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里親だより 第74号 平成18年8月28日
第74号
 
トピック
厚生労働省に要望書を提出
 5月連休明けの9日、全国里親会の渥美会長、廣瀬副会長、境事務局長、里親ファミリーホーム全国連絡会の廣瀬会長、西川事務局長の5名で厚生労働省を訪ねました。平成19年度の里親関係の概算要求に際して幾つかの要望をするためです。
 厚生労働省からは白石順一雇用均等・児童家庭担当審議官と清川啓三家庭福祉課長が対応。午後3時から1時間ほど要望書をもとに説明をしました。
 要望書の全文は本紙19ページに転載してありますが、1つは里親型グループホームの制度化について。里親型グループホームは各地で取り組みが見られるものの、国の制度にはなっていないので制度化してもらうための要望です。里親ファミリーホーム全国連絡会の廣瀬会長が熱弁をふるい、迫力のある陳情となりました。
 2つ目は専門里親、親族里親制度の改善について。専門里親の養育対象となる子どもたちの定義があいまいであること、また心身障害児など療育困難な子どもについても専門里親の養育対象としてほしいこと、また親族里親については里親手当の支給を要望しました。
 3つ目は新たに設けられた里子の大学進学など自立支援生活支度費がスムーズに運営されること。
 4つ目は里親支援事業の国庫補助率の改善について。現在、里親支援事業費については地方自治体が3分の2を負担しなければならず、普及が難しくなっています。5つ目は里親委託費と里親手当の増額について。
 これらの要望について、ぜひ平成19年度に取り組んでもらうべく訴えました。
 
特集
「専門里親に聞く」
〜現状と課題〜
 被虐待児の増加にともなって専門的な知識と養育技術をもつ里親が必要だとして、平成14年に専門里親制度ができた。その後、平成17年に非行・不良少年についても養育の対象となった。
 現在、専門里親数は全国で254家族、受託里親数は45家族、52人の子どもたちを専門里親として受託している(平成17年3月末・厚生労働省調べ)。
 専門里親数が多いか少ないか、子どもの委託が円滑に進んでいるかどうかは評価の分かれるところだろうが、被虐待児の数の多さに比べると、充分に専門里親がその受け皿になっているとは思われない。
 制度ができて最初に専門里親となった、いわば1期生で、平成17年に継続研修を受けた皆さんにアンケートを行い、専門里親の現状と課題を聞いた。
 
■回答者のプロフィール
 平成17年に日本子ども家庭総合研究所で行われた継続研修者リストの28人にアンケートを行い18人から回答を得た。実施は平成18年6月。
 回答者18人の年齢は、最も多いのが50才代で9人。60才代が6人、40才代が2人、30才代が1人だった。専門里親は2年以上の養育経験を条件にしているので、どうしても年齢が高くなりがちだが、できるだけ若い力を活用することも必要だろう。
 里親歴は、10〜14年が6人で最も多く、20〜24年・5〜9年が3人ずつ。そして、25〜29年が2名である。里親歴のある人が専門里親になっているが、これは1期生で、その後は年齢も若く、里親歴も少ない人が専門里親になっている可能性もある。
 また里親の職業については、知的障害者施設に勤務する人や保育士、看護士、補導センター相談員、医療関係者など、福祉に関連する職業に就いている人たちが多い。
 
■専門里親になった動機
 専門里親になろうとした動機について聞いた(複数回答)。最も多かったのは「里親としてもっと勉強がしたかったから」で14人。「これまでに被虐待児など養育の難しい子どもを養育したことがあって十分な対応ができなかったから」「被虐待児など養育の難しい子どもを育ててみたかったから」が同数で4人ずつ。
 里親として勉強する機会が少なく、専門里親になるかどうかはともかく研修に参加したという人たちが多かった。里親は総じて勉強熱心だが、そうさせているのは、養育の難しい子どもを育てた経験があるからだろう。すでに被虐待児と見られる子どもを養育したことがあるという里親が多い。(グラフ1参照)
 
(グラフ1)
専門里親になろうとした動機はなんですか(複数回答)
 
■専門里親になるための研修や実習について
 専門里親になるには通信教育とスクーリング、7日間の実習が義務づけられているが、その研修や実習の評価はどうだろうか。「よかった」とする人が12人。「改善の余地がある」が3人となった。
 「改善の余地がある」とした人たちの意見としては、「里親の養育事例を多く紹介してほしい」「被虐待児の養育にテーマを絞ってほしい」「非行に対応する具体的な方法について知りたい」「認定後も継続的な研修が必要である」など。
 全体としては研修や実習を評価しているが、専門里親として具体的に役立つ研修や実習を求めていると言える。(グラフ2参照)
 
(グラフ2)
専門里親研修や実習はふさわしいものでしたか
 
■研修への支援
 専門里親の研修を受けるにあたって行政からどんな支援があったかを聞いた。「スクーリングの交通費がでた」が7人、「テキスト代の支援があった」が5人、「受講料の支援があった」が3人、「宿泊費がでた」が1人。行政からの研修に対する支援は自治体によって大きく違っている。
 なお、どんな支援を望むかという質問には「交通費の負担」が2人。「自分の勉強なので自己負担でよい」という意見もあった。(グラフ3参照)
 
(グラフ3)
専門里親の研修を受けるに当たって、行政からの支援はありましたか
 
■専門里親になって養育観は変わったか
 専門里親に認定されて子どもの養育について考えが変わったかどうかを聞いた。「特に変わらない」が7人。「変わった」が9人。
 「変わった」と答えた人のコメントとしては「養育に余裕をもって対応できるようになった」「里子から発せられる無言のシグナルを感じ取れるようになりたいと思った」「里親だけでなく家族全体の関係が大事だと思った」「家族の再統合の必要性を実感するが自分の力量不足を感じている」「被虐待児のことを知れば知るほど自分には難しいと思えてくる」など。
 専門里親に認定されたことによって養育に自信をもった人、また研修の過程で養育の難しさを感じた人など、反応はさまざまだった。(グラフ4参照)
 
(グラフ4)
専門里親に認定されて子どもの養育について考えが変わったことがありますか


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