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社会面の取り組み
ハンセン病にかかった私たちは、
社会からも家族からも見捨てられています。
健康な人の前に出ると、心がすくみます。
怖いのです。
だから、人前では顔を上げることも、
人と目を合わせることもできない臆病者が、
私たちの中にはたくさんいるのです。
病気のため身体には障害が残り、
指や皮膚など身体の形は変わってしまいました。
でも病気にかかったのは身体だけなのです。
私の心や意識は、変わりません。
フラ・ウィン(ミャンマー)
 
ミャンマー・ヤンゴン近郊の定着村に続く道
 
 
いまだ解決しない問題
 医療の発展や、各国保健省、関係機関や団体による精力的な制圧活動が続けられた結果、世界的にハンセン病患者数は激減しました。1985年から現在までに、1,500万人がMDTで治療を受け、治癒しました。治療は全世界どこの保健施設でも、無料で受けられるようになり、全世界のハンセン病患者数の約70%を占めるインドでも、2005年12月に、国レベルで公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧に成功しました。
 インフルエンザや肺炎にかかった人は、病気が治れば、病気の前の生活に戻ることができます。しかしハンセン病にかかった人の多く、特に重度の後遺障害を持つ人は、病気にかかる前の生活に戻ることができません。人類の長い歴史に根ざした偏見や差別は、未だに私たちの心の中に根強く残っているからです。
 
●故郷を追い出された。
●家族から引き離された。
●家族に追い出された。
●就職を断られた。
●解雇された。
●宗教行事や社会行事、家族行事への参加を拒絶された。
●学校に行けなくなった。
●飲食店で食べることを断られた。
●バスや列車の乗車を拒否された。
●定着村に暮らして半世紀、誰も面会に来てくれない。
 
 世界各国でさまぎまな事例が報告されています。どれもたった一つの病気、「ハンセン病」のためです。差別はハンセン病にかかった人だけではなく、その家族にも及びます。このため、家族に迷惑をかけないようにと、自ら故郷や家族を離れていく人も少なくありません。ハンセン病にかかったことが、そしてハンセン病にかかった家族がいることが、生きていく上で障害にならない日が来るまでは、ハンセン病を取り巻く問題が解決したとは言えません。
 
エチオピア・デセの定着村付近で物乞いをする回復者
 
インド・ラジャスタン州の定着村


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