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【質問】 その情報が本屋さんに売れるということですね、区で言えば。
【日下】 そう。
【質問】 なるほど。ありがとうございます。
【日下】 私もそういう本を書こうとかね(笑)。考え方はいろいろある。
【質問】 この辺がこの会に来る価値です。全然違いますものね。
【質問】 二つご意見を教えていただきたいのですが、一つは、談合問題の着地の仕方ということです。実際、企業に勤めたことがありますけれども、あまりに厳しく談合なしでやると、企業として利益が大変減ってきて、なおかつ怪しげなところが落札するという形になって、不良な工事が行われる心配があります。
 もう一点は、公務員の天下りの問題ですけれども、これもやっぱり公務員の質がだんだん低下しつつあるという危惧も出ておりますけれども、この辺の線の引き方といいますか、考え方をちょっと教えていただければと思います。
【日下】 非常に大まかに言いますと、談合はなくならないというなら、そもそも公共事業をなくせばいいわけです。昔から比べれば、日本経済に占める公共事業のウエートがたいへん増えているんですね。むちゃくちゃ増えている。だから、談合の弊害も大きくなっているわけで、公共事業をなくして民営化してしまえば、いくら談合があっても、それは問題ではないわけです。これをもう少しやってみたらどうかなと思っています。
 それから、公務員の質が悪くなったというのは、今と同じで、やたら仕事を抱えるから、その仕事にふさわしい上等な人間が日本にはいないということになる。そこまで縄張りを広げているのが問題ですね。例えば今、安倍さんが熱心なのはNSCをつくるということです。イギリスにある情報機関MI5という、007の原作者がいたところですが、あれと同じものを日本でつくると言っています。趣旨と目的はいいが、そんな謀略や工作や暗殺をやれる日本人はいますか? 特に公務員にいますか? いないのだったら、システムをつくってもしようがないだろうと思っています。
 それでいいかといえば、私はいいとは思っていない。日本も、うんと悪巧みのできる人をそろえて、実行部隊になる人をつくって、昔の忍者部隊みたいなものを持たなければ、この地球上で生きていけないだろうと思っています。それを教育再生会議で議論していただきたいんですけどね。今は、そういう議論すら普通にはできません。今おっしゃったような、公務員の質が落ちてきたというよりは、もっと「悪いやつ」を開発しなければいけない(笑)。そんなことを考えています。
【質問】 天下りの問題はどうですか。
【日下】 天下りは、官房長が電話するのがいけない。民間がもらいに行って、もらって帰って、使い物にならなければクビにするなら何にも問題はないわけで、その後の処遇その他まで役所があっせんするのがいけないわけですね。これをどうやってなくすかというのを今議論しているわけですが、役所のほうは骨抜きにするアイデアを出している。
 つまり、待遇、条件のあっせんをしなければいいと言っている。天下っている事実は構わないと言っている。今までの規制は、お役所の人が、自分が所管していた業界の会社に二年間は入ってはいけないと決めてあった。それを「民間が求めているならいいだろう」とかで、そういう骨抜きをしようとしている。私は反対です。根本から言うと、官が発注する仕事が多過ぎる。役所の事業そのものを減らしてしまえばいいと思います。
【質問】 両方とも役人のステータスを下げるという結果になっていくわけですね、裁量権を下げるというか。
【日下】 裁量権を下げるのではなくて、仕事をもとから減らせばいいのです。電力会社はお役所ではない。JRもお役所ではない。では、学校も全部お役所でなくすればいいわけですね。小学校は四年ぐらいまで文科省で、あとは全部民間でいいと思う。国家は卒業生に対し能力と資格の試験をすればよい。まあ、そんなことが答だと思っております。
【質問】 インドのODAをやっている人から聞いたのですけれども、ODAをつけようと言うと、向こうは民間でやるからいいと断るというんですね。自分たちで道路を敷いて、地価が上がれば、それだけで利益が上がるから、その分だけ敷くからODAは要らないと断られたという経験があるのです。外務省は消化できないから、最後は頭を下げて何とか頼むとなっていくというのが、まあ、インドが交渉上手ということもあるんでしょうけれども、今の先生の話から思い出しました。
【日下】 ODAはゼロでいいと思っています。ODAをゼロにして一番困るのは外務省の人です。そして世界はよくなると思います。もっと言いますと、ODAの予算は、塩川正十郎さんが一〇〇〇億円単位で減らしたことがある。だから、他の大臣でも減らせるはずなのですが、また戻ってしまった。それで塩川さんに「三〇〇〇億円ぐらい減らしてしまいなさい」と言ったことがあります。そうなっても、別に世界はどうってことありません。
 ODA担当専門大臣を置きなさいと言ったこともあります。大臣に新しくなった人は、「日本のODA五原則」を世界に発表すればよい。そのとおりに配ったら、またまた半分ぐらい余ってしまうはずです。「もしも一〇〇〇億円余ったら、それを私にください」と言ったんです。そうしたら、私は「日下五原則」でそれを配ります。このほうがよっぽどいい。そこで、あとは冗談になりますが、アメリカの大統領も買えます。私が行って買ってきます。「それをする部下を持っているか」と言うから、「部下は金さえあれば、イスラエルからでもロシアからでも、いくらでも採用できます、工作部隊はつくれます」。と、これは酒飲み話ですが、そんな話をしていると、十年から二十年経つとほんとうにそうなるんですね。大体今までみんなそうですから、皆さんも覚えておいて長生きしてください(笑)。
【質問】 私は昨年の十月から四回、参加をさせていただきまして、今日が最終回というのが、この先、とても心細くて、もっともっと勉強させていただきたいという思いでございます。といいますのは、三年ぐらい前から自分で考えてきて、昨年から活動を始めた、「おきな、おうなの会」というのがあります。それはおじいちゃんやおばあちゃんの声を子供たちに伝えていくという活動を目指しながら、そのインターフェースになるためのコンピューター導入をシニアに向けてやっていこうという活動です。先ほども出た、お乳をあげるときに携帯片手で打ちながらとか、テレビを見ながら子供を育てるというのが昨今は当たり前のようになってきておりますが、子供の道徳心などはどこで育つかというと、私自身は曾祖父母がいる大家族の中で育ちまして、両親からももちろんいろいろなことを教えられていると思いますが、心の中の根底には、おきな、おうなですね、曾祖父、曾祖母から受けた影響というのが非常に大きかったように思うんです。
 最近は核家族ですので、おじいちゃんやおばあちゃんが孫に何かを言いたくても、嫁の子だからという遠慮意識が非常にあるのではないか。同居をしていないので無責任なことがいえないということから、おじいちゃんやおばあちゃんの声が孫に届かないということが、日本の持てる財産としては大きな欠如ではないのかなと感じて、そこを何とかつなぎたいと思っています。
 そういうところに、日下先生のこの会に十月からご縁があって参加させていただいたのは、まず私がおきなの話を聞けという啓示だったかなと思いまして(会場・笑)、ここで勉強会が終わってしまうのがほんとうに心細いんです。これから日本の財産である子供たちに対して知恵を授けるというような活動を、ぜひぜひ行っていただきたいと思いますので、これからもぜひよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
【日下】 ありがとうございます。頑張ってください。
【質問】 二つ聞きたいことがあるのですけれども、一つは、最近日本人は金属を盗んだりとか、そういうモラルの欠如が多いのですが、昔のと言うと語弊があるかもしれませんけれども、三十年とか五十年前の日本人というのは金を盗んだりとか――金といっても銅線とか金具とか、そちらのほうなんですけれど、傘をそのまま無言で持っていったりとか、そういうことというのはなかったんでしょうか。あるいは全体的にだんだんルールが変わってきたということなのでしょうか。
【日下】 多分とりたくてもなかったんだと思います(笑)。昔は傘もなかったし、鉄の柵とか、ステンレスの滑り台とか、そんなものはなかったですからね。だから、とりたくてもなかったですよ(笑)。ロシアの船員が北海道に来ると、古タイヤをとっていきます。シベリアでは放置タイヤ、自動車、くず箱がありません。
【質問】 もう一つだけ、日本は黒字貿易でお金があると言われる反面、国内では国債が多くあり、何かあったら国際基金が入ってきて、これでは日本がだめになるという本を読んだことがあります。実際、国際基金が入ってきた後、日本はそれでもODAなどを出していくような感じになるんでしょうか。教えてください。
【日下】 そうですよね。だから、ODAは断ればいいわけです。
【質問】 断れば、日本というのは豊かになるものなんでしょうか。
【日下】 その分だけはね。年間一兆円で、塩川さんが大臣になって九〇〇〇億円に減らしました。もう一回減らそうと思っていたら、次の大臣になった。するとまた一兆円よこせと外務省は言っています。大臣が来て減らせと言ったら減るらしいが、何で減らさないんだというと、大臣もきっとリベートをとるんでしょうね。だから塩川さんは「大臣にするのは死にかけのじいさんがいいよ」と冗談を言っていました。おきながいいと(笑)。
 では、次もありますから、このぐらいにしましょう。どうもありがとうございました。またやるときは来てください。


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