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−日中医学協会助成事業−
心肺蘇生後の脳損傷に対する骨髄幹細胞移植の検討
研究者氏名 鄭 偉
中国所属機関 中国医科大学脳神経外科
日本研究機関 札幌医科大学脳神経外科
指導責任者 教授 宝金 清博
共同研究者 本望 修
要旨
心肺停止は臨床的に全脳虚血を引き起こす要因の一つである、かつ、非常に高い死亡率を招く。たとえ速やかに蘇生されたにしても、わずか何分間の血流停止は脳虚血敏感部位の神経細胞もう変性、壊死、不可逆な神経症状が残った。骨髄幹細胞は神経細胞へ誘導分化、再生医療に有用であることが明らかにしてきた。当実験はラット全脳虚血モデルに対し、心肺蘇生後3時間経静脈的に骨髄幹細胞を移植する。心肺蘇生5時間後ラット海馬領域に狙ってMR Spectraを撮られた、術後3日目脳組織を採って、TUNEL染色を行った。Treadmill Stress Testは心肺蘇生前日、術後1日、3日、7日を行った。骨髄幹細胞移植群ラット海馬領域のApoptosis細胞計数はコントロール群より少なくなった、MRSpectraにてLactateも減少した。ラットの運動機能の改善も認められた。
Key Words 心肺蘇生、骨髄幹細胞、移植、神経再生
緒言:
ラット脳虚血モデルに人骨髄幹細胞を移植し、ラットの梗塞面積の減少及び予後改善することが認められた。適当の条件で、骨髄幹細胞は神経細胞と神経膠質細胞に分化される。当実験はラット心肺蘇生モデルに対し、経静脈的に骨髄細胞を移植し、治療効果を検討する。
対象と方法:
1 骨髄細胞の精製と純化
健康成人ボランティアから人骨髄をインフォームドコンセント後に後腸骨稜より採取。骨髄単核細胞を分離した。150cm2の培養皿に置き、一晩インキュベートした。遊離細胞を洗浄後、接着細胞をMSCBMで培養した。MCGS、4mM L-グルタミンを含み、5%二酸化炭素、37度環境にて浸潤させた。集合後採取したものは、プライマリーMSCとして凍結保存または遺伝子解析に使用した。
2 全脳虚血モデルの作成
Lu RH(1)の方法に従って、ラット心肺蘇生モデルを全脳虚血モデルとして採用する。300グラム、雄、Wistarラットを用い、5%イソフル誘導してから1.5%イソフルで全身麻酔、左大腿静脈にルートを確保、肛門温、血圧、心電図など生命をモニタする。筋弛緩剤を注入して、気管插管、人口換気を与えられる。右総頚静脈から0.5M KCL 0.3mlを右心房に注入、心臓停止させる。7分後0.062mg Adrenalineと25mg NaHCO3を加え、ラット体内に注入。同時に人工換気を再開、IAC-CPRを行う。自発呼吸が確認してから気管挿管を抜去、cageに戻される。
3 骨髄幹細胞移植
35匹ラットは3組に分けられる。グルプ1(正常コントロール群、5匹)は何も処置されない、グルプ2(実験コントロール群、15匹)は心肺蘇生3時間後Medium(MSCBM)1ml静注し、グルプ3(実験群、15匹)は心肺蘇生3時間後1X107hMSCsを1ml Mediumに加え静注する。
4 画像的評価
7T動物用のMR装置を用い、MR Spectraを撮る。
ラットはケタミン(50mg/kg)とスキルペン(6mg/kg)にて腹腔麻酔され、動物用ホルダに載せ、磁場に入る。頭はImaging Coilの中心部と合わせる。最初はT2強調画像を撮り、海馬の位置を定め、海馬を含め(2×6×3mm3)のVolum of Interest範囲でMR Spectraを撮る。撮影条件はTR=3000MS、TE=20MS、TM=30MSである。全てのラットは心肺蘇生5時間後MRSを撮る。LactateとCreatineの比の相対値を記録する。
5 TUNEL
骨髄幹細胞移植3日後、ラットは4%Paraformaldehydeで潅流固定後、20umの凍結切片を作る。組織切片は37℃にてTdT bufferに30分Incubation後、TdT、biotin-16-dUTP、dATPを含め混合物を37℃にて1時間Incubation。PBS洗浄後Avidin-biotinylated enzyme complexと反応され、Apoptosis細胞はDABで茶色に着色され、Methylgreenにて対比染色する。Apoptosis細胞数は光学顕微鏡で計数される。
6 Treadmill Stress Test
ラットは一日20分、週二回で角度0及び20m/minの条件でTreadmillで鍛えさせる。ラットを電気刺激と放してモーターベルトの上に置き、ベルトの動きの逆方向に走らせる。電気ショックを避けるためにラットは逃げなければなれない。電動Treadmillで走る最高スピードを記録する。
結果:
MR Spectra画像分析
実験群とコントロール群ともに心肺蘇生5時間後、海馬領域のMRS画像を撮る。正常コントロール群はCholine、CreatineとNAA三つのピークしか見られない(Figla)。心肺蘇生後のラット(実験コントロール群)は上記三つのピークのほか、1.33ppmにLactateのピークが認めた(Figlb)。骨髄幹細胞移植群もLactateのピークが認めたけれども、高さはコントロール群より低い(Figlc)。Choline、Creatine、NAAFig及びLactate各成分の絶対値が測りにくいので、Lac/Cr Ratioは指標として測られる。Fig2は心肺蘇生コントロール群と骨髄幹細胞移植実験群のLac/Cr Ratioで、骨髄幹細胞移植群はコントロール群より著明に下がる。
Apoptosis細胞計数
心肺蘇生三日後、脳虚血しやすい海馬CA1領域にTargetし、Apoptosis細胞数を測る。正常ラット海馬CA1領域でApoptosis細胞が見られない(Fig3a)、心肺蘇生後のラット(実験コントロール群)海馬CA1領域で殆どApoptosis細胞が占められた(Fig3b)。骨髄幹細胞移植後のラット海馬CA1領域でApoptosis細胞が見られるけれども、実験コントロール群より著明に減少した(Fig3c)。
行動学的評価
心肺蘇生前日、術後1日、3日と7日、4回Treadmill testを施行した。術前各群差別が認められなく、術後1日、3日、7日とも骨髄幹細胞移植群は実験コントロール群より、ラットの走りスピードが上達になった(Fig4)。
考察:
当実験はラット心肺蘇生モデルに対し、人骨髄幹細胞を経静脈的に移植し、著明な治療効果が認められた。
骨髄幹細胞移植の治療機序はいくつかの仮説がある。一つは骨髄幹細胞の神経保護作用。BDNF、GDNF、NGF、EGFなど神経栄養因子は脳虚血範囲の拡大を抑制する報告がある(2、3)。これらの因子は、Antiapoptotic activity、Antiinflammatory activity、Antiglutamate excitotoxicityなどのメカニズムによって、脳虚血部位の機能保存、神経組織修復作用が認められた(4)。骨髄幹細胞はILs、MCSF、Flt-3などを分泌する(5、6)。神経膠質細胞はこれらの因子の刺激によって、BDNF、NGFなどの栄養因子を分泌され、中枢神経系細胞の成長、分化を促す(7、8)。骨髄幹細胞はVEGF、bFGFなどの血管成長因子を分泌する、これらの因子は虚血部位の血管内皮細胞損害を防ぐ(9)。骨髄幹細胞は細胞免疫反応を抑制し、脳虚血後二次損傷を防ぐ報告も見られる(10、11)。
移植した人骨髄幹細胞は、内源性脳修復機序を促進する可能性もある。GAP-43、Cycline D1など細胞増殖、分化、形成の標識物は脳虚血部位に発見された(12)。また、Subventricular Zoneの神経幹細胞は骨髄幹細胞移植に従って増加された。
参考文献:
1. Lu HR: Cerebroprotective effects of flunarizine in an experimental rat model of cardiac arrest, Am J Emerg Med. 8 (1990) 1-6.
2. Schabitz W.R. Intraventricular brain-derived neurotrophic factor reduces infarct size after focal cerebral ischemia in rats, J. Cereb. Blood Flow Metab. 17 (1997) 500-506
3. Ay I, Intravenous basic fibroblast growth factor (bFGF) decreases DNA fragmentation and prevents downregulation of Bcl-2 expression in the ischemic brain following middle cerebral artery occlusion in rats, Mol. Brain Res. 87 (2001) 71-80.
4. Hirouchi M, Current state on development of neuroprotective agents for cerebral ischemia, Nippon Yakurigaku Zasshi 120 (2002) 107- 113.
5. Majumdar M.K, Phenotypic and functional comparison of cultures of marrowderived mesenchymal stem cells (MSCs) and stromal cells, J. Cell. Physiol. 176 (1998) 57-66.
6. Eaves C.J, Mechanisms that regulate the cell cycle status of very primitive hematopoietic cells in long-term human marrow cultures: II. Analysis of positive and negative regulators produced by stromal cells within the adherent layer, Blood 78 (1991) 110- 117.
7. Li Y, Human marrow stromal cell therapy for stroke in rat: neurotrophins and functional recovery, Neurology 59 (2002) 514-523.
8. Hamano K, Angiogenesis induced by the implantation of self-bone marrow cells: a new material for therapeutic angiogenesis, Cell Transplant 9 (2000) 439- 443.
9. Bernstein D.C, Suppression of human cytotoxic T lymphocyte responses by adherent peripheral blood leukocytes, Ann. N. Y. Acad. Sci. 532 (1988) 207- 213.
10. Vassilopoulos G, Transplanted bone marrow regenerates liver by cell fusion, Nature 422 (2003) 901-904.
11. Wang X, Cell fusion is the principal source of bone-marrow-derived hepatocytes, Nature 422 (2003) 897- 901.
12. Li Y, Neuronal damage and plasticity identified by microtubule-associated protein 2, growth-associated protein 43, and cyclin D1 immunoreactivity after focal cerebral ischemia in rats, Stroke 29 (1998) 1972-1980.
Fig3 
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Apoptosis細胞計数。3-aは正常ラット海馬CA1領域の画像、3-bは心肺蘇生3日後海馬CA1領域の画像、3-cは骨髄幹細胞移植3日後海馬CA1領域の画像。
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