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大会を終えて
 財団法人日本太鼓連盟主催による「第8回日本太鼓全国障害者大会」を日本財団の助成事業として、2006年9月10日、福島県・郡山市民文化センターにおいて開催いたしました。共催の社会福祉法人富岳会、主管の(財)日本太鼓連盟福島県支部のご協力と、厚生労働省、文化庁、福島県等のご後援を得て盛況裡に終了いたしております。
 この大会に第1回からご協力いただいております社会福祉法人富岳会では、1977年から知的発達に障害を持つ方々の補助セラピーや自己表現方法として、太鼓による療育活動を実践しておられます。このような太鼓の活動が、ハンディキャップのある方々の生活に生き生きとした表情と困難を乗り越える力をもたらすなど、今日まで大きな成果を挙げられております。
 日本太鼓全国障害者大会は、その活動に賛同し、日本太鼓を通じ障害者の自立心の向上を図り、心身の健全な育成を目指すことを目的に多くの皆様にご理解いただくため行われているものです。
 療育的な見地から日本太鼓に積極的に取り組んでいる知的、身体、聴覚に障害を持つ太鼓団体19チーム、出演者292名が一堂に会し、各チームの代表者による体験発表と太鼓演奏が行われました。
 各チームの体験発表は、自分たちが障害を持ちながらも太鼓との出会いにより、勇気づけられ、友情が生まれ、生き甲斐を見つけるまでの経緯や現在の心境を、ときには手話を介して真摯に語られていたのが印象的でした。一方、太鼓演奏は日頃の練習成果を発揮しようと、チームが一体となり、素晴らしいバチ捌きや個性的な演奏を披露し、そのひたむきさに会場を埋めた約1,200名の観客に大きな感動を伝えました。観客の皆様からは、惜しみない拍手と激励のお言葉を多くの障害者の方に賜ることができました。回を重ねる毎に人前での動作や態度に自信が溢れてきているのが伺われ、私共としては大変嬉しく思っております。
 また、富岳会の障害者の方々が、趣味や生き甲斐として自然な心で描かれた、素晴らしい絵画の展示会も合せて行われ、観客からは今後も継続して開催して欲しいとの声も聞かれました。
 開催にあたりまして、事前の準備から当日の運営までご苦労をいただきました、富岳会の山内理事長をはじめ職員の皆様並びに福島県支部の方々に心からお礼と感謝を申し上げます。
 当財団では、国内外の多くの皆様に太鼓における療育を呼びかけていく所存でおりますので、今後ともご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2006年9月
財団法人日本太鼓連盟
 
1. 糸口太鼓(いとぐちだいこ) (大分県)
― プロフィール ―
 『糸口太鼓』は、知的障がい児施設糸口学園の利用者で結成した和太鼓チームです。当園の運営方針は、特性を伸ばす支援の一環として、「伸びる芽を育てよう」を合い言葉に始まった活動も今年で12年目を迎えました。
 メンバーは8才から18才の25名で、下校後の余暇時間や休日を利用して練習に励み、汗だくになり手にマメをつくりながら日々の努力の積み重ねにより、最初は小さかった太鼓の音も徐々に聞いて下さる方の体に伝わるまでの力強い音に変わってきました。
 また、発表する機会も年を追うごとに増え、今では年間20回程の公演を行っています。多くの方からの応援を受けることがメンバーの自信につながり、それぞれが楽しみながら一曲一曲に心を込めて演奏し、明日への糧となるよう活動を続けています。
 
 
― 実践報告 ―
 僕たち糸口太鼓は大分県宇佐市にある知的障がい児施設糸口学園の利用者で結成された和太鼓チームです。養護学校からの下校後や休日を利用し毎日練習に励んでいます。汗だくになりながら手にまめができ、そのマメが硬くなるまで、日々の練習に励んでいます。前キャプテンが今年の3月末に引退し、今は僕がキャプテンという役を受け継いで必死にメンバーの皆を引っ張っているつもりですが、やはり『キャプテン』という役柄には皆からの信頼や期待などを任されていると思えば中途半端には出来ない。それに先輩が残していった良き伝統を受け継ぎ、これからもっと糸口太鼓が日本全国いや世界中の皆様に知られるようになりたいと願っております。
 僕たち糸口太鼓は今年12年目を迎えました。今、糸口太鼓がここにあるのも初代キャプテンをはじめ、たくさんの先輩方や聞いていただく皆様のおかげと心から思っております。
 僕が糸口学園に入所したのは、5年前の事です。中学時代はあまり学校には通っていませんでした。
 入所当時は、こんなことでやって行けるのかと心配で逃げ出したくなる時がたくさんありました。そしてひと月がたとうとしている頃、僕は糸口太鼓というものに出会いました。月日がたつにつれて少しづつリズム打ちが出来るようになり、楽しくなっていった気持ちを今でも覚えています。しかし、メンバーと曲通しをすると、いつも僕が足を引っ張っていました。太鼓を始めてから半年が経過しようとしている頃、職員から公演に出場してみないかと言われました。この時も、僕が足を引っ張ってしまいメンバーの皆には悪かったと思っています。
 それから思うと、今日この第8回日本太鼓全国障害者大会の舞台に、糸口太鼓のキャプテンとして立っていることが信じられずとても誇りに思っています。今日僕たち、糸口太鼓が演奏する曲目は、飛ぶに響くと書いて“飛響”と言います。『皆が明るい将来に羽ばたいていき喜びや感動を自信に繋げ、この先に響き渡れ』という意味で作られた創作太鼓です。
 僕たち皆、精一杯演奏します。どうぞお聞き下さい。
糸口太鼓 キャプテン


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