ごあいさつ
1975(昭和50)年3月7日、イギリスの客船クイーンエリザベス2(QE2)が横浜に初入港しました。当時世界最大の客船の入港は大きな関心を呼び、出港までの4日間に52万人の見物客が港を訪れました。横浜港に映える、堂々とした美しい船の姿は人々を魅了し、QE2はいつまでも人々の心に残る客船となりました。
それから30年が経過し、この間QE2は19回横浜に寄港しました。QE2の人気は変わることなく、入港のたびに大勢の見物客を港へ引きつけます。
QE2は来航を重ねるたびにその存在感は大きくなり、横浜港にも関わるものとなりました。横浜市制100周年・開港130周年を記念して1989(平成元)年に開催された横浜博覧会ではホテルシップとして大さん橋に長期停泊し、博覧会に大きな華を添えてくれました。また、横浜ベイブリッジの建設時にはQE2の通過可否について論議を呼び、2002(平成14)年にオープンした大さん橋国際客船ターミナルの建造にはQE2の着岸が想定されるなど、その存在は港の建設にも影響するものとなりました。
今回の企画展では、QE2の横浜港での30年の歩みをまとめました。たびたび改装されてきたQE2の姿、歓迎の様子、横浜港とのかかわりなどについて展示します。さらに、定期航路客船からクルーズ客船への過渡期に誕生したQE2の歩みについてもご紹介します。また、「私の思い出のQE2 in YOKOHAMA」をテーマに募集した写真を展示します。たくさんの方々に懐かしい写真を応募していただきました。応募されたみなさま、ありがとうございました。
本展の開催にあたり、貴重な資料をご出品いただきました所蔵者をはじめ、ご協力いただきました関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。
2006年9月
横浜マリタイムミュージアム
会期:2006年9月23日(土・祝)〜11月23日(木・祝)
会場:横浜マリタイムミュージアム 特別展示室
主催:横浜マリタイムミュージアム(財団法人帆船日本丸記念財団)
横浜港でのQE2人気は抜群です。初入港時には4日間で52万人が港を訪れましたが、その後も寄港時には1日に何万人もの人々が見物にやってきます。船内見学会があれば、定員の100倍、200倍の応募があります。これはどの客船より高い倍率です。
30年間に19回寄港し、横浜港でよく知られる客船となったQE2の姿は、横浜港を紹介するポスターやパンフレット、絵葉書などの印刷物に数多く使われてきました。横浜港での人気、そして知名度の高さは他の客船を圧倒しています。
QE2の存在の大きさは、横浜港の歩みにもかかわりをもつようになります。
1989(平成元)年3月に開催された横浜博覧会では、大さん橋で約2ヶ月間停泊しホテルシップとなりました。博覧会を盛り上げるため、ホテル不足を解消するため、そして減少してきた横浜港への寄港客船数を増やすきっかけとなるようにと選択されたのがQE2でした。
同じ年の9月には横浜ベイブリッジが開通します。1977(昭和52)年に公表されたベイブリッジ建設計画では、当初マスト高の高いQE2は通過できないと発表されました。しかし客船ファンから、「QE2が大さん橋に着岸できないのはさびしい」との声があがり、再調査後通過可能との判断がなされます。また、客船が着岸する大さん橋ふ頭の再整備工事(1989年着工)では、3万トン級の客船とQE2が着岸できるよう計画されました。
QE2は、来年(2007年)は横浜への20回目の寄港が予定されています。横浜港に大きなかかわりを持ってきたQE2は、戦後の横浜港を代表する客船として、人々の記憶に残る船であり続けることでしょう。
2 QE2ヒストリー
QE2建造は1959(昭和34)年にイギリスのキュナード社によって計画されました。クイーンメリー(1936(昭和11)年建造、80,774総トン)に代わる大西洋定期航路客船として建造される予定でした。しかし、この頃航空機が登場し広く利用されるようになります。1958(昭和33)年には大西洋横断の航空機利用者数が客船利用者数を逆転しました。
その結果、キュナード社はクルーズでの利用も可能な客船に計画変更します。大西洋航路とクルーズの両用客船としてQE2は誕生します。
QE2の起工は1965(昭和40)年。イギリス・スコットランドのジョン・ブラウン造船所で建造され、2年後の9月にはエリザベス女王を迎えての進水式、そして1969(昭和44)年4月に竣工します。
QE2は夏場を中心に大西洋航路に就航し、海が荒れる冬季には世界中にクルーズに出ます。このため横浜へは1月〜4月上旬に来航してきました。
1982(昭和57)年にはイギリスとアルゼンチンの間で行われたフォークランド紛争に徴用され、兵員輸送に従事しました。徴用解除後、船体をグレーに塗り替えました。翌年にはイメージを一新したグレーの船体で横浜へ入港しました。
QE2はこれまで改装工事をたびたび行っています。1986〜7(昭和61〜62)年にかけて大改装工事を行い、推進方式を蒸気タービンからディーゼルへ変えました。このときにはプロペラや煙突も交換し、88年には太めになった煙突で横浜へ入港しました。
2004(平成16)年には最後の大西洋横断航海を行い、同航路をクイーンメリー2(2004年就航、151,400総トン)へ引き継ぎました。
※QE2は2008(平成20)年10月16日にニューヨークからサウサンプトンまで最後の大西洋横断航海を行いました。
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