|  次に、このような税徴収機関は中央機関と地方機関にどれくらいの割合で人員を配置しているのであろうか。それが表7に示されている。   表7 税徴収機関の規模 
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|  |  | 中央機関 | 各地方の地域監督機関 | 各地域の税徴収機関 | 国・地方情報センター | その他の機関 |  
| 総人員 | 人数 | 地方数 | 人数 | 機関数 | 人数 | 数 | 人数 | 数 | 人数 |  
| デンマーク | 10,770 | 730 | 5 | 7,770 | 30 | - | 5 | 1,000 | - | - |  
| ノルウェー | 6,058 | 640 | 37 | 1,638 | 99 | 3,600 | 3 | 180 | - | - |  
| スウェーデン | 10,318 | 1,080 | 7 | 9,238 | 120 | - | 3 | - | - | - |  
| 日本 | 56,239 | 634 | 12 | 10,693 | 524 | 44,086 | - | - | 26 | 826 |  
| フランス | 73,083 | 5,150 | 17 | 2,846 | 107 | 62,215 | 16 | 2,439 | 3 | 433 |  
| ドイツ | 118,000 | 1,450 | 14 | 3,800 | 606 | 109,000 | 12 | 2,000 | 1 | 950 |  
| イギリス | 95,000 | - | - | - | - | - | - | - | - | - |  
| アメリカ | 98,735 | 17,043 | 369 | 36,214 | 194 | 28,170 | 35 | 16,988 | 5 | 320 |  |     ほとんどの国では中央機関が1つあって、その下にたくさんの地方機関があるというハイアラーキー(階層)構造になっている。北欧諸国では近年こうした構造にちょっとした合理化が行われ地方税務署が大幅に統廃合された。  例えばノルウェーでは2001年に全国で19県に436あった地方税務署が2002年に99に統廃合された。またデンマークでは2005年に中央税務署と地域税務署の合併が行われて、税、失業保険料、傷病手当積立金、付加価値税、関税の徴収業務ばかりでなく不動産評価等の業務も行われるようになった。その結果、従来は275の地方自治体に1つずつあった地方税務署は現在30に減少している。スウェーデンでは、2006年7月1日から国税庁(Skatteverket)の下部構造ではあるが独立して滞納の取り立て等を専門に行っているクロノフォグデン(Kronofogden)の10の地方事務所が全国を扱う1つの機関に統合された。   4 滞納とその強制取り立て 表8 滞納率(税収に占める滞納額の割合) 
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|  | 滞納率 | 滞納数(単位:千件) |  
| 2002年 | 2003年 | 2004年 | 2004年発生 | 2004年末現在 |  
| デンマーク | - | - | - | - | - |  
| ノルウェー | - | 2.5 | 2.4 | - | - |  
| スウェーデン | 3.1 | 3.0 | 2.7 | - | 200 |  
| 日本 | 5.6 | 5.1 | 4.4 | 1,866 | 4,370 |  
| フランス | 7.1 | 6.7 | 5.9 | 929 | 399 |  
| ドイツ | 5.3 | 5.3 | 4.8 | - | 3,788 |  
| イギリス | - | - | - | - | - |  
| アメリカ | 5.9 | 6.1 | 6.2 | 12,580 | 26,429 |  |     表8には、北欧3カ国とわが国および主要先進国のすべての税に関する滞納率が示されている。滞納率には現在係争中である税の未払い部分も含まれている。アメリカを除くほとんどの国においてこの滞納率が小さくなりつつあるのは、納税に対する不満が改善されたか、あるいは徴税効率がよくなったか、あるいはその双方のせいである。表8にはそのほかに、2004年現在の滞納の新規発生とそれまでの累計が示されている。これらの数字は絶対数であるので、総納税者の数との兼ね合いで検討されるべきものである。  これらの国における滞納率の違いはどこからでてくるのであろうか。もちろん税負担の重さ、税の種類、徴税組織の効率性等いろいろな要素を考えることができる。以下ではそれらの中で特に徴税組織の効率性についてもう少し詳しく見てみよう。  表9と表10(OECDの文献ではこれらは1枚の表として示されているが、ここでは表示上の制約により、2枚に分けて示されている。この点は表11と表12、表13と表14についてもあてはまる)には税務職員が納税者の滞納等による租税債務の調査について、どこまで踏み込んで調査できるのかが示されている。   表9 納税者債務の確認についての税務職員の調査権(1) 
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|  | 情報を得るための調査権の有無 | 調査権は第3者にまで及ぶか | 要求された報告書の作成義務 | 屋内への入場調査権 |  
| 企業敷地内 | 個人の住居 |  
| デンマーク | ○ | ○ | ○ | 完全、自由 | 令状必要 |  
| ノルウェー | ○(制限有) | ○ | ○ | 完全、自由 | 個人の同意 |  
| スウェーデン | ○ | ○ | ○ | 完全、自由 | - |  
| 日本 | ○ | ○ | ○ | 完全、自由 | 完全、自由 |  
| フランス | ○ | ○ | ○ | ○ | 令状必要 |  
| ドイツ | ○ | ○ | ○ | 営業時間内 | 個人の同意 |  
| イギリス | ○ | ○ | ○ | - | 令状必要 |  
| アメリカ | ○ | ○ | ○ | 納税者同意 | 個人の同意 |  |    表10 納税者債務の確認についての税務職員の調査権(2) 
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|  | 捜査令状の必要性 | 書類の押収権 | 他の政府機関から情報提供 |  
| 企業敷地内 | 個人の住居 | 以下に制限 | 捜査令状 |  
| デンマーク | ○ | ○ | 犯罪行為 | ○ | ○ |  
| ノルウェー | × | ○ | 犯罪行為 | × | ○ |  
| スウェーデン | - | ○ | 深刻な不正 | ○ | ○ |  
| 日本 | ○ | ○ | 犯罪行為 | ○ | ○ |  
| フランス | × | ○ | 合理的疑惑 | ○ | ○ |  
| ドイツ | ○ | ○ | 犯罪行為 | ○ | ○ |  
| イギリス | ×○ | ○ | 深刻な不正 | ○ | ○ |  
| アメリカ | ○ | ○ | 税法違反 | ○ | ○ |  |     これらを見ても分かるように、税徴収機関はいずれの国においても個人の住宅内ないし企業の敷地内に入って、滞納に関する情報を収集するための権利を有しており、時にはその力は第3者にまで及びうる。しかしいくつかの国では他の政府機関から情報を得ることに制限が設けられており、また住宅内や企業敷地内に踏み込む場合には捜査令状を必要とするとか、犯罪行為に近い行為があった場合に限って踏み込むことが認められるといった形での制限が設けられている。 |