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就任挨拶
第六管区海上保安本部長
錦郡 満(にしこり みつる)
 
 7月11日付で第六管区海上保安本部長に就任致しました 錦郡 でございます。
 社団法人瀬戸内海小型船安全協会の会員の皆様とは、この広報誌「せとかぜ」を通じて初めてお目にかかることとなりますが、この場をお借りしまして、就任のご挨拶を申し上げます。
 会員の皆様には、日頃から各地におかれまして、小型船舶の海難防止と運航マナーの向上など安全なマリンレジャーの普及・発展のため、多大のご尽力を賜り、また、海上保安業務のよき理解者、協力者として活躍されておられますことに敬意を表しますとともに、深く感謝いたしております。
 瀬戸内海及び宇和海は、温暖な気候、静穏な海域で、島々が織りなす美しい景観を有しており、マリンレジャー活動の場として大変恵まれた環境にあり、プレジャーボートや水上オートバイの活動も活発に行われています。
 一方、これらの海域は、中国、四国、離島を結ぶ生活の足として、また、我が国の海上輸送の大動脈として、多くの旅客船、貨物船が航行しており、さらに、優れた漁業資源を有する豊かな漁場であることから、古くから様々な漁業が行われております。
 このように瀬戸内海及び宇和海は、プレジャーボートを含む船舶が様々な形態で海域を利用しており、また、大小の島々が形成する複雑な水道、航路は急潮流、霧の多発などのため、昔から海の難所としても有名で、海難発生の危険性が高い海域でもあります。
 当管内では、昨年471隻の船舶海難が発生しておりますが、このうち、船舶海難隻数の過半数を漁船、遊漁船及びプレジャーボートなど小型船舶が占め、なかでもプレジャーボートの海難は、最も多く全体の40%、184隻発生しております。全国におけるプレジャーボートの海難隻数と比較しても2割近くを占めている状況にあります。
 これら海難の原因は見張り不十分、機関整備不良等のいわゆる人為的な要因によるものが多数を占めており、海に関する知識、経験が浅いことから海難に至るケースが多々見られるところであります。これら海難の防止には、出港前点検の励行による機関等整備の徹底と見張りの励行など安全運航について小型船舶運航者のひとりひとりが十分注意することが重要です。
 このため、プレジャーボート運航者の一層の安全意識の高揚を図ることが重要でありますが、そのためには、これらマリンレジャー愛好家の方々との意見交換、現場でのパトロール、訪船、海洋教室の開催といった皆様との緊密な連携が必要となってまいります。プレジャーボートの海難防止には、永年の活動実績を有する貴協会の果たす役割は大きいものがあると考えております。
 このような崇高なボランティア精神にのっとった貴協会の積極的な活動に対し、当本部としましても、今後とも貴協会の活動を支援し、安全にマリンレジャーを楽しめるようにするために努力していきたいと考えておりますので、皆様のご理解と一層のご協力をお願い申し上げる次第です。
 最後に、貴協会と会員の皆様方のご繁栄とマリンレジャーを安全に楽しまれますよう祈念して就任の挨拶と致します。
 
特集(プレジャーボート海難を考える!)
プレジャーボートの海難防止のために
平成17年瀬戸内海・宇和海におけるプレジャーボート海難(第六管区海上保安本部資料から)
 
◎平成17年の瀬戸内海・宇和海における船舶海難は471隻。このうちプレジャーボートの海難は184隻で、船舶海難の約40%と高い割合を占めています。
◎プレジャーボート海難による平成17年の死者・行方不明者は6名で、昨年より5名増えています。
◎プレジャーボート・漁船の海難原因の首位は「見張り不十分」です。
 
○プレジャーボートの原因別・種類別海難発生状況
 
●見張りの励行●
〜見てますか? まわりの状況 気づいてますか? せまる危険〜
 
●出航前の準備●
「機関・船体点検」・「水路調査」・「気象情報収集」
 
プレジャーボート、水上オートバイに曳航されるバナナボートなどの事故に注意!
 海難審判庁では、この数年間に頻発しているウエイクボードをはじめ、バナナボートやチューブボートなどの「被引浮体」に関する事故の再発防止の観点から、これらの海難について審判の裁決及び海難の調査結果の子細な検討を行い、下記の海難の特徴を有しているとの結果が得られました。(平成18年8月10日 高等海難審判庁 記者発表資料から)
 操縦者はこれらのことを参考にして、搭乗者の安全確保に万全を期し、マリンレジャーを楽しむようにしましょう!
 
1 安全対策の不足
 曳航中の被引浮体は、落水の可能性が高いにもかかわらず、救命胴衣を着用せず搭乗し行方不明となった海難が発生している。また、落水時に他の搭乗者、水面等とぶつかり、特に、頭部を打撲することにより深刻な傷害を負う海難が発生している。
 
2 被引浮体の動静監視の不足
 曳航船舶の操縦者が、被引浮体の動きを把握しないまま曳航し、被引浮体が防波堤、他船等の障害物と衝突する海難が発生している。
 
3 不適切な操縦
 曳航船舶の操縦者が、防波堤、他船等の障害物の近くで被引浮体を曳航し、これらに衝突して死傷する海難が発生している。また、波が高い海域等を不適切な速力で曳航したことにより、搭乗者が被引浮体等に激しくぶつかり負傷した海難が発生している。
 
4 注意事項等の認識不足
 被引浮体に係る危険性、搭乗中に注意すべき事項を認識・理解しないまま安易に搭乗し、海難により負傷した後、初めて、その危険性を認識する等の海難が発生している。
 
水上オートバイが突堤までの目測を誤り、引いていたチューブボートが突堤に激突
G号:水上オートバイ(3人乗り)2.70m 1人乗組み 同乗者1人 チューブボートに1人を乗せて牽引
操縦者:38歳 小型船舶操縦士免許(1か月前に取得) チューブボートの牽引経験は5回程度
発生日時場所:平成16年8月9日17時00分 長崎県諫早市結の浜マリンパーク沖
気象海象:晴 西南西風 風力1 下げ潮の初期
 
 水上オートバイG号は、長さ約25mの索で牽引する三角形のチューブボートに1人を乗せ、約30km/hの速度で遊走中、これまで旋回したことがなかった海岸付近で旋回していたとき、突堤までの距離の目測を誤ってチューブボートを突堤に激突させ、搭乗者が死亡した。
 
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