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4 プレジャーボート以外の船舶で飲酒が関係した海難
プレジャーボート以外の船舶で飲酒が関係した海難は20件で、船種別では貨物船、漁船が多い
事件種類別では乗揚が多く、飲酒の時期では発航前が多い
 
(1)船種、事件種類別等の状況
 プレジャーボート以外の船舶において飲酒が海難発生にかかわった事件を、プレジャーボート同様に平成8年から同12年までの5年間の裁決で、船種別にみると、20件20隻(貨物船9隻、漁船8隻、押船1隻、作業船1隻、瀬渡船1隻)となっている。
 また、事件種類別にみると、乗揚11件、衝突(単)5件、衝突3件、死傷等1件の20件となっている。
 なお、死傷者等の発生状況は、13人(死亡3人、負傷者10人)となっている。
 
表39 事件種類別・船種別の内訳
(プレジャーボート以外の船舶で飲酒が海難発生にかかわったもの)
(単位:隻)
区分 貨物船 漁船 押船 作業船 瀬渡船
衝突 2 1 3
衝突(単) 2 3 5
乗揚 6 3 1 1 11
死傷等 1 1
合計 9 8 1 1 1 20
 
図40 事件種類別の内訳
(プレジャーボート以外の船舶で飲酒が海難発生にかかわったもの)
 
(2)飲酒の状況及び海難原因等
(ア)飲酒が直接原因とされた事件
 飲酒が直接の海難原因とされた事件は次の4件であり、衝突(単)2件、衝突1件、乗揚1件となっている。
(a)発航前、発航を承知の上で飲酒した例
船種 事件種類 海難原因等
貨物船 橋脚囲い衝突 上陸中及び帰船後にも飲酒して寝入り、自ら操船の指揮をとらなかった。
漁船 衝突 飲酒の影響があったが、出航に先立って仮眠をとらなかった。
漁船 防波堤衝突 披露宴及び続く親戚宅の宴会で飲酒し、酒気帯びによる居眠り運航
 
(b)航海中、当直に就くことを承知で飲酒した例
漁船 乗揚 船長の操船指揮が不適切、当直者の飲酒運航
 
(イ)飲酒が間接原因とされた事件
 飲酒が間接の海難原因とされた事件は16件(乗揚10件、衝突(単)3件、衝突2件、死傷等1件)となっている。
 海難原因別にみると、飲酒が居眠りの要因とされたものが15件で、陸上で飲酒し、帰船する際海中に転落したものが1件となっている。
 飲酒が居眠りの要因とされた例は、次のとおり分けられる。
(a)発航前、発航を承知の上で飲酒した例(10件)
停泊中に船内で飲酒3件、上陸して飲酒が7件
(b)航海中、当直に就くことを承知で飲酒した例(4件)
(c)時間調整のための仮泊中、飲酒した例(1件)
 
5 飲酒が海難発生にかかわった事件のまとめ
飲酒運航の危険性は車と同じ、船長の自己管理だけでは限界がある
 
 操船時の飲酒は、飲酒の量、個人差等を考慮したとしても「眠気を催す」、「注意力の低下」、「判断力の低下」、「警戒心の低下」などの影響をもたらし、その結果、居眠り運航による各種海難を始め、見張り不十分、相手船の動静監視不十分などから衝突を、自船の船位不確認、針路の選定不適切などから乗揚、衝突(単)、施設損傷を惹起し、海中転落を伴う人身事故など二次海難も発生させている。飲酒運航は、単に海難の危険性を高めるだけではなく、飲酒により発生した海難の被害者は同乗者、相手船にも及び、多くの死傷者も発生している。
 航海期間が長期にわたる貨物船などの業務用船舶では、仕事の場と生活の場が直結していることから、航海中、当直時間以外に乗組員が船内において飲酒することがあるが、当直以外の時間帯であっても、航行組織体構成員の1人の立場から、船内における飲酒は自制が要求され、その量や飲み方が制約されたものとなっていると考えられる。
 一方、プレジャーボートにおいては、航海そのものが、個人の趣味、楽しみ、遊びなどの目的で行われ、海上花火大会の見物時における飲酒の事例が多いことなどからも、船上での飲食がプレジャーボートによる水上レジャーの大きな楽しみの一つになっているのも事実である。
 このため、前述のとおり、海技免状更新講習等においても教育が行われているにもかかわらず、少なからぬプレジャーボート船長においては、飲酒運航についての危険性が理解されず、「水上レジャーの楽しみの一つとしての海上における飲酒」に自らも参加(多くの場合は率先して参加)して海難を引き起こし、船長自身のみならず、同乗者や相手船の乗船者にまで大きな損害を与える結果となっている。
 海難防止のため、プレジャーボート船長に対し、飲酒運航の危険性を十分に認識させ、水上レジャーを楽しむに際しても「安全のため、自分だけは飲酒を控える」という意識を徹底させるためには、自動車等他の交通機関の操縦においては飲酒が厳禁されている中で、船長の自己管理に期待することはできないというのが現実と言える。
 以下に飲酒運航による海難のメカニズムについて図示してみた。


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