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国際ワークショップ
場所 根室市総合文化会館/第2講座室
 
開会式
日時:平成18年1月26日(木)9:00〜9:30
1. 開会
 
2. 主催者挨拶
根室市ハナサキ・プログラム推進委員会 会長 根室市長 藤原 弘
 
3. 参加科学者代表挨拶
サハリン漁業・海洋学研究所 カンタコフ・ゲンナジー 第一副所長
 
4. コーディネーター挨拶
根室市ハナサキ・プログラム・コーディネーター 柏井 誠 博士
 
サフニロ側の研究成果
日時:平成18年1月26日(木)〜1月27日(金)
I. 南千島海域の地域的な流れ:知見の更新
サハリン漁業・海洋学研究所:カンタコフ・ゲンナジー
 
:前回の会議で、海流について幾つか質問が出ており、私たちが得たデータは論理的な確認と調査の継続が必要であった。そこで2005年計測を続け、特別な調査のために調査ポイントを数点、選んだ。南千島海域の太平洋側、オホーツク海側ではどのような鉛直方向の動きがあるか、つまりハナサキガニの幼生が夏の始めごろ、どこで着生するかを特定できるかどうかを知ることが、我々が目指す問いの答えである。
 答えは次のような仮定になるだろう:南千島海域の一部として南千島海峡に焦点をあて、モデリングと、プランクトン採集調査から明らかになった幼生が最も集中する場所で、時計回りの循環と下降流を調査することにしたい。海流とCTDメーター調査を行うための調査ポイントをこの課題に沿って選択した。
 2005年サフニロはここで3ヶ所のCTDメーターによる測定を行い、また、二つの定点ステーション、Shalilaと0lgaを設置し、よい結果を得た。
 私たちのプレゼンテーションの目的は、千島海峡の流れのパラメータについて得られた結果を示すことである。
 
 私たちはどこにいるのか?
 南千島海域の太平洋側、オホーツク側についての話。
 
 海洋調査ポイントと自動測定装置を設置した場所
 
 2005年、CTDの測定によって得られた3点全てのデータの表。CTD測定は、水深100mの面からの力学的高度を計算する基本となり、それは南千島海峡の大部分をカバーすることができる。課題となるのは、暖かい時期、つまり春から秋までの、カニの幼生が孵化し、着生し、続いて定まった場所で群れを形成する時期に、この海峡で時計回りの循環がどのように変化するかを調べることである。
 続く三枚のスライドは地衡流の分布を示しているが、もちろん南千島海峡の実際のフラックスを完全に示しているものではない、が、これらから閉鎖した循環の季節的動態と安定性を判断することができる。これまでのデータでは、時計回りの循環は、過去の測定によるとこの海峡に特徴的だった。2005年には何が起こっているだろうか?
 
2005年5月の測定による力学的高度の分布
 
2005年7月の測定による力学的高度の分布
 
2005年9月の測定による力学的高度の分布
 
 ここで見るように、南千島海峡の南の部分では力学的高度の上昇が特徴的であり、そのことから暖かい時期には時計回りの循環(リング)が定常的にあると言うことが出来る。しかし、時計回りの循環は、季節の流れのなかで変化することに注目しなくてはならない。
 たとえば、2005年7月には、南千島海峡の北部と南部で、独立したリングが特徴的にみられる。
 それにもかかわらず、海域の南部では全調査期間にわたって時計回りの循環が特徴的に存在した。CTD調査については大体明らかになったが、自動測定装置ShalilaとOlga-1ではどうだろうか?
 
 この表は海流の定期的ではない成分を示していて、初期データを適切にフィルタリングして得たものである。海流ベクトルのデータの分析からわかるように、海域の南部では、北北西に向かう水の下降的な動きが優勢で、同時に海域の北部では、南南東への動きが優勢な水の上昇的な動きが見られる。
 北部のステーションOlga-1は、下降的な水の動きと言う点に関しては、我々にとって関心の薄いものであるので、はっきりとした水の下降が認められた南のステーションに焦点をあてよう。
 
 Shalilaステーションから得られたデータは興味深い特徴がある。
 全調査期間、鉛直方向の動きの図に変化はみられず、5〜10月までの測定期間全体にわたって、ここでは速度毎秒約1cmの速さで水が下降している。ハナサキガニの幼生の着生時期には、水深25mの水温が、2度〜7度まで変化していたことに注目したい。
 水平な成分同様、鉛直方向の成分にも、潮汐ではない定期的な振幅がある。その性質とそれが条件付けられる原因を解明するのは、別な調査の課題となろう。さて、これからこの振幅が海面レベルと関連しているかどうかを見ていこう。
 
 Shalilaステーションの海面が少しずつ波のように成長していくことには様々な想像をかきたてられるが、特に、宗谷海流が季節的に強くなることが影響を与えるのではないか、つまりこれまでの調査の結果から知られるとおり、この海域の二つの強い海流、親潮沿岸流と東サハリン海流が暖かい時期に弱まるので、それに応じて太平洋側からの流入、もしくは宗谷海流がShalilaの設置場所における海面の漸次的な波状の上昇を条件付けている可能性があるのではないかと考えられる。このようなテーマは別個の研究が必要であるので、他の知的探究者のためにやりかけたままで置いておくことにして、ある程度やり遂げた研究の結果を、簡単に見ていこう。
 
結論
 全体として全く短いものであるが。
 1: ShalilaとOlga-1の2つの調査点で南千島海峡に時計回りのリングがあることが確認された。
 2: それでも時計回りのリングは大きく季節的な変化を受け、そのことは2005年5月、7月と10月の測定結果に現れている。しかしながら、3点の調査全てで、定常的な時計回りの循環が海峡の南部の浅瀬に存在していることが同じように明らかになった。
 3: 固定したプラットフォームから鉛直方向のコンポーネントを直接測定した結果、5〜10月まで水の下降的な動きがあることがわかり、それがここで幼生の着生と同様にそれに続く集積を引き起こしているはずである。
 
 大砲より科学
ご清聴ありがとうございました。


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