II おもちゃの選び方
おもちゃは、子どもたちの体と心の発達に大切な役割を果たしています。おもちゃを通して、みること、聞くこと、触ること、手を使うことなどを楽しく学ぶことができます。この時、いろいろなことを発見し、心を動かし、考えることもしています。子どもはおもちゃであそびながら、いろいろな機能を伸ばして、諸々の力を育んでいます。そして、おもちゃを仲介として子どもと子ども、親と子ども、人と人とのふれ合いやコミュニケーションを豊かに育てていくことができます。
子どもにとっておもちゃとは
子どもの手はまるで魔法使いのようです。手にすることができるものはどんなものでもおもちゃに変身させてしまいます。このことから大人は、子どもたちのまわりにはおもちゃになるものがたくさん存在している、ということに気がつくことと思います。
・自分の指や手や足、お母さんの顔や髪や体などを、まずおもちゃにしてあそびます。
・家庭にある日常生活用品や空容器は身近で手軽なおもちゃになります。例えばスプーン、カップ、ボール、鍋、箸、お盆、缶、箱、マヨネーズなどのチューブ容器、フィルムケース、ヨーグルト類の容器です。
・散歩や旅行に出かけた時にみつけることができる自然物は、自然界からの素晴しいおもちゃの贈り物です。例えば、どんぐり、じゅず玉などの木の実、木の葉、小枝、草、小石、貝ガラ、砂、土、水たまりなどです(図2-24)。
図2-24
・市販されているおもちゃ。これは、子どもがいつでもあそべるようにと、より機能的に考えて作られたものです。
このように子どもは、「目にみえる物」「触れる物」があれば、どんな物にでも関心を示してあそびます。
(1)おもちゃを選ぶにあたって
子どもたちの発達を支えていくおもちゃを選ぶには、子どもの理解力や発達の状況を大まかに把んでいることが必要です。そして、子どもが何を望み何を要求しているかを理解するよう心がけることが大切です。
子どもが喜ぶおもちゃをみつけるには
私たちが子どもにおもちゃを選ぼうとする時、「この子どもが今一番楽しんでいるあそびは?おもちゃは?」と考えます。この時手がかりになるのは、子どもが生き生きとしてあそんでいる姿(表情や体の動き)です。子どものあそぶ様子をよくみていると、その子が今どんな物に関心を示し、どんなおもちゃをよく手にするかということがわかります。この「よく手にするおもちゃ」をまず見つけましょう。
子どもの喜ぶおもちゃをみつけたら
子どもが一番好んでやっていることを捉えたら、そのあそびを十分に楽しむことができるように、類似したおもちゃを用意しましょう。そしてその中に、子どもが目をとめた時に「おやっ、これはなんだろう?」と心をひきつけられるおもちゃを一つ、二つ何気なく仲間入りさせておいて下さい。
ここでいう心をひきつけられるおもちゃとは、現在楽しんでいるおもちゃより少し扱いの難しい、それでいて手の届きそうなおもちゃです。この時気をつけてほしいことは、大人のちょっとした手助けで子どもがあそぶことのできる範囲のおもちゃを選ぶことです。
おもちゃを与える時に気をつけたいこと
大人がそのおもちゃで、子どもと共に楽しむということです。一緒にあそびながら子どもの心の中におもちゃへの興味を育て、くり返しあそび方をしっかり教えていきます。おもちゃであそぶことが楽しいという気持を子どもの中に育むことを大切にしましょう。
(2)おもちゃを買い求めるにあたって
実際におもちゃを買う、または「おもちゃ図書館」で借りる時に気をつけて欲しいいくつかの点について述べます。
●形
子どもの手に握りやすいことです。手にピッタリと合った物は子どもに使いやすいものです。握る力の弱い子には、そのおもちゃが握りやすくなるように包帯を巻く、スポンジを巻くなど、柄を太くする工夫をして与えましょう。
●大きさ
子どもが取り扱いやすいおもちゃであることです。口に入れても飲み込めない大きさの物。運動障害をもつ子どもの場合、身体状況に合わせて、大きさや重さに配慮しましょう。
●表面
おもちゃの素材が何であるかが大切です。おしゃぶりには、木やプラスチック製の物が適しています。それぞれのあそび方によって素材を選びましょう。色は、あざやかな物が好まれるようですが、子どもによって好みがあるので、一概には言えないようです。
●安全
幼い子どもは何でも口に入れたりなめたりしてあそびます。なめても危険がなく、着色してある場合も無毒性の物であることが重要です。
●清潔
幼い子どもは何でもなめます。その上きたないことがよくわからないので、おもちゃをどこにでも置いたりします。洗うことのできること、洗ってもすぐにだめにならないことが大切です。
●耐久性
子どもがかんだり投げたりしても、割れたり、欠けたりしにくい丈夫な物を選びましょう。そして長い期間楽しんであそべるものを与えて下さい。
●多様性
一つのおもちゃでもいろいろなあそび方ができます。また、子どもによってそれぞれに違うあそび方を発見します。ですから、いろいろなあそび方のできるおもちゃであることが大事です。積木やコップ重ねはぜひ与えて欲しいおもちゃです。
●おもちゃ図書館の利用
子どもの喜ぶおもちゃを次々に用意するのはなかなか簡単なことではありません。そこで、最近各地に誕生している「おもちゃ図書館」の利用をおすすめします。まだご存知ない方もいると思いますので、簡単に「おもちゃ図書館」について紹介します。
おもちゃ図書館は、1963年ごろからスウェーデンなどにおいて、障害児を持つ母親が中心となってあそびの乏しい子どもたちにあそびの機会を与えることと、おもちゃという道具を媒介にして子どもの発達を援助することを目的として広まってきました。わが国でも現在、全国各地におもちゃ図書館ができています。
おもちゃ図書館は、子どもとお母さんたちが集まって、おもちゃあそびが楽しめます。子どもが興味を示すおもちゃをきっとみつけることができるでしょう。ここでは、おもちゃの貸し出しやおもちゃでのあそび方を教えてもらうこともできます。もし、近くにおもちゃ図書館があれば、積極的に利用されることをおすすめします。
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