病医療費公費助成適用範囲見直しの中でパーキンソン病と潰瘍性大腸炎の2つが5万人を大幅に上回った疾患として適用範囲が縮小されようと検討されていることが指摘された。
 第二報告では、佐賀県難病相談・支援センター所長の三原睦子氏が「難病支援の現状と課題について」と題する報告を行った。この報告の中では特に佐賀県難病支援ネットワークが遂行している興味深い事業内容が紹介され、「熟練の病人」が同じ病気を生きる人々を支援することの可能性が指摘されると同時に、病・障害を超えてどのように情報を共有化し、組織化できるかが今後の課題であることが明示された。
 第三報告である沖縄県難病相談・支援センター事務局長の照喜名通氏の報告では、とりわけ「難病患者の就労問題」に照準した上で、「斡旋型」と「自主事業型」の2つの取り組みが紹介されつつ、自ら雇用を創出していくことが可能であり、また「沖縄指笛」のような「実験的な事業化」を現実に展開していることが説明された。加えて、「難病患者と就労問題」が厄介で困難な問題を内在していることも言及された。
 第四報告である北海道IBD会長の萩原英司氏による「難病と福祉施策(北海道編)と北海道IBDの紹介」では北海道IBDならびに北海道難病連の取り組みが紹介され、「運動」と「事業化」の機能別組織化――「商売」もし「請負」もし、更には「運動」もする――、その中での多元的戦略展開、当事者の役割分担と優先順位、そしてどこまで当事者に介入するかの「線引き問題」(の困難)についての刺激的な発表が行われた。
 極めて多岐にわたる「難病問題」の中でも「多元的事業化」の可能性と困難について、そして手練手管でやっていくしかないとしても時に制度的な困難を考えざるを得ないことを確認することができたのはコーディネーターとして大きな収穫であった。
 
佐賀IBD縁笑会 代表 黒木司
 
 今回、九州単位での会にはじめて参加させていただきました。それぞれ独自の運営をされている会の話が聞けるということで、最近会を立ち上げた私にとって楽しみにしていたことの1つでした。その期待通り多くのことを学ぶことができました。実際に会を運営していると迷うことが多々あります。特に今の私にとっての悩みの種は、活動に具体性を持たせることです。当事者をサポートするといっても、具体性を持たせるには当事者のニーズと役員の経験が必要になってきます。しかし、会を立ち上げたばかりの私にとっては、どちらも不足しています。そんな時に非常に助けになるのが、他の患者会の情報だと思っています。自分の会だけの中だと、限られた情報だけになってしまうため、いかに優れた役員がいても、運営に行き詰る可能性は十分にあると思います。悩みも消化しきれないでしょう。ですから、他県の運営方針や体験談を聞くことにより、新しい風を入れることは、会の維持のみならず会の活性化にもつながると思います。今回のIBD九州大会では、それが得られるだけでも十分に意味があるのではないでしょうか。それに、各会がバラバラに活動するのではなく、九州単位である程度の大きなビジョンを持つことは、各会へのプラスになるのではないか思います。1つの会では不可能なことも、幾つかの会が集まれば可能になる可能性は十分にあります。もちろん、各会の独自性を尊重した上での話しです。今大会でも、各会の独自性が出ている素晴らしい会だったと思っています。
 現在、私たちIBD患者のまわりでは色々な変化が起きています。それをただ甘んじて受けるのか、抵抗するのか、協調するのか、選択肢は色々あります。その選択肢を広げる一つの手段として、患者会があるのではないかと思っています。今回はそのことを再確認することができました。この貴重な経験を元に、佐賀IBD縁笑会の運営を担っていきたいと思っています。
 
福岡IBD友の会 会長 古屋英治
 
 IBD九州大会にお招きありがとうございました。
 私にとっては画期的な会で、大きな収穫でした。企画されたIBD熊本の皆様に、そして他会の皆様に感謝です。
 今まで友の会でいろいろやってきたけど、会運営の悩みなど話す事も、同じような悩みを聞くことも出来て、とても充実した時間を過ごすことが出来ました。初めて会った人ばかりでしたが、旧知の友のように感じられたのはとても心地良かったです。
 病気になったおかげで、又たくさんの人と知り合いになれました。妙な感じですけど、病気が縁ですよね。病気になった事は苦しみや辛さがあるけど、同時に人の優しさや人との出会いを運んでくれる。病気にも感謝です。
 「病気の会の道州制」良いですね。具体的に何をするかではなく、意識が共有できるだけでも価値が有るんじゃないでしょうか。各々の会が独自性を持ちながら様々な連帯が持てたら良いと思います。会員同士の交流なんかが出来れば最高ですョ。
 
沖縄IBD 事務局長 照喜名 通
 
 九州熊本の中山さんに誘われ、IBD九州大会in熊本に参加してきました。台風10号は迷走台風で飛行機が到着出来ない方もいましたが、沖縄組みはなんとか予定通り到着しました。もしかしたら、いけないのでは?とあきらめモードでテンションも低めでした。自然にはかなわないと。また、潰瘍性大腸炎・パーキンソン病の公費削減ニュースもあり、IBD(炎症性腸疾患)また、難病患者全体におけるQOL(生活の質の向上)に関しては、ジリジリと悪化していく状態だと感じています。全国での患者会運営においても後継者がいない、予算が足りない、人が集まらない。かといって、患者さんは増加していてニーズは多種多様になってくるのが現状なのですが、こういったマイノリティで少数派の活動はなかなか上手くは出来ず、皆何かの打開策を模索しているのだと思います。そんな四面楚歌の状態をなんとかしようと、熊本の中山さんの熱意で九州各県のIBD患者会が集まりました。集まりさえすれば何か生まれるもでもないのですが、情報の共有や顔を合わせていると何気ない誰かの一言がコロンブスの卵のように、新しい発見や希望が見えてきました。
 特定疾患受給者証の更新時における原本の扱い、受けることのできる病院の数、定例会案内の方法、重点イベントに優先順位をつけ選択と集中、各県の得意分野での提携と分散により効率化を図る。また、患者だけでの運営ではなく、医師、看護師、ソーシャルワーカー、保健師、家族や学生などのいわゆるボランティアの参加や協力体制についても改めて重要であると感じました。
 人によって感じることはそれぞれ異なるとは思いますが、参加できたことに感謝しております。一番良かったのは熊本地元の方々だと思います。最先端で規模の大きい北海道の事例や各県の事例を聞いて話すことで大きく前進したと思います。北海道と九州全体の地形的規模ではほぼ同等であり、北海道ができて九州で出来ないことはない。やはり九州は陸続きだと強烈に感じました。参加しようと思えば車で来られる範囲にあることです。沖縄はその点ハンディがあります。このハンディは大きく感じます。その打開策としてなるべく多くの沖縄スタッフを県外へ派遣すること、また沖縄での総会やイベントの開催により他府県の方々をお招きすることで、より多くの沖縄の方々に感じてもらえるのではと考えています。
 九州は熱い人が多いし、飲み会も好きです。前夜祭の居酒屋、当日の交流会、2次会のカラオケ、後日の熊本観光案内と大変だったと思います。事前の準備や段取りでも大変だったと思いますが、非常に成果は大きかったと思います。やっぱり情報や想いは夜のコミュニケーションで深まりますね。ありがとうございました。
 お仕事も休みをとってお出迎えをして下さった、熊本IBD事務局長の長廣幸さんには大変お世話になりました。スペシャルサンクス


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