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発達障害幼児の家庭養育

 事業名 障害児子育て支援のための研修会等の開催
 団体名 全国心身障害児福祉財団  


III 環境を整える
●子どもに合った環境づくり
 子どものまわりには、ありとあらゆる刺激が満ちあふれています。子どもたちはこれらの刺激にどのように対応しているのでしょうか。
 様々な刺激が子どもたちの感覚器官を通して脳へと流れこみます。脳の中ではあふれんばかりの刺激を交通整理し、情報としての価値あるものへと意味づけしていきます。そしてその情報によって判断し、脳は指令を送り、子どもたちは行動を起こすわけです。
 しかし、重い障害を持った子どもたちは、前述した脳の指令に問題があるため、その発達の過程で種々の学習の経験が得にくい状態にあります。その結果、発達に歪みや偏りが生じます。また発達に遅れを持つ子どもたちは「おとなしい」といわれる子どもが多く、外への働きかけの少なさから、その遅れが助長されることがよくあります。
 こういった発達の歪みや偏り、遅れの助長などを防ぐためにも、一人ひとりの子どもに合った刺激が配慮された環境を作っていきたいものです。子どもたちにはお父さん、お母さんやまわりの人たちとの関わりと、子ども自身が外界に働きかけようとする力を少しでも引き出していけるような環境が必要なのです。
 このような話をすると、お母さん方は常に子どもに関わらなければならないと思い違いをされることがあります。他の兄弟のことや家事などがあってそんな時間はないというのは当然のことです。家事にとりかかる前に10分でも15分でも時間を作るとか、兄弟の用事が終わったら30分はこの子とつき合うとか、短くても集中して子どもと関わる時間が作れればよいのです。また、家事に子どもを参加させるというのもよいでしょう。もっと子どもに関わらなければならないのにそれができない、と焦ることは決してないのです。お母さんにはゆとりを持った関わりをしてほしいと思います。
●家庭は素敵なあそび場です
 乳幼児期の子どもたちにとって、生活のベースとなるのは家庭です。このことを重視して、通園による指導のみではなく家庭に実際に出向いて指導・援助をする訪問指導が比較的多く取り入れられています。通園時とは違った家庭でのお母さんと子どもの様子をみせてもらい、家庭でできるあそびや適切な関わり方などをお母さんと一緒に考えて取り組んでいます。
 少ない経験からではありますが、家庭の中で気をつけてほしいこと、家にあるもので工夫したあそびなどのいくつかを紹介します。
自分ではあまり動くことのできない子どもたちのために(写真2-43)
・おもちゃは「子どもの手が届く範囲にあるか」「見やすい位置にあるか」などを考えて置いてあげましょう。上からぶら下げてあげるのもよいでしょう。
・横向きに寝かせてあげると、手を前に出しやすくなります。この姿勢で手を使ってあそぶことをおすすめします。しかし、いつもいつも横向きということではなく、いろいろな姿勢を経験させてあげることも大切です。
・どうしても床の上に寝かされることが多くなりがちですが、ベビーラックや椅子を活用して、目の高さに変化をつけてあげましょう。みる位置が高くなっただけで世界は違ってみえるものです。
 
写真2-43 自分ではあまり動くことのできない子のためのおもちゃ
 
・家の中には花や食べ物、石けん、お母さんの化粧品など香りのする物がたくさんあります。子どもはそれらをいたずらすることで自らいろいろな香りを嗅ぐ経験をしていきます。しかし、自分でそういった物に近づいていくことの困難な子どもたちには縁のないものになってしまいがちです。香りは時には心地よさを与え、時には危険をも知らせてくれます。嗅ぎわける力をつけていくためにも、日々接する何気ない物の香りを嗅ぐ機会を作ってあげて下さい。
・自分の手を口に持っていくことが難しい場合、いたずらしながらたまたま手についた物を口に入れて味わってみるという経験もできずに過ごしてしまいます。お母さんがお料理をする時にはこの子たちをそばにおいて、できるだけいろいろな食べ物を味わう機会を作ってあげてほしいと思います。
 
図2-25 牛乳パックの利用
 
自分で移動のできる子どもたちのために
 何らかの形で移動できるようになると、動くこと自体を子どもは楽しむようになります。この子たちが家庭でできる運動あそびの工夫については「動くことを大切に」で述べていますので、ここではこの他のことを少し紹介します。
・大きめのダンボール箱はとっておくと便利です。おもちゃ箱にもなり、中の物を出し入れしてあそぶこともできます。写真2-44はダンボールで作ったミニハウスです。まわりには模造紙を貼って子どもたちが絵を描きました。出たり入ったりしてあそんだりままごとにも使えます。
・空の牛乳パックはとっておきましょう。1つのパックにもう1つのパックを互い違いになるように差しこんだり、折りたたんだパックを中につめ込んだりすればかなりしっかりします。それを組み合わせていけば台や椅子なども作ることができます。積木も簡単に作れます。(図2-25)
・タンスや鏡台の引き出しはとてもいいあそび道具です。開けたり閉めたり、中の物を引っぱり出したり入れたりと、とても楽しいものです。引き出しを1つ子どもに譲って、おもちゃ入れにするのもよいでしょう。
・子どもが家事に興味をもっているならば、一緒にお料理に挑戦してみるのもよいでしょう。お好み焼や焼きそば、ホットケーキ、クッキー作りなどでは子どもが参加できる部分がたくさんあります(野菜をちぎったり切ったり、粉をといたりねったり)。目の前で材料から食べ物へと変っていくのは子どもの興味をそそることでしょう。
 
写真2-44 ダンボールのミニハウス
 
 この他にも応用できるものはたくさんあると思います。浮かんでくるアイディアはどんどん試してみて下さい。ある家庭では、子どもが押すカタカタの音が階下に響いてしまうため、カタカタの車輪にフェルトを巻いてみたら音が響かなくなったということです。これもお母さんのちょっとしたアイディアです。
 また、自分で移動しだすと子どもたちの手の届く高さが変ってきます。楽に手が届いてしまうところだけでなく、おもちゃを置く場所に高低の差をつけてあげるといいでしょう。おもちゃを手にしようと、子どもは膝立ちになったり、つかまって立ち上ったりすることでしょう。しかし、逆に動くようになると手の届く所にある物は手当たり次第にとったり落としたりするようになりますから、ポットやお鍋、花瓶など危険な物は手の届かない所へしまうようにしましょう。
 それから、おもちゃを置いておく場所は頻繁に変えるのではなく、ある程度、コーナーとして決めておいた方が子どもにはわかりやすいでしょう。子ども自身が何のために移動するのかという目的をもつことができるでしょう。特に目の不自由な子どもたちにとっては大切なことです。
●家のまわりにはどんなものがあるのかな
 子どもたちはエネルギーをたくさん秘めています。次第に家の中の刺激だけでは満足できなくなり、外の世界を求めだします。自分では動くことのできない子どもたちでも、外に連れ出すととてもよい表情になるものです。家の中とは違ったにおい、風の流れ、人の声や木々のざわめき、太陽の光、自然からの贈り物が外の世界にはいっぱいです。よい時間を見計らって1日1回くらいはのんびりと散歩をしながら公園などをのぞいてみましょう。
 また、歩き出した子どもたちには道を歩くことがとてもよいバランスの練習になります。道にはちょっとした段差などはいたるところに存在しますし、土やジャリのでごぼこ道もあります。始めはお母さんが手を引いてあげてゆっくり一緒に歩いてあげるといいでしょう。上手になってきたら、危険のない場所であれば手を離して一人で歩かせてあげましょう。
 一人で歩きたがるようになると寄り道をしだします。ジャリや葉っぱを拾ってはマンホールの穴に落としたり、よその家の玄関を入って行ったりと、子どもは興味津々です。大変だと思いますが、この子どもの興味にできるだけつき合ってあげて下さい。この時期の散歩や外出は時間がかかりますから、ゆとりをもって出かけましょう。


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更新日: 2019年5月18日

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