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表3.2.2(1)わが国における内航船舶のHNS輸送量上位の品目
順位 品名 輸送量(M/T)
1 キシレン 1,999,866
2 ベンゼン 1,503,659
3 スチレン 1,439,635
4 メタノール 717,782
5 トルエン 604,530
6 シクロヘキサン 528,988
7 アクリロニトリル 519,324
8 コールタール 506,744
9 ジクロロエタン 418,217
10 クレオソート 350,358
11 エタノール 237,594
12 ブタノール 236,113
13 アセトン 222,269
14 メタクリル酸メチル 211,576
15 無水酢酸 201,806
16 メチルエチルケトン 200,839
17 酢酸ビニル 197,900
18 プロピルベンゼン 193,412
19 オクタノール 167,591
20 フェノール 146,735
21 エチレングリコール 121,374
(出典:「危険物の海上輸送時の事故対応策の研究報告書(その1)」、平成16年(社)日本海難防止協会を一部改変)
 
表3.2.2(2) わが国における外航船舶の沖荷役によるHNS取扱量上位の品目
順位 品名 取扱量(M/T)
京浜港(横浜)
1 エタノール 124,082
2 二塩化エチレン 113,152
3 メチルエチルケトン 50,698
4 ノネン 42,052
5 シクロヘキサン 34,375
6 フェノール 32,400
7 イソプロピルアルコール 29,344
8 アセトン 27,608
9 Bunkai Gasoline 15,290
10 N-アクリル酸ブチル 14,200
11 スチレン 12,000
12 ジイソブチレン 11,380
13 1-メトキシ-2-プロパノール 10,355
14 酢酸メチル 9,574
15 n-ブタノール 8,493
16 エピクロロヒドリン 8,040
17 ジメチルフォルムアミド 6,970
18 α-オレフィン C-10 6,910
19 1-ヘキセン 4,626
20 メタノール 4,200
21 アクリル酸 4,000
(参考:「危険物の海上輸送時の事故対応策の研究報告書(その1)」平成16年(社)日本海難防止協会を一部改変)
 
 以上の様に、わが国で流通するHNSの多くの種について各係数値が整理されており、本研究においてNRDAM/CMEモデルが参考になると考えられる。
 次に、前章で示したNRDAM/CMEモデルのHNSの挙動に係わる各基礎式のもとで、物質比重が海水密度(1.022g/cm3: 水温25℃、塩分33〜34psuの海水に相当)よりも大きく、海中を拡散しながら沈降する物質を対象に、各式の感度分析を行い検証する。
 ただし、基礎式で流出物質の物性が直接に影響しない「拡散」と、海域の流動場の情報が必要となる「沈降」については検証計算を実施しない。これら項目については、今後モデルを構築する段階で試解析を行い、個々の効果を検証する。
 
3.2.1 対象物質の選定
 HNSの中には、海水密度よりも大きな比重を持つ物質は多く存在し、前掲の表3.2.1に示したNRDAM/CMEモデルで考慮されている426物質だけで見ても、約77%に相当する330種に達する。
 この様に多く存在する物質のうち、ここでは前掲の表3.2.2に示したわが国での輸送量および取扱量が上位の品目に含まれる物質を取り上げる。
 この結果、わが国での輸送量および取扱量が上位となるHNSのうち、海水の密度より大きな比重を持つ物質は、表3.2.3に示す6物質となった。
 
表3.2.3 対象物質として選定したHNS
 
3.2.2 感度分析
(1)分析ケース
 感度分析計算を実施する基礎式はNRDAM/CMEモデルの「蒸発」、「溶解・混入」、「再蒸発」であり、流出物質の物性に係わる係数値は固定し、風速や水温そして流出規模等を変化させての影響を検討する。
 なお、「堆積」に関しては、流出物質が海中の懸濁物質に吸着する割合を懸濁物質濃度と吸脱着係数(Koc)で決定するため、この係数値を比較検討する。
 なお、感度分析時にHNS流出量が必要な場合、流出量を838klとする。これは、京浜港(横浜)における入港実績の最も多い外航船舶の船型となる5000GT級(図3.2.1)が流出事故を起こした場合を想定した量である。この流出量は表3.2.4に示すケミカルタンカーの要目、および参考として掲載した海上保安庁「排出油防除計画」記載の「海洋汚染想定の指針」より、本船の戴貨重量トン数が9,306.1トンと推定され、その9%の値として想定した。
 
HNS流出量:838kl
○蒸発
風の影響検討ケース(風速:1m/s、5m/sの2ケース)
温度影響検討ケース(10℃、15℃、20℃、25℃の4ケース)
流出規模検討ケース(直径:5m、10m、15m、20m、30m、40m、50mの7ケース)
※流出規模:流出直後の海面での拡がり面積(円を仮定)
○溶解・混入
風の影響検討ケース(風速:1m/s、5m/sの2ケース)
厚さ影響検討ケース(1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、10mmの6ケース)
○再蒸発
温度効果検討ケース(10℃、5℃、20℃、25℃の4ケース)
 
図3.2.1  平成3年度の京浜港における外航ケミカルタンカーの船型別入港実績
(出典:「ばら積み液体化学物質の積替荷役に関わる調査委員会報告書」:平成6年(社)日本海難防止協会
「危険物の海上輸送時の事故対応策の研究報告書(その1)」:平成16年(社)日本海難防止協会)
 
表3.2.4 ケミカルタンカーの要目
(出典:「ばら積み液体化学物質の積替荷役に関わる調査委員会報告書」:平成6年(社)日本海難防止協会
「危険物の海上輸送時の事故対応策の研究報告書(その1)」:平成16年(社)日本海難防止協会)
 
【参考:海上保安庁「排出油防除計画」】
<海洋汚染想定の指針>
 排出油事故の発生場所の想定の考え方
 油が著しく大量に排出される事故発生の蓋然性の高い海域は、原則として、次の海域を考えるものとする。
 港内のタンカー係留施設付近海域
 タンカーの常用航路である狭水道及びその周辺海域
 外洋域における貨物船の常用航路付近海域
<排出油規模の想定の考え方>
 排出油事故の態様としては、他船との衝突、岸壁との衝突、座礁又は底触、タンクの爆発、バルブ操作のミス、油保管施設からの流出によるもの等が考えられるが、油が著しく大量に排出された場合における排出油量の想定をするに当たっては、次のような前提のもとに行うものとする。
○港内のタンカー係留施設付近海域
イ 排出油事故の態様として、港内のタンカー係留施設付近海域におけるタンカーの他船との衝突に伴う排出油事故とする。
ロ 排出油事故発生船舶の大きさは、当該係留施設を利用する最大級のタンカーとする。
ハ 排出油量の算定に当たっては、排出油量が破口の位置及び大きさ等により大きく異なるので、当該タンカーの載荷重量の9%の油が排出されるものとする。
((社)日本海難防止協会「昭和43年度大型タンカーによる災害の防止に関する調査研究完了報告書」参照)
○タンカーの常用航路である狭水道及びその周辺海域
イ 排出油事故の態様として、狭水道及びその周辺海域におけるタンカーの座礁又は底触に伴う排出油事故とする。
ロ 排出油事故発生船舶の大きさは、当海域を航行する最大級のタンカーとする。
ハ 排出油量の算定に当たっては、当該タンカーの最大センタータンク2個の底部に破口が生じたものとし、喫水線上の油が全量(最大センタータンク2個の全量の1/5が)排出されるものとする。
○外洋域における貨物船の常用航路付近海域
イ 排出油事故の態様として、外洋域の常用航路における貨物船の座礁または底触に伴う排出油事故とする。
ロ 排出油事故発生船舶の大きさは、当海域を航行する最大級の貨物船とする。
ハ 排出油量の算定に当たっては、当該貨物船の燃料タンクの船底部に破口が生じ、載燃料が全量排出されるものとする。


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