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近畿地区
 
滋賀県
初開催時の公営競技施行状況
 滋賀県における公営競技は、昭和二十三年七月競馬法の公布により従来栗太郡草津町(現草津市)において馬匹組合主催で施行されていた草津競馬を県営により施行することとなり、畜産課がこれを所掌していたが、当時は交通事情が悪く、売上げ不振で開催は休止が多かった。
 昭和二十三年八月自転車競技法が公布せられ各地で競輪が施行された。
 滋賀県においても近江神宮外苑でこれを施行することとなり、経済部商工課がこれに当たり、同神宮創建に最も縁の深い高松宮殿下より男子選手に宮賜杯、女子選手に同妃賜杯の下賜があり、昭和二十五年四月二十日、殿下ご台臨のもとに華々しく開催された。
 競輪場の施設費四二、九八六、八七一円四十銭は県、大津市折半負担の共有とし、年間県、市それぞれ六回づつ開催することが決定された。
 同年五月一日総務部に事業課が設けられ、競馬、競輪を所管することとなり、県における公営競技施行の基礎が固められた。
 初開催の売上げは、四一、三八一、四〇〇円となり、まずまずの成績で、以降概ね、六千万円、七千万円、八千万円台の売上げを示し、純益である一般会計への繰出しは、二十五年八、二四三、九二八円、二十六年二六、八五〇、〇〇〇円となり、当初の施設費は二年をもって償還することができた。
 しかし、競馬はいよいよ不振を極め、二十六年六月開催を最後に休止となり、間もなく工場用地に転用された。
 
モーターボート競走施行の気運
 中央において、モーターボート競走施行の議がおこるや県においてはこれに重大な関心を示し、我が国最大、風光明媚の琵琶湖においてこれを施行すれば、必ず京阪神のファンにアピールし、県財政の確保、利水と観光など、一石二鳥、三鳥を狙い、事業課員はこれが研究に余念がなかった。
 公選初代知事服部岩吉氏は、戦前より衆議院議員として中央政界に活躍されたが、兼ねて県馬匹組合の会長であり競馬についての造詣も深く、したがって、公営競技の功罪にも精通せられ、モーターボート競走についても当初から非常に意欲的であったが、笹川良一氏との会見で、県において施行の意を固められた。
 
競走会の創立
 二十六年八月十八日、県庁会議室において滋賀県モーターボート競走会創立総会が開かれ、発起人として、琵琶湖汽船株式会社社長黒川寛一、元長浜市長前川鬼子男、県監査委員田中耕次、びわこ観光株式会社常務取締役西村章、元立命館大学教授川又清忠、京阪自動車株式会社社長川崎一雄、江若鉄道株式会社社長後藤悌次、京阪電気鉄道株式会社社長村岡四郎、日本ヨット協会会長上田健治郎、彦根商工会議所会頭出口市兵衛、近江鉄道株式会社常務取締役井汲一二、大津商工会議所会頭岩崎定次郎、長浜商工会議所会頭小林源太郎の諸氏が挙げられた。
 この結果、次のとおり設立認可申請が提出された。
昭和二十六年八月三十一日
滋賀県モーターボート競走会
設立発起人総代 黒川寛一
 
運輸大臣 山崎 猛殿
モーターボート競走会設立認可申請
 モーターボート競走法第四条の規定に依る滋賀県に於ける標記競走会設立の件、本月十八日設立総会に於て決議致しましたから、モーターボート競走会及び全国モーターボート競走会連合会の設立及監督に関する規則第二条の規定に依る関係書類添附申請致しますから何卒特別の御詮議を以て御許可相成様お願申上げます。
 この申請書に添え、県においては次のような副申を付け運輸省に申請された。
事第九九号
昭和二十六年九月七日
滋賀県知事 服部岩吉
運輸大臣 山崎 猛殿
滋賀県モーターボート競走会設立について副申
 標記競走会設立許可申請書、別紙の通り提出がありましたが、本競走会は適当と存ぜられ、且又本県に於いては競願もないので、至急御詮議の上御許可下さるよう、モーターボート競走会及び全国モーターボート競走会連合会の設立及び監督に関する規則第二条により副申致します。
 この申請に対し、次のとおり九月十九日付を以って認可された。
官文第一、〇七五号
社団法人滋賀県モーターボート競走会
設立発起人総代黒川寛一
 昭和二十六年八月三十一日附で申請があった社団法人滋賀県モーターボート競走会の設立の件は許可する。
昭和二十六年九月十九日
運輸大臣 山崎 猛
 九月二十八日に登記を完了、十月一日に大津市白玉町に事務所を開設し、競走会の執務体勢が確立された。
 
競走場建設を内定
 県においては、投票業務その他施行者の執務体勢は既に競馬、競輪により経験ずみであり、あえて問題としていなかったが、競走方法、施設の内容、建設等について暗中模索の状態であったが、十一月二十八日中央において全国モーターボート競走会連合会の設立があり、これと緊密な連絡をとり、施設は大津市観音寺、尾花川両町の県有地の湖岸に建設することに内定、準備に着手した。
 
大津市、彦根市、長浜市の指定市の申請
 当時県内において市制をしいていた大津、彦根、長浜の三市は施行を希望し、相携えて知事に陳情するところとなり、次により指定市の申請があったので、知事の副申を添えて地方財政委員会へ申請された。
観競第一一〇号
昭和二十六年十一月十三日
大津市長 佐治誠吉
滋賀県知事 服部岩吉殿
モーターボート競走法第二条第一項の規定に基く指定申請書提出について
 標記に関しては、別紙申請書理由の通り風景と気候に恵まれ観光的立地条件に最適である当市にモーターボート競走を施行する事は誠に有意義であり且つ、市民の要望でもあって、之が実施の成果は独り市民の福祉のみに止らず、凡ゆる面に多大の貢献を齎すものと思考せられますので、特に本申請に対し認可を頂けます様、副申書を添付せられ度く御願い申し上げます。
昭和二十六年十一月十三日
大津市長 佐治誠吉
地方財政委員会委員長殿
モーターボート競走法第二条第一項の規定に基く指定申請書提出について
 標記の件に関しては別紙申請書理由の通り我国最大の琵琶湖に臨み、風景と気候に恵まれ、観光的立地条件に最適である当市に於てモーターボート競走を施行する事は、誠に有意義であり、且つ、市民の要望もあって、之が実施の成果は独り市民の福祉のみに止らず、凡ゆる面に多大の貢献を齎すものと思考せられますので、に別添「モーターボート競走法第二条第一項の規定に基く指定申請書」の通り申請致しますから、宜しく御審議の上、特に御許可仰ぎ度く御願い申し上げます。
モーターボート競走の施行を必要とする理由
 大津市は古来四季を通じ気候温和にして風景に富み、然も交通の要点に当るので、早くより民族伝統文化の中心となり、伝説と歴史的遺跡が数多く残されている。就中、天智天皇、志賀宮跡、聖武天皇の離宮跡、或は我国仏教の母胎地とも云ふべき比叡山の殿堂、三井寺、又紫式部由縁の石山寺等に次で八景で有名な瀬田の唐橋、歌の逢坂関跡、萬葉の長等山等が人口に膾炙されて居り、全国第三位の重要文化財(旧国宝)を持って居る。
 従って日本観光都市として、京都、奈良と共にその名は全国に喧伝されているが、之等の建造物、古美術の外に歌に詠まれ、絵に画かれ、国民に親しまれている我国最大の淡水琵琶湖がある。
 この琵琶湖は、富士と共に我国を象徴する代表的風物であり、既に国定公園の指定を受け、観光日本の重要な役割を持って居るが、国立公園の如く国の保護なき為、国際観光の見地よりみて、施設整備は戦時、戦後の資材及び財源難の為め進捗せず、道路、港湾、ホテル、スポーツ並にレクリエーション施設等は遺憾ながら、観光都市としてその体を為さない状態である。
 由来観光施設は各種に亘り、綜合的且つ、有機的に整備されてこそ始めて有効的であり又レクリエーションとの密接な関係を除いては真の観光はあり得ないのである。
 この見地から国定公園としての意義性格に合致するモーターボート競走を湖辺の美景を背景として麗湖に於て施行することは、如上の理由により非常に意義深いものがあり歴史が生んだ民芸産業、古美術と共に当大津市に観光的独特の色彩を添えるものであることは贅言を要しない。
 又一方これと並行してこの近代感覚的なモーターボートによる水上ドライブを琵琶湖上に取り入れれば近畿交通の好条件の下に一躍観光界の花形として内外に喧伝される事は必定で、本事業の目的であるモーターボート産業振興は勿論、国策観光の期待にも副ふものであることを確信する。
 以上の如く本競技実施による成果は、独り市民の福祉とその収益による観光体制、住宅教育施設等の整備のみに止まらず、失業対策の助成並に観光産業の促進等、凡ゆる面に裨益するところ少なからざるものがあるので大津市として特に本事業の指定許可に期待し、市民の要望に応えて之を申請するものである。
(以下略)
総第一、六三一号
モーターボート競走施行許可申請
 モーターボート競走法第二条第一項に規定する指定をうけたいので別紙のように申請いたします。
昭和二十六年十一月二十六日
彦根市長 小林 郁
地方財政委員会委員長
野村秀雄殿
モーターボート競走の施行を必要とする理由
 地方財政の窮乏に頻していることは、既に斯界の常識でありますが、特に本市は財政的立地因子の貧困なことに由来して本会計年度の如きは窮乏の極にあり、このまま推移すれば財政的破綻をまぬがれ得ない状態であります。
 即ち本市は昭和十二年市制を施行、以来市勢の振張に意をそそいできたのでありますが、元来本市は井伊家居城の城下町で街の中央に城廓があり、民情またこの環境の支配をうけてか、多分に封建性を内蔵しており、産業の発達も近時漸く進展の気運を示しつつありますが、その殆んどは所謂零細企業と呼ばれるもので、それらが税をとおして市財政に負うところも極めて僅少で、殊にこれら企業の昨年来よりの事業不振は顕著で、市財政にも影響するものがありました。
 こうした事情を前に本市財政は地方税法、地方財政法等の改正により、若干の改善をみたのでありますが、小都市の発展には未だ不充分であり、そのため予算の編成に当っても限られた財源内で市民の福祉増進と市勢伸張のため最も有効適切な施策の立案推進に腐心する現状であります。
 なお本市は未だ(一)新制中学校校舎建設も完成せず、(二)市警察庁舎にあっても国家警察庁舎と同居の状態であり、(三)道路また狭少で、これが改修を行わねばならず、(四)近くに琵琶湖を臨み乍ら市内の水質は極めて悪く、これがため日本一のマラリヤ風土病の対策に腐心しなければならず、(五)予てより上・下水道の完備が懸案され乍ら、これも未だ実現の域に到達しておりません。なお且つ、(六)国宝的存在(国宝未指定)の彦根城は年々修理を要するという状況でこうした窮地を乗り切るため支出の徹底的緊縮を意図し、他面税収の確保を期しているのでありますが本市の立地因子よりして、まことに困難といわざるを得ません。
 窮余の策として、この度市営モーターボート競走の実施意図、その収益を緊急経費に充当し、市財政の運営を容易ならしめたいと存ずるのであります。
(以下略)
昭和二十六年十一月二十六日
長浜市長 寺本太十郎
地方財政委員会委員長殿
モーターボート競走法による指定について
 首題の件に関しモーターボート競走法施行に伴い別紙の通り申請致しますから指定相成るようお願いします。
モーターボート競走を必要とする理由
 本市は昭和十八年四月市制を施行爾来鋭意市勢の伸展に力を注いできたのでありますが、日尚浅くして施設も遅々として進まず之が基因する所は一般に経営の基盤が脆弱でありその経済構造が弾力性に乏しいため財政的に危機に遭遇したことに依るのであります。当市は古来より繊維工業地帯として相当興隆して参ったのでありますが戦後経済界の不況により特に本市の繊維工業は零細企業組織のためその打撃は大きく一方農業経済に於ても所謂積雪寒冷単作地帯農業の自然的地理条件不利なるため産業経済、社会文化等の後進地域として取残され客観状勢の推移は益々窮迫化に向わしむる傾向にある事実に鑑み市の財政に及ぼす影響は非常に甚大でありまして、本市の如く税外収入の途無き自治体の財政は真に行詰りの状態であります。
 然るに一方緊急を要する諸事業が山積して現下の本市財政状況からして之が実施は洵に困難なる実態であります。
 即ち火急を要する諸事業の内二、三を挙ぐれば次の通りであります。
1 六三制実施に伴う教育施設
2 都市計画による末川改修工事(災害対策事業)
3 市庁舎の新築
4 都市計画による駅前道路拡張工事
5 農業災害復旧工事
6 上水道の新設
7 観光施設の整備
 以上の如く諸事業が山積して居りますが市の財政は前述の如く脆弱のため之等諸事業の完遂は洵に困難な実情にあります。
 今回政府に於て国際的観光施設と地方自治財源の確立の立場よりモーターボート競走法の公布を見、此際本市に於ても叙上の見地から是非競走施行者に指定を願いその収益によりこれら諸施設の財源の一部に充当いたし速かに実現を期せんとするものであります。
(以下略)
事第一三〇・一三一・一三二号
昭和二十六年十一月二十七日
滋賀県知事 服部岩吉
地方財政委員会委員長殿
モーターボート競走法第二条第一項の規定に基く指定市の申請について副申
 標記のことについて管下大津市(彦根市、長浜市)より別紙の通り申請があったが、右は適当と認めるから指定方御取り計い願いたい。


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