日本財団 図書館


4-2-2 操作体験の結果
(1)操作体験時における委員の意見
 操作体験時において出された意見は、下表のとおりである。
 
表4-1-1 操作体験時における委員の意見 その1
乗降・固定(1) ノンステップバス+可搬スロープ(その1)
(1)歩道の高さによる勾配と介助のしやすさ
【歩道あり(高さ15cm)】
・歩道から勾配への変わり目で車いすの後転倒の危険性を感じた
・特に問題なしと思われる
・ほぼ良好
・歩道の幅員が狭いと、スロープの脱輪防止装置(エッジ)をまたいで歩道に降りなければならず、車輪が引っかかってしまい、危険。
・スロープの脱輪防止のための柵の金属部分について、大きな事故にはならなくても、折りたたみの際に、急いで操作した場合は手をぶつけたりして危ないのではないか。
【歩道なし】
・道路からスロープに移る時に車いすが後転倒する危険性を感じた
・スロープの勾配がきついと介助者が大変
・介助者が女性の場合、急勾配だと危険
・電動車いすだと介助者にとって重い
・歩道がない場合、スロープの傾斜角度が大きくなり、乗車すること自体が危険になるのではないか。
(2)スロープの展開、格納のしやすさ
・ずれ止め(バンド・金具による固定)は使い勝手に一考
・収納ではなく、ワンタッチでできないか。(床板に折りたたみ式など、30秒〜1分くらいで)
・出し入れが手動なのはどうにかならないか。
・ほぼ良好
・携帯スロープの着地性が向上した結果、スロープのフックをかけない運転手もいる。脱輪防止装置に車いすが当たってスロープが動いてしまう危険があるので、必ずフックはした方がよい。
(3)車いす固定装置
・普及に時間を要するかもしれないが、バス側と車いす側で規格を合わせたカプラーのような物が使いやすいと思う
・車いす固定位置の座席に他の乗客が座っていた場合、席の移動をお願いする事にもすごく気をつかう
・今はまだ車いす使用者の乗客が少ないから良いが、増えてきた場合に固定装置が1人分しかないと困る。路線によっては、毎回必ず車いす使用者の乗客がいる路線もある。
・多くの点でISO国際標準と異なる
・バスの床から固定ベルトが伸び、車いすにフックを掛ければ設置が完了するような仕組みにしてはどうか。操作が容易になり時間が短縮できる。
(4)人ベルト(シートベルト)の装置の位置や長さ等
・腹部を固定したいが、床アンカーが後ろすぎて理想の固定ができない
・ロープを持ってきて固定するのは合理的ではない(固定位置に組み込んでほしい)
 
表4-1-2 操作体験時における委員の意見 その2
乗降・固定(1) ノンステップバス+可搬スロープ(その2)
(4)人ベルト(シートベルト)の装置の位置や長さ等
・ほとんどワンタッチでできる床下収納型があるので、それが理想
・ベルトの長さが足りないことがあり、腹部までまわらず、車いすの背もたれにベルトをかけなければならないことがある。
(5)車いすでの利用全般について
・せっかくノンステップバスができたのに、他の乗客に気をつかってしまって利用する気になれない
・時間がかかりすぎるため、真冬等ドアが全開のままとなり、他の乗客の事を思うと本人も辛い→いかに時間を短縮できるかが問題
・バスのダイヤには車いすの乗降に係わる時間が含まれていないため、遅れると「車いすが原因」となる
・固定も含め一連の流れに時間がかかりすぎる。運転手1人では介助の間、運転席が開いてしまう
・固定の場面だけを切り取って検証していては見えない部分がある。実際の現場は一連の流れの中で動いており、流れの中で検証する必要がある。
・バス内の、車いす固定ベルトとスロープの収納位置が離れている点。車内の一つの収納ボックスにスロープ、固定ベルト、シートベルトが入っていれば、2カ所に取りに行く手間が省ける。
 
表4-1-3 操作体験時における委員の意見 その3
乗降・固定(2) ワンステップバス+引き出しスロープ
(1)長尺スロープの使用感
・床面と接する2段目のスロープは急勾配。
・(介助者が後からしっかり押えている場合は良いが)自操である場合、スロープ上で後転倒の危険性がある。縁石がない場合は、もっとスロープの勾配が急となり危険。
・日本では携帯スロープが普及しているが、海外ではもっと簡単に展開できるスロープが多い。海外の事例も検証できれば、比較ができて良い。
・スロープの急傾斜を考えると、ワンステップバスはバリアフリー適合車にはそぐわないと思う
(2)車いす固定装置感
・固定に時間がかかりすぎる。
(3)車いすでの利用全般について
・停車して、スロープを引き出し、席を跳ね上げ、固定をし、スロープを格納し、運転に戻る、という一連の流れはとても時間がかかる。固定もしっかり行うとなると余計に時間がかかる。一部分を取り上げて検証するのもよいが、実際に運転手が携わる1日の運行の流れの中で検証することが重要では。
 
表4-1-4 操作体験時における委員の意見 その4
乗降・固定(3) 車いすの標準化について
・参加委員オブザーバーの方々に加え、車いすの製造会社の方も交えて議論するのも良いのでは。
・これからは、車いすでの乗客増加も見込まれるので、バス乗車を想定した車いすの構造を標準化することも必要になるかもしれない。
・固定はした方が良いが、研修がしずらい。車いすの仕様がまちまちなので、運転手も戸惑う。
 
(2)操作体験時の時間計測
 操作体験時において、乗車から固定、固定解除から降車までの時間を計測したところ、操作にかかった時間は、下表のとおりであった。
 乗車から固定(スロープの引出し、座席の跳ね上げ時間を含まない)の平均所要時間は、乗務員の実演を合わせて3分30秒、固定解除から降車までは2分12秒を要した。
 乗務員のアンケート結果等では、停止位置を確認してから車いすを固定するまでに5〜6分程度かかっていることがわかっている。しかし、操作体験では体験者が操作に対する慣れがないこともあり、乗車から降車まで平均5分42秒を要した。スロープの引出し等の時間を含むことを考慮すると、5〜6分以上の時間がかかるものとなった。
 
表4-2 操作に要した時間
バスタイプ 装置 体験者 車いすタイプ 時間計測(スロープの引出し、イスの跳ね上げの時間は含まない)
車いす使用者 介助者 乗車から固定 固定解除から降車
実演(1) ノンステップ バス乗務員 手動 02'32" 01'53"
実演(2) ワンステップ バス乗務員 手動 03'19" 03'14"
乗降(1)
固定
ノンステップ 可搬スロープ(車内収納)
3点式固定ベルト
シートベルト
A氏 B氏 手動 02'49" 02'03"
C氏 D氏 電動 04'33" 01'25"
E氏 F氏 手動 02'45" 01'24"
乗降(2)
固定
歩道なし
ノンステップ 可搬スロープ(車内収納)
3点式固定ベルト
シートベル
G氏 H氏 手動 - -
I氏 J氏 電動(2) - -
乗降(3)
固定
ワンステップ 引き出しスロープ
車止め・横ベルトの固定
K氏 L氏 手動 04'23" 01'56"
M氏 N氏 電動(1) 04'43" 02'55"
※電動(1)は電動車いす(スズキ)、電動(2)は手動車いす電動駆動装置付き(ミキ)
 
ノンステップバス 乗降体験
 
ワンステップバス 乗降体験


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION