4 採水及び採泥実験(実施例)
4.1 実験の概要
(1)実施期日
平成18年7月28日(金)
(2)実施場所
独)海上災害防止センター 横須賀訓練所沖合海上
(3)実施機関
採水・採泥作業担当者
独)海上災害防止センター 2名
日本海洋株式会社 3名
分析機関 株式会社テクノスルガ
(4)採水・採泥実施方法
HNS物質 |
対象 |
採取層 |
採取方法 |
海水溶解性物質 |
アセトン |
海水 |
1m |
ニスキン型採水器 |
浮遊性物質 |
キシレン |
海水 |
表層 |
ステンレス製採水バケツ |
海底沈降性物質 |
クレオソート |
底泥 |
底泥
表層 |
スミスマッキンタイヤ採泥器 |
|
(5)作業状況
現場の作業状況を、写真II-1 作業実施例−1から写真II-7 作業実施例−7に示す。
(6)HNS物質の添加
採取した海水および底泥に、以下の濃度でHNS物質を添加し、充分に混合して分析に供した。
HNS物質 |
対象 |
採取層 |
添加量 |
海水溶解性物質 |
アセトン |
海水 |
表層 |
7.9g/l |
1m層 |
7.9g/l |
浮遊性物質 |
キシレン |
海水 |
表層 |
10g/l |
1m層 |
10g/l |
海底沈降性物質 |
クレオソート |
底泥 |
1.4mg/kg乾泥 |
ベンゾ(a)ピレン(参考) |
底泥 |
130mg/kg乾泥 |
|
実施例において採用した分析方法は、以下のとおりである。
4.2.1 アセトン・キシレン
(1)分析方法の考え方
HNS物質流出災害時における測定方法については、公定法が定められていない。アセトン・キシレンは、いずれも揮発性有機物であり。キシレンについては水質汚濁防止法の規定に基づき、水中の揮発性有機物の分析方法としてJIS K-0125「用水・排水中の揮発性有機化合物試験方法」(5.1、5.2、5.3.2)が公定法として定められている。
HNS物質流出災害時は、通常よりもはるかに高濃度の揮発性有機化合物が海水中に混入すると想定されるため、採水試料を希釈し上記JIS K-0125に準じて分析を行った。分析機器は、ガスクロマトグラフ質量分析法を用いた。
アセトンについては水質汚濁防止法に基づく公定法が定められていないが、キシレンと同様に水中の揮発性有機物として上記の分析方法が適用できると考えられた。同公定法では水中の揮発性成分の捕集方法について、(1)パージトラップ(試料に不活性ガスを通気して気相に移動させ測定する。5.1、5.3.2)と(2)ヘッドスペース(一定温度で気液平衡状態とした気相を測定する。5.3)を定めているが、アセトンが水に溶解しやすいことを勘案して(1)パージトラップを採用した。
(2)分析操作(パージトラップ−ガスクロマトグラフ質量分析法)
分析操作(パージトラップ−ガスクロマトグラフ質量分析法)について図II-2に示す。
図II-2 分析操作
(パージトラップ−ガスクロマトグラフ質量分析法)
4.2.2 クレオソート
(1)分析方法の考え方
クレオソートは原材料から抽出した炭化水素を主とする混合物質であり、公定法が定められていない。そこでクレオソートについては、主な成分であるフェノール類の分析方法として、国立環境研究所発行の「底質調査方法(平成15年3月)」に準じた。ただしフェノール類はクレオソートの成分の全てではないため、標準添加法(底質試料にクレオソートを添加して検量線を作成する)を用い、フェノール類を指標として添加薬品(クレオソート)の濃度を算出した。
なお参考として、クレオソートに含まれる有害物質として危惧されるベンゾピレンについて環境省が発行している「要調査項目等調査マニュアル(水質、底質、水生生物)平成15年度版(環境省環境管理局水環境部企画課)」の多環芳香族炭化水素(PAHs)の分析法に準じてガスクロマトグラフ質量分析法を用いた。
(2)分析操作(ガスクロマトグラフ質量分析法)
分析操作(ガスクロマトグラフ質量分析法)について図II-3、図II-4に示す。
(ベンゾピレン)
図II-2 分析操作(ガスクロマトグラフ質量分析法)
(クレオソート)
図II-4 分析操作(ガスクロマトグラフ質量分析法)
|