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●編集後記
全国失語症友の会連合会 相談役 三輪 順康
 
 当連合会の事務所にいますと、「家族が失語症になって、近いうちに退院するのですが、言語のリハビリに何をしたら良いでしょうか」などの相談電話がきます。電話をしてくる方々のニーズの中身は様々ですが、言語リハビリの参考書やテキストがありませんかとの問合わせがたくさんあります。
 言葉のリハビリでは、毎日の生活そのものが訓練になることなので、テレビを見たり、ご家族の皆様が言葉を交わしたり、本を読んだりすることがリハビリになるのですから、特別な訓練教材によらなくても、生活そのものの中で工夫してみてくださいとアドバイスします。
 だがそうはいっても、ご家族から寄せられる頼りになる訓練教材がないかとの要望は無視できません。そんな要望に応えることも当連合会の役目だと考えて、どうしたものかと思いをめぐらしていました。病院で訓練教材に使うような本は知っていますが、紹介(推奨)するのはちょっとためらいます。
 数年前から岡山県言語聴覚士会の中村光先生と種々情報交換しているうちに、岡山県言語聴覚士会が失語症者の自習教材集のホームページを作ったので、連合会でもご利用くださいと案内がありました。これを開いてみると立派なもので一目ぼれしました。だがホームページのままだったら、実際に家庭で失語症者が目に触れて、利用されることも少ないでしょう。パソコンに触れることが苦手な多くの失語症者や家族にも使っていただき、言語の障害克服に役立てていただきたいと思いました。冊子にして、当連合会の活動の一環として、関係部門に配付したら、退院後の失語症者のリハビリ生活を手助けすることができて、失語症の皆様と家族に喜んでいただけるのではないかと考えました。
 岡山県言語聴覚士会のお許しを得て、必要な経費は日本財団に助成金を申請し、認められ、平成18年度事業として、実現することとなりました。
 この自習問題集の制作には、岡山県言語聴覚士会から会長の種村純先生をはじめとして、15名の言語聴覚士の方々が携わっていただきました。会長の種村純先生や中村光先生にはご挨拶や解説などの玉稿も頂きました。岡山県言語聴覚士会は全面的にご協力してくださいました。心から感謝申し上げます。
 挿絵などについては、従来当連合会の季刊誌【言葉の海】に採用させていただいた作品や、各地友の会から送られてくる便りから、障害者の作品を使わせていただきました。見ても楽しく励みになる紙面を目指しました。
 おりしも医療制度改革の波は言語障害者にも容赦なく押し寄せ、従来のように、全てを医療制度や言語聴覚士に頼るのではなく、努力し自立しなければならない時代になってきました。自分でできることは自分でやるようにしよう。この自習問題集もそのために役立てられれば幸です。各地友の会の集まりでも、介護保険関係施設(デイケア施設や地域包括支援センター等)でも役立てていただきたい。
 最近“コラボレーション”という言葉が散見されます。様々な違う事業団体が手を組んで協働の活動を行うようなことを指していますが、今回のように専門家の団体と当事者団体が手を組んで行うことはまさにコラボレーションでしょう。社会を良くする大きな力となるでしょう。関係者の皆様ありがとうございました。
 それにつけても、失語症の皆様がどんな思いで毎日を送っておられるか察しています。こころ豊かな毎日でありますよう祈ります。
 


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