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アスペルガー症候群の人にとって自立とは?
社会性をもって振舞うために、自らを構造化する工夫ができること
 
反社会的行動にたいする3つの「介入」のあり方
−厚生労働省こころの健康科学研究事業「高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成因の解明と社会支援システムの構築に関する研究」(主任 石井哲夫)平成16年度研究報告(清水・日戸・他)より−
 
反社会的行動にたいする介入の分類
 
早期介入の意義
1. 発達を促し、適応行動を拡大する
2. 障害の固定化、二次障害の発生を予防する
3. 親の育児能力を高める
 
早期療育のポイント
・社会性の発達には早くから着目せよ
・構造化は学習効率を高める手段
・よい「こだわり」をどんどん作れ
・「人から学ぶこと」を学ばせよ
 
高機能例の早期療育
集団や社会のルールに沿って行動する技能を学習すること、そして学習する態度と習慣をつけること
 
「社会性の障害」に対する予防的アプローチ
1. 社会性に関して学習できる“場”を保障
2. 社会場面で、経験・知識の応用を促進
3. 相互交渉の成立する仲間づくり
 
アスペルガー症候群の人にみられる‘社会性の障害’
■クラスメートとの会話・・・展開についていけない
■関心事を共有できる相手・・・みつからない
■話し合い・・・意見を聞いてもらえない
■相手の冗談・・・本気と区別がつかない
■常識・・・それを使って考えられない
 
社会性とマナーのある行動=ソーシャルスキル
■社会場面で求められるマナーやエチケット
■通常は‘暗黙の了解’とされる
■学校の授業では、本来教わらない
 
ソーシャルスキル、これだけは!
■ちょっとしたあいさつ
・・・お辞儀、自分から、姿勢
■ミスした時の対処
・・・謝る、正当化しない、報告
■目上の人へのマナー
・・・言葉づかい、距離、姿勢
■合意すること
・・・みんなの意見を聞く
 
アスペルガー症候群の人と接するときの、4つの「べからず」
1. 情に訴えようとするべからず
常識や暗黙の了解を前提にしない
本人の要求や拒否を無条件で許可せず、「契約」のやり方を教える
2. 言葉かけを多用するべからず
大事なことは、必ず視覚的情報で伝える
余計な情報は削除する(複雑な言い回し、雑談、儀礼的なことなど)
3. 失敗から学ばせようとすべからず
本人の予想通りに物事が進むよう工夫する
失敗したときのヘルプの出し方を教える
4. こだわりを全面禁止するべからず
興味のあることをうまく活用して人間関係をつくる
 
家庭・・・それは最小単位の社会
望ましいのは
こどもが何らかの役割を意欲的に担える雰囲気
親は見本、ほめるための構造化
望ましくないのは
ネガティヴ・フィールドバックばかりの雰囲気
 
幼稚園・保育所・・・それは同世代との集団生活のはじまり
だいじなのは、個々のこどもが
何を楽しみにしているか
何をしたか
誰と遊んだか
どんな役割を担ったか
そして、先生を活動の手がかりとしているか
 
思春期の適応は、それまでに身につけた自己評価と価値観に影響をうける
 
学齢期までの経験による影響
自分の努力は報われてきかたか?
Yes→自己有能感
No→低い自己評価
人を介して学べたことがあったか?
Yes→協調を重視する価値観
No→協調を軽視する価値観
 
社会生活における誤学習の積み重ね
低い自己評価
無気力、無関心、低いストレス耐性
協調を軽視する価値観
孤立、問題の抱え込み、被害念慮、攻撃性
こうなってしまったら、問題が起きても発見と介入が困難になってしまう
 
誤学習してしまう条件とは?
ネガティヴ・フィールドバック(否定的反応)の多い生活環境
特異なことを認めてもらえない
苦手克服の特訓を過度に強要される
相談するとすぐに叱られる
 
自己有能感と協調を重視する価値観
自己有能感
自律的にふるまうことへの意欲
協調を重視する価値観
報告、連絡、相談(ホウ・レン・ソウ)の習慣
これらが、内発的動機づけによって身につけているかどうかが重要!
 
思春期までにやっておきたいこと
自己有能感の形成
成功体験の促進と失敗体験の防止
協調を重視する価値観の形成
相談や報告によって事態が好転した経験


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