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極意
(121)「ふるさと」を
脇(わき)に「日本」だ 「世界」だと
唱える者を あてにせぬこと
 
(122)他人(ひと)の金
力をあてに するなかれ
援軍(えんぐん)来ても それは援軍(えんぐん)
 
(123)人生の
登山口(とざんぐち)は 数あれど
七(しち)、八合目(はちごうめ)で あとは一緒(いっしょ)に
 
日本とは
どんな国かと
問われたら
我がふるさとの
大きなるもの
 
『呼子の鯨唄』
・・・一部の抜粋です
 
鯨骨きり唄(呼子町小川島鯨骨切り唄子供保存会によって歌い継がれています)
――捕れた鯨をさばく時の労働歌――
アー小川山見から ソーライ こう崎見れば
こう崎や セミのいお ソーライ 沖や ナガスよ
ア セミのいお ソーライ 沖や ナガスよ
アー よう切る、よう切る
アー沖じゃ 鯨とる ソーライ 浜では さばく
納屋の旦那さんは ソーライ 金はかるよ
ア 旦那さんは 納屋でよ
納屋の旦那さんは ソーライ 金はかるよ
アーよう切る、よう切る
アー納屋のロクロに ソーライ 綱繰りかけて
セミを巻くのにゃ ソーライ 暇もないよ
ア 巻くのにゃ セミをよ
セミを巻くのにゃ ソーライ 暇もないよ
※いお・・・魚 ナガス、セミ・・・鯨の名前
 
鯨お唄い(『日本民謡大観』に「刃刺踊唄」として似たような歌詞が載っています)
――祝いの席で唄われた――
思うことは ソリャ叶うたよーの サーヨイヤサ
末は鶴亀 亀ヨイヤサ
ヤーレソリャ 祝いのソリャアーものじゃようの サーヨイヤサ
鶴が舞う舞え 舞うよー ヨイヤナ
三国一じゃアー これから先は 鯨も大捕れしょアーヨカホイ
 
轆轤巻上げ唄(呼子町小川島鯨骨切り唄子供保存会によって歌い継がれています)
――捕れた鯨をさばく時の労働歌――
沖じゃ鯨取る 浜ではさばく ヨーイヨイ
納屋の旦那さんな こりゃ金はかる ヨーイヨーイヨイヤナー
ドートー エンヤ巻いた エンヤ巻いた 巻いた 巻いた・・・
ツツジ椿は野山を照らす ヨーイヨーイヨイヤナー
ドートー エンヤ巻いた エンヤ巻いた 巻いた 巻いた・・・
祝いめでたの若松様よ ヨーイヨイ
枝も栄える こりゃ葉もしげる ヨーイヨーイヨイヤナー
ドートー エンヤ巻いた 巻いた 巻いた 巻いた・・・
 
道歌(どうか)とは
日出山東光寺住職 青野 智道
 道歌の本来の意味は、道徳的、宗教的な教えをわかりやすく詠んだ短歌、教訓歌、といったものです。
 道徳、宗教の他に、茶道、花(華)道といった「道」の心を詠んだ短歌も道歌といってよいと思います。
 例えば茶道に「利休百首」というのが伝えられているとのことです。その中に
 
茶はさびて心は厚くもてなせよ道具はいつも有合にせよ
 
というのがあるそうです。また宗旦の
 
茶の道は心に伝へ目に伝へ耳に伝へて一筆もなし
 
など大切にされているようですが、道歌といってよいと思います。
道歌の歴史は古いようです。古歌として伝えられているものが多くあります。
 特に江戸時代(享保の頃)、石田梅岩が儒教を中心に学び、京都で町人を集めて聴講無料の講釈を始め、広く庶民に道義を訴え、日本における社会教育の始祖と呼ばれました。
 この梅岩によって興された庶民教学が、「石門心学」で、上方、江戸で心学者たちの活躍がめざましかったようです。中沢道二(どうじ)、柴田鳩翁(きゅうおう)といった心学者が中でも知られ、彼らの話は「道話」と呼ばれ、人々の人気を博しました。
 道二は、比喩(ひゆ)や諧謔(かいぎゃく)を交え、笑わせながら考えさせる道話形式を確立させた方だそうです。この道話の中に「道歌」が盛んに取り入れられたものと思われます。
 最後に、よみ人知らずの道歌を五つ掲げておきます。
 
父は打ち母は抱きて悲しめばかわる心と子や思ふらむ
人多き人の中にも人ぞなき人になれ人人となせ人
持つ人の心に依りて宝とも仇ともなるは黄金(こがね)なりけり
欲深き人の心と降る雪は積もるにつれて道を忘るる
ああせよと口で言うより斯うせよと為て(して)見せるこそ教へなりけり
 
略歴 竹内 勉  民謡の守門者、評論家
 
 
昭和 十二年 東京杉並区に生まれる
〃 二十五年 東京民謡保存の為、杉並区の唄採集開始
〃 三十六年 町田佳聲に師事
〃  四十年 「民謡源流考」(日本コロンビア)で芸術祭レコード部門奨励賞受賞「日本民謡大観」編纂に加わる
〃 五十二年 「午後のロータリー・日本の民謡」(NHK)放送開始、平成六年「音楽アラカルト」(NHK)と改名
平成十二年「ミュージックボックス」(NHK)と改名 続行中
〃 五十五年 『追分節』(三省堂)刊行
〃 五十六年 『民謡・その発達と変遷』(角川書店)刊行
平成 十四年 『民謡地図(1)はいや・おけさと千石船』(本阿弥書店)
〃  十四年 『民謡地図(2)じょんがらと越後瞽女』(本阿弥書店)
〃  十五年 『民謡地図(3)追分と宿場・港の女たち』(本阿弥書店)
〃  十六年 『民謡地図(4)東京の漁師と船頭』(本阿弥書店)
〃  十六年 『民謡地図(5)東京の農民と筏師』(本阿弥書店)
〃 七〜十四年 『生きてごらんなさい(1)―(9)』(本阿弥書店)
現在、『民謡辞典』(三省堂)二十八年目に原稿完成
 
事業の目的
 古くより海を中核とした生業の歴史を検証し、「交通交易の港町」として栄えた過去の歴史を記録する。中でも呼子町(現在は唐津市)の指定文化財である鯨組主の屋敷にまつわる捕鯨業に関わった人々が伝えた文化や、資料の調査収集と普及する活動を実施する。そのような活動を通じて、市町村合併で埋没しかねない郷土意識を顕在化し、地域の歴史に根ざした伝統文化を基盤としたネットワークの再構築により地域の活性化をめざすものです。


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