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平成18年度第3回海事の国際的動向に関する調査研究委員会
マラッカ・シンガポール海峡に関するクアラルンプール会議(IMO・マレーシア共催)
〜安全、セキュリティ、環境保全の推進〜
平成18年11月24日
国土交通省海事局外航課
 
I. 会議の背景
II. 会議の内容
III. 我が国の発表
 
I. マラッカ・シンガポール海峡に関するIMOクアラルンプール会議の背景
 
IMOのシッピングレーン防護に関するイニシアティブ
 
 9.11米国同時多発テロ以降、世界的に「セキュリティ」に対する懸念・関心が増大
■第92回IMO理事会[2004年6月]
 重要なシッピングレーンのセキュリティに関するIMO事務局長のイニシアティブを承認
■第93回IMO理事会[2004年11月]
 重要なシッピングレーンとして、具体的にマ・シ海峡を取り上げ、セキュリティだけでなく、航行安全と環境保全を議論するハイレベルの会議を、2005年秋にインドネシアで開催することを承認
 
沿岸国の動き
 
■沿岸三カ国外相会議(於:インドネシア・バタム)[2005年8月]
 マ・シ海峡における航行安全・環境保全・セキュリティ対策等について協議
「バタム共同宣言」を採択
・海峡における航行安全、環境保全及び海上セキュリティに係る基本的責任は沿岸国にある。
・海峡で実施されるいかなる対策も、国連海洋法条約を含む国際法に従うべきである。
 
IMOジャカルタ会議
 
■ジャカルタ会議(IMO、インドネシア政府共催)[2005年9月]
・マ・シ海峡における航行安全、海上セキュリティ、環境保全の推進に関する「ジャカルタ声明」を採択
 沿岸3ヶ国は、利用国、海運業界及び海峡の航行安全に関心のある者と定期的に、海峡の安全、セキュリティ及び環境保全に関して、負担分担も含めて協力の推進について議論するメカニズムを設けること 等
・中国、韓国、米国等の主要な利用国から、積極的な協力の意思表示
 
ジャカルタ声明
 
「ジャカルタ声明」の概要
(1)TTEGの取組みの支援及び促進
(2)海峡問題(負担分担を含む)の協力について、沿岸国と利用国等が定期的に議論するメカニズムの設置
(3)沿岸三カ国を通じた情報交換メカニズムの構築・強化に向けた努力
(4)沿岸三カ国の海上セキュリティの対応能力の強化・協力の促進・拡大
 
IMOジャカルタ会議のフォローアップ
■第23回IMO臨時理事会・第24回IMO総会[2005年11月〜12月]
 IMOジャカルタ会議のフォローアップ会議を、マレーシアがホストして開催することを承認
 
 同フォローアップ会議は、IMOとマレーシアとの共催により、クアラルンプール(KL)において開催
 
TTEGと利用国との協力に関する会合(1)
 
 2006年3月31日、シンガポールにおいて開催
 
・日、中、韓、英、豪(以上、本国から出席)、米、蘭、ノルウェー、パナマ、ギリシャ、デンマークの11カ国のほか、IMO、INTERTANKO、ICSが参加
・マ・シ海峡の航行安全・環境保全対策における協力について、沿岸国、利用国及び関係機関で討議
 
TTEGと利用国との協力に関する会合(2)
 
[我が国の対応]
 
●2004年マ・シ海峡通航量調査結果の報告
−我が国以外の多数の国が受益者となっていることを明示
−公平性、透明性、持続可能性等を考慮した国際的な枠組み構築の必要性を強調
●航行援助施設の維持管理・更新整備
 現在実施している既存の航行援助施設の維持管理更新を協力対象プロジェクトに含めること、及びこの事業が最も優先順位が高いプロジェクトであることを主張
 
TTEGと利用国との協力に関する会合(3)
 
●沿岸国3カ国が提示した協力対象プロジェクト
(1)TSS(分離通航帯)内の沈船の除去
(2)HNS(有害危険物質)データバンクの整備
(3)AIS(船舶自動識別装置)クラスBトラポンの実証
(4)潮汐・潮流・風観測システムの設置
●本会合の結果を踏まえ、沿岸3カ国において協力対象プロジェクトについて更に検討を行い、KL会議に報告
 
II. マラッカ・シンガポール海峡に関するIMOクアラルンプール会議
 
IMOクアラルンプール会議の概要
 
・日程:2006年9月18日−20日
・場所:クアラルンプール、イスタナホテル内会議場
・主催:国際海事機関(IMO)及びマレーシア政府
・出席者:
国土交通省−山本国土交通審議官 他
外務省−須田国際テロ対策担当大使 他
関係国等−沿岸国(マレーシア、インドネシア、シンガポール)
利用国(アジア諸国、欧米諸国等)28ヶ国
国際機関(IMO、ASEAN、IALA等)、事業者団体等(マラッカ海峡協議会、ICS、INTERTANKO等)10団体機関
 
日本からのプレゼンテーション(セッション3)
 
マ・シ海峡における安全、セキュリティ、環境保全の推進に関する利用国の考え方
(山本国土交通審議官)
(1)これまでのマ・シ海峡における日本の貢献を説明
(2)沿岸国と利用国が応分の負担をする新たな国際協力の枠組み構築が急務
・海峡の通航から多くの国々が受益
・海峡の通航量が増加
(3)施設整備事業は、維持管理等のための持続性が必要
(4)沿岸国と利用国等の協議の場を通じて、国際協力の枠組み構築に向けて積極的に協力していきたい。
 
日本からのプレゼンテーション(セッション5)
 
マ・シ海峡における通航量の動向とその影響について
(永松国土交通省海事局外航課長)
(1)1994年と2004年のマ・シ海峡における通航量データの分析結果を発表
・10年間で海峡の通航量が急速に増加
・東アジア諸国、欧州主要海運国、産油国等の幅広い国々が、海峡の通航から受益
・日本の相対的重要性は低下
(2)沿岸国、利用国及びその他利害関係者による新たな負担分担の枠組み作りが急務
 
日本からのプレゼンテーション(セッション8)
 
将来の協力の枠組みのあり方について
(栗林慶応義塾大学名誉教授)
(1)マ・シ海峡の通航から受益している者が、応分の負担をする新たな協力の枠組みが必要
(2)国連海洋法条約第43条に留意して、沿岸国と利用国の合意による国際協力の枠組みを構築することが必要
(3)(財)マラッカ海峡協議会の仕組みを説明
・船社等の海峡利用者や民間団体が、事業費を負担
・沿岸国との協議の合意事項について、覚書を締結
・覚書に従い、沿岸国の下で事業を実施
(4)次の基本的な要素を含む新たな枠組みの案を提示
・任意の資金拠出に基づく国際協力による事業支援のための基金の設立
・基金(資金拠出者)と沿岸国が協議する仕組みの設置
・沿岸国の主権下で事業を実施
 
航行安全・環境保全の沿岸国提供プロジェクト
 
(1)TSS(分離通航帯)内の沈船の除去
(2)HNS(有害危険物質)対応への協力
(3)AIS(船舶自動識別装置)クラスBの実証
(4)潮汐・潮流・風観測システムの整備
(5)既存の航行援助施設の維持更新
(6)津波被害を受けた航行援助施設の復旧整備
 
沿岸国提案の協力メカニズム(航行安全・環境保全分野)
 
(1)フォーラム
 沿岸国と利用国等の協力促進のための協議の場
(2)プロジェクト調整委員会
 沿岸国が提案したプロジェクトの実施に関する沿岸国と利用国等の調整
(3)航行援助施設基金
 回転基金のような航行援助事業用の特別基金
 
沿岸国提案に対する利用国の反応
 
中国−沿岸国提案プロジェクトのうち、以下の3つのプロジェクトについて支援の用意があり、沿岸国と協議していきたいと、協力の意思を表明した。
(2)HNS(有害危険物質)対応への協力
(4)潮汐・潮流・風観測システムの整備
(6)津波被害を受けた航行援助施設の復旧整備
 
・米国−中国が協力を表明したプロジェクトと同じ(2)(4)(6)の3つのプロジェクトについて、関心を示すとともに支援の可能性を表明した。
・韓国−MEHプロジェクトに100万米ドルの資金を拠出する。また、航行援助分野で技術協力等の支援を検討したい。
 
クアラルンプール声明
 
「クアラルンプール声明」の概要
 
(1)TTEGの取組みの支持及び奨励
(2)沿岸国と利用国等の対話協力メカニズムの支持
(3)沿岸国から提案されたプロジェクトの支持
(4)沿岸国提案プロジェクトと航行援助施設維持・更新の資金提供メカニズムの確立に向けた沿岸国と利用国等の協力
(5)海上セキュリティ強化に向けた沿岸国の努力の継続


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