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2-2-2 中国船舶用発電機業界の展望
● 中国造船工業の発展に伴い、国内市場での発電機の需要は増える。世界の造船市場拡大に伴い国際市場での発電機の需要も増える。
● 国内の生産企業と海外企業の技術提携が中国船舶用発電機業界の発展を促進する。
● 国有企業の経営状況はあまり良くない、一方外資系企業は資金、技術、製品品質及びアフターサービスの面で優位であり、国有企業の主導的な地位を揺るがしている。
 
2-2-3 中国船舶用発電機大手生産企業に対する調査
 2004年度の国内販売額が上位の、蘭州電機有限責任公司と山西汾西重工有限公司2社について調査した。
 
2-2-3-1 蘭州電機有限責任公司
(1)主な製品
 現在、同社は各種発電機及び付属する機器の生産、販売を行っている。
 2004年の売上収入は519百万人民元(=77.9億円)、販売利益総額は2百万人民元(=0.3億円)であった。
 主な製品は大・中型の交流発電機、大・中型の直流発電機、インバーター式発電機、軍事用特殊発電機等である。
 うち、船舶用発電機及び発電機セットの2004年度の販売額は全体の65%を占めている。船舶用発電機は整流器付交流発電機と整流器無し交流発電機の二種類である。他の軍用特殊発電機等及び発電機セットが全体の25%、その他の電気機械が10%となっている。
 
 下表は同社の各製品の生産販売量:
製品種類 生産量 販売量 売上高
船舶用発電機及びそのセット 13,000台 13,000台 37,000万元
他の発電機及びそのセット 7,000台 - -
(出典:傑勝調べ)
 
(2)生産設備
(工場)
 
 会社の敷地面積は58万m2で、主な設備は845台、うち精密、大型設備は71台、国際先進水準の輸入設備も60台ある。
 1994年度に国家機械工業百強企業及び国家認定の重点技術企業に認定され、同年中国船級社質量認証センターのISO9001品質保証システム認証を取得、2004年、ISO9000:2000の認証を取得。米国GE、ドイツAEG、シーメンスの先進製造技術を輸入し、しかも、YJSシリーズの高、低圧小型三相交流シンクロナス電動機、TZHW交流シンクロ電動機、交流サーボ主軸電動機、大型交流調速電動機等自社独自の新製品も開発している。
 
名称 加工能力(台/年) 製造国
各種旋盤 25,000 米国、ドイツ
(出典:傑勝調べ)
 
(3)資機材の調達
(主な調達区域)
● 原材料仕入れは全て国内であり、主な仕入れ品は発電機の固定子、回転子と軸等の生産用鋼板、鋳鉄等。
● 国内の仕入れ先は上海、武漢、太原地区の製鉄企業集団からがメインとなっており、そのうち太原からの購入量が一番多く、総購入量の45%を占めている。次は武漢、上海で、それぞれ全購入量の30%、25%になっている。
 
(4)販売先
 製品の90%が国内販売で、主要な販売エリアは華南、華東と華北地方である。うち、2004年度の華南地区での販売額が総販売額の40%を占めている。なかでも広東省向けが多い。華東地区、華北地区はそれぞれ20%であった。
 企業は自営輸出入権を持っており、2004年度の輸出売上高は総販売額の10%で、販売先はアメリカであった。
 
 製品は全て直接販売である。会社は全国31都市に販売事務所を設け、それらの事務所が販売とアフターサービスを行っている。顧客は造船会社、船主、ディーゼル発電機セットの組立・供給会社であるが、うち50%は造船会社である。
 
(主な顧客リスト)
最終顧客リスト 製品種類 2004年納入量 支払方法
広州広船国際股分有限公司 船舶用発電機 8台 小切手
広州文冲船廠有限責任公司 船舶用発電機 8台
江蘇江都船舶集団公司 船舶用発電機 1台
山東省威海造船廠 船舶用発電機 1台
(出典:傑勝調べ)
 
 船舶用発電機はディーゼルエンジンと組み合わせて用いられることから、
(1)発電機メーカーが自社でエンジンとのセットを組み立てる場合、
(2)船主又は造船会社がエンジンと発電機を別々に購入し、発電機セット組立・供給会社に持ち込みセットにする場合、
(3)発電機セット組立・供給会社が、エンジンと発電機を購入し、自らセットして、販売する場合
とがある。
 
(5)生産工期
 生産工期は約40日である。
 
(6)代金決済
 支払い方法は契約の際、総額の30%〜40%を支払い、残金は着払いとしている。
 
(7)製品輸送
 同社は現在自社で運送車両7台を持ち、鉄道駅までの製品運送を行っている。遠距離運送の場合、輸送会社を使う。輸送物流会社の指定は客と相談の上で決まる。
 
(8)今後の事業計画
 現時点で工場拡大の計画はないが、既存設備を活用して船舶用発電機と発電機セットの生産・販売を増やす計画である。同社の今後の三年間の船舶用発電機の生産・販売見込みは以下のとおり。
 
2005 2006 2007
生産販売総量(台) 15,000 17,000 20,000
(出典:傑勝調べ)
 
2-2-3-2 山西汾西重工有限責任公司
(1)主な製品
 現在、企業は各種の発電機及び少量の発電機セットの生産と販売を行っている。これらの製品は船舶、鉄道、通信、油田、鉱山等広い分野に使われている。同社主要な製品は“シーメンス”ブランドの発電機であり、2004年度の販売額は総販売額の60%を占めている。皆利ブランドの1FC6/1FJ6発電機セットの2004年度の販売額は総販売額の20%であった。
 
 下表は同社各製品の2004年度の販売データ:
製品種類 生産量 販売量 売上高
船舶用発電機 4,000台 4,000台 17,000万元
他の発電機 3,500台 3,200台 -
(出典:傑勝調べ)
 
(2)生産設備
 工場の敷地面積は56万m2、建屋面積は20万m2である。1990年、生産ライセンス貿易方式で1FC6/1FJ6シリーズの整流器無し恒圧シンクロ発電機製造技術を導入、1992年7月、シーメンスの技術スタッフが試作機の審査をし、この試作機はシーメンスの設計図と技術要件を満したことを認定、生産許可証を出した。同時に同社は中国船級社と中国船舶検験局の発電機製品の認証を取得、1997年、同社は中国新時代質量体系認証センターのISO9001認証を取得した。
名称 加工能力(台/年) 主要設備の製造国
各種設備 20,000 ドイツ
(出典:傑勝調べ)
 
(3)資機材の調達
(主な調達区域)
 原材料の仕入れは全て国内であり、主な仕入れ品は発電機の固定子、回転子と軸等の生産用鋼板、鋳鉄等。
 主な仕入れ先は、太原の企業からの購入量が一番多く、総購入量の45%を占めている。
 武漢地区からの購入量も30%と多い。残り25%の仕入れ先は華東地区の上海鋼鉄会社と江蘇、浙江省のシーメンス部品の販売店である。
 
(主な調達先)
企業名 主な調達品
常州市神力電機有限公司(江蘇省常州市) 発電機用鉄のプレート及び各類プレス加工部品
武漢鋼鉄(集団)公司(湖北省武漢市) 鋼材料等
太原鋼鉄集団有限公司(山西省太原市)
宝鋼集団上海第一鋼鉄有限公司(上海市) 鋼板等
(出典:傑勝調べ)
 
(4)販売先
 現在70%が国内販売で、2004年度華東地方の販売額は総販売額の30%を占めている。華北地区及び華南地区は何れも20%である。
 製品は全て直接販売しており、販売スタッフは約20人、上海と大連に船舶用発電機の販売事務所を設けている
 企業の主要顧客は国内の造船会社、国内のディーゼル発電機セットの生産会社、海外の船主及び海外のディーゼルエンジン生産会社である。うち、フィンランドのワルチラ、日本のダイハツと韓国の現代等の海外ディーゼルエンジン生産会社向け輸出が30%になっている。
 
 下表は同社の主要な造船会社のリスト:
エンドユーザー 製品種類 年間需求量 支払い方法
天津新港船廠 船舶用発電機 5台 小切手
大連造船重工有限責任公司 船舶用発電機 7台
江南造船(集団)有限責任公司 船舶用発電機 7台
上海澄西船舶有限公司 船舶用発電機 4台
大連新船重工有限責任公司 船舶用発電機
ダイハツディーゼル株式会社 船舶用発電機
 
 発電機生産企業の客先は殆どが、エンジンメーカー、造船会社と発電機セット組立・供給企業である。
 同社と国外のディーゼルエンジンメーカーは通常、一年契約を毎回し、何回かに分けて生産し、納品する。
 
(5)代金決済
 国内顧客の支払い方法は契約の際、総額の30%〜40%を支払い、残金は着払いである。海外の顧客も分割払いである。
 
(6)製品輸送
 同社は現在運送車両4台を持ち、短距離の製品運送を行っている。遠距離の道路運送は輸送会社に依頼しており、輸出製品の輸送は専門の海運会社に委託している。輸送会社の選定は客との相談で決まり、輸送費用は顧客が負担する。
 
(7)今後の事業計画
 2006年1月9日、同社はドイツのシーメンス株式会社から“1F.3/1F.4整流器無しシンクロ発電機の生産許可証”を取得した。1F.3/1F.4発電機はシーメンスの最新機種の一つで、生産が需要に追いつかない状態である。今回の技術導入に成功したことで、同社はさらにシーメンス発電機の生産ラインを増やす見込みである。
 
 同社の今後三年間の船舶用発電機の生産販売量の見込み:
2005 2006 2007
生産販売総量(台) 4,600 5,000 5,500
(出典:傑勝調べ)


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