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競艇沿革史

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


五輪と戸田コース
 地元唯一の日刊紙「埼玉新聞」は十市競艇組合塩原圭次郎氏に、当時の模様の寄稿を依頼した。三十七年二月五日付埼玉新聞「月曜論壇」に“五輪と戸田コース”と題して発表されたものを下に転載する。

 東京オリンピックも、三十七年度に各省で要求した予算が、先般大蔵省内示予算で大幅に削減され、関係者を五輪(五里)霧中に追いこんでいる。本県にもっとも関係のある戸田ボートコースも、一応決定はみたものの、まだ、多くの問題を残している。当初の知事構想は、国際競技場としてのコース(幅一〇五メートル)の周辺を、都市公園法の指定をうけ、環境を整備し、オリンピック終了後は、名実ともに緑の水の公園として、県民の憩いの場所としたいという考え方だった。
 また戸田町民は、戸田コースが使用されることになれば地下鉄はひかれる、道路、橋りょうは改修される、町全体は水洗便所になる、グリーンベルトは除かれる、地価は上がる、ドルは落ちる、まるで福の神でもころがり込むようなうわさが、だれいうとなく伝わって招致委員まで作られた。しかし、その後、そうは問屋がおろさないことが、だんだんわかってきた。その矢先、大蔵省は戸田ボートコースの幅を八〇メートルでやれるとして、改修費三億五千万円を、三分の一にも足りない一億余万円に削り、さらに、都市公園整備費国庫補助分二億二千余万円を全部削ってしまった。さあ、こうなると、県も、組織委も、戸田町も、ガックリしてあいた口がふさがらないありさまだ。
 最近戸田町では主要道路の舗装にも地元負担金が出るとか、オリンピック地元協力費をたくさん取られるとかのうわさが飛び「そんなことなら年間七千万円の収入が得られる競艇を廃止することはとんでもない」という声が各所に高まってきた。
 一方これに呼応するように、これまでの招致委員会は解散し戸田組合議会では先に競艇はあくまで廃止しないと決議したことを再確認した。永井OOC施設委員などは、これではボート競技はできないから返上する以外にないとおこっている。
 県は先に朝霞の選手村を取り上げられた。もちろん、松永、福永両代議士のメンツもあり、目下、予算復活に大わらわとなっているようだが、目先はちょっと暗いようだ。一、二の新聞の記事によれば、大蔵省は「オリンピック、オリンピックというけれど、一つのお祭りじゃないか、国民の税金をあずかり、それを投ずるには・・・」とか、
「大蔵省側にも理くつがないわけではない。特に戸田コースの広幅と周辺の整備につき「膨大な国費をつぎこむのはムダだから、環境条件のそろっている相模湖の方がいい、という考え方は筋のとおったものといえる」とかの記事が見えていた。
 県は、県と組織委の決めた規模で周辺を整備することになれば、約六億六千万余円の全額を県費で負担しなければならない。そんなぼう大な金を知事が出すわけもないし、また県会あたりでも承認はすまい。なにしろ富裕県といっても、高校だけの問題にしろ高校数は全国(四十六府県)で三十九番目であり、高校志望者をスシづめにしても、中学浪人が本年一万八百人以上にもなり、三十八年度には二万人をこえるという。おまけに高校授業料まで値上げするといった県財政では、こんなぼう大な費用を県民の税金から出せないことは、自明の理である。
 県は最悪の場合、最小限の施設と整備で日漕や組織委を口説きおとし、あくまでボートは戸田でやり、終了後は国際競技場として国に移管する。そのためにも競艇廃止を前提条件としてハラを決めているようだ。
 そこで問題は競艇廃止である。公営競技の可否はしばらくおくとして、現在、競艇を施行しているのは、戸田組合(戸田町、川口、蕨)と、十市組合(本庄、深谷、鴻巣、東松山、狭山、飯能、加須、春日部、羽生、岩槻)の両者であって、競艇によって配分されている金額は、本年度戸田組合が約一億三、四千万円、十市組合が約九千万円となっている。これらの配分金はそれぞれ関係各市町の土木教育、産業などに計画的に使われ、地方財政をうるおしている。とくに戸田町は自己財源一億二千万円のうち、競艇収入七千万円と過半額をしめ、現在戸田町にある二百数十の工場からあがる固定資産税六千二百万円を上回っている。
 いま競艇廃止によって、こうした主要財源が皆無となれば、戸田町の財政計画は根底から考え直さなければならなくなるだろう。他の市でも金額こそ違え例外ではあるまい。これに加えて従業員の問題がある。もし競艇廃止ともなれば、戸田、十市両組合と、受任団体である財団法人埼玉県モーターボート競走会(染谷清四郎会長)は、解散を余儀なくされる。
 そうなると、これらに就職している職員、従業員はもちろん競艇に関係する予想屋、売店、出入商人など約六百余人は失業あるいは転業のやむなきに至り生活権の問題も起こり、オリンピック犠牲者として招致責任者たる県に、そのあとしまつが持ち込まれるおそれもある。要するに戸田コースは静水というだけで、水質は下水と汚水の流れ込みが半量をしめ、各国から参加する選手に対しては、汚水のう(迂)回水路新設は必須の条件となろう。
 こうみてくると、戸田コースは国際的にみて環境的に不適である。費用がかかり過ぎる、犠牲が多すぎるなど、幾多の悪条件があり、他に適当なコースがなければやむを得まいが、メンツばかりではオリンピックが招致できても、県民は救われないことも考えなくてはならないであろう。
 
「五輪と戸田コース」を載せた新聞(1)
 
「五輪と戸田コース」を載せた新聞(2)
 

競艇中止いよいよ迫る
 同三十七年三月六日参議院オリンピック準備委員(森中守義委員長)、三月十四日、オリンピック東京大会準備促進特別委員が漕艇場を視察され、競艇場従業員代表は白ハチマキ姿で反対陳情を行なった。
 
中止反対を陳情する従業員代表
 
知事との会談
 三十七年九月五日知事公舎において、県側から知事、副知事、総務部長、企画室長、十市側から石川管理者、山口副管理者、塩原局長出席の上、知事から県も延ばせるだけ延ばすことによって補償も少なくなるし施行者も利益があるので交渉したが、文部省は工事が遅れているので十月中測量、設計、十月下旬か十一月初旬に工事に着工したいと言われるし、県としても諸般の情勢からオリンピックはどうかと思ったこともあるが管理権や競艇再開のこともありここまできては協力体勢にならなければならずやむを得ず承諾した。戸田組合も承諾したので十市組合も承諾して貰いたいとの説明があり
1 工事の関係もあって九月開催でレースを打ち切って貰いたい。
2 かねて要望のあったものを一緒に解決したい。
との申し出があり、種々懇談の結果、下記のような了解事項が成立した。
1 県は、補償金として三十七年度四千万円、三十八年度三千万円を支出する。
(後に、三十九年度は再開が遅れたので事務費として五百三十万円追加して貰った。)
2 再開時施行権取得に関しては努力する。その際新四市も加入させることを了承願いたい。
3 西武園競輪譲渡の件は、今回問題にしないこと。
(競艇はやめるから県営競輪を移譲せよとの要求)
4 職員の問題は県も相談に応ずるが施行者側も適当に考えること。
5 競艇再開の問題は管理権が当方に移れば、別所沼及び大宮のように公園の中からボートコースを抜き取って再開できるようにしたい。
 なお、九月十三日知事公舎に十市、戸田両組合管理者が招かれ、副知事から十月二十五日起工式をやるので二十四日までに競艇は切り上げてくれとのことで、これを了承した。
最後決定
 十月十九日スイスの国際漕艇連盟会長の、トーマス・ケラー氏、文部省、県及びオリンピック組織委員の視察が行なわれ、十一月十三日の首相官邸に於けるオリンピック関係閣僚懇談会においてボートは戸田、カヌーは相模湖と最後的決定がなされ万事休した。
 
「競艇中止」を報道した新聞
 
劇的な決別
 昭和三十七年十月二十四日、愈々最後の日が来た。赤穂城明渡しではないが、先輩代々われわれまで日夜つめたるレース場も、この建物も近く取りこわしになると思うと心は暗い。塩原執行委員長も昨夜からレース場に泊りこみ感慨無量の様子だった。
 最後のレースが終わると職員、従業員一同が投票所に集まり最後の別れを惜しんだ。覚悟はしていたものの皆不安そうな顔つきで咳一つするものもいない。塩原氏は昨夜書いた詩を朗読して別れの挨拶としたが心なしか声がふるえていた。
 
「この拙い詩を、職場の友にささげてお別れの言葉とする」
 
澄みきった青い空
波一つないエメラルド色のコース
静かに暮れゆく秋のたそがれ
私はここにある吾等の職場を
こよなく愛した。
 
きれいな声でレースの放送が聞える
機械のように一枚二枚また一枚
器用にさばくせんさいな指先
爆音高く走る競艇
スタンドの群集は声もたてずに
ジット舟を見つめている。
 
ザワメキが急に起きる喜ぶもの
くやしがるもの怒るもの、顔、顔、顔
みな真剣そのものだ
人は何といおうと私は
この職場を限りなく愛していた。
 
人の世のさだめとはいえ
ついに来るべきものがきてしまった
招かざる客、オリンピックコースの
波は、この職場をむざんにも
打ちつぶしてしまった。
 
幾千の舟券は赤つちの中に
踏みにじられ
身うごきさえもしない舟は
つかれ果てた捨小舟のように黒く
静かにねむっている。
 
何処かでコオロギがあすの命も知らず
かすかに鳴いている
私までうらぶれた敗残者のようで
ひとしお秋のもの悲しさを感じた。
 
思えば、この幾とし月
雨の日も風の日もこの職場に通った
朝な夕な共にかたらい、共に笑った
多くの人達も、あすは東にまた西に
人々の愛着の心を残して
別れてゆくのだ。
 
星移り、ものかわって
再び逢えるのはいつの日か
私の頬には熱いものが一筋、また一筋
今はただ多くの友の上に
幸多かれと心から祈るばかりだ
さらばわが友よ、わが職場よ
さようなら、さようなら。
 
 朗読が終わると、従業員の中からすすり泣く声さえ聞えた。
 つるべ落としの秋の日はとっぷりと暮れて肩を落した人人が三々五々暗やみの中にすいこまれていった。
 
最終日の発売金額 一四、二七四、八〇〇円
〃 返還金額 〇
〃 売上金額 一四、二七四、八〇〇円
〃 入場人員 二、四五三名


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