4.6 風圧モーメント係数の表現
回頭、傾斜モーメント係数、CN及びCKは、横風圧力係数CYとモーメントレバーの積によって表現する。すなわち、CN、CKのモーメントレバー、LN及びLKは次式から求める。
LN(ψA)=CN(ψA)/CY(ψA)
LK(ψA)=CK(ψA)/CY(ψA) (24)
全ての実験データを使い、船種ごとのモーメントレバー平均、  、  をFig. 10にそれぞれ示す。横軸には風向角ψ Aをとる。
Fig. 10 |
(a) Averaged yaw moment levers and (b) averaged heel moment levers for each ship type |
4.7 回頭モーメント
Fig. 10(a)より  はψ A=90°を原点としたほぼ直線で近似できることがわかる。C Yが大きな値を持つ主要風向角(30°≤ψ A≤150°)を対象として、全船の平均で直線の傾きを求めると-0.149と求まる。
ψ A=90°でのそれぞれの船のモーメントレバー  は、横軸にC/L OAをとると、Fig. 11(a)のようになる。  をC/L OAの1次式で表すことにし、最小自乗法により直線の傾きを計算する。このとき、逐次法によって傾きを表現するための項の選択を行った場合も他項を複数選択することなく同じ結果となることを別途確認している。最終的に、C Nは次式のように表すことができる。
代表値としてC Nがほぼ極大となるψ A=50°での実験値と推定値とを比較しFig. 12(a)に示す。また、(13)式により船種ごとの平均推定誤差 CN50を計算し、Fig. 12(b)に示す。
Fig. 11 |
(a) Yaw moment lever at ψA=90°and (b) averaged heel moment lever at 80°≤ψA≤100° for all ships |
Fig. 12 |
(a) Calculated yaw moment at ψA =50°, CN50, comparing with experimental results and (b) averaged standard errors on CN50 for each ship type |
Fig. 11(a)でC/L OAが負の場合、実験値と  の近似値との間でやや差が見られた。C/L OAが小さい船とは、タンカー船型のようにブリッジが船尾に存在する船が相当する。
Fig. 12においてもタンカー船型に対する  の推定精度劣化が影響していることがわかる。しかし、他の船型については精度良く推定できていることがわかる。
4.8 傾斜モーメント
Fig. 10(b)に示すように概ね  は風向角によらず一定である。ただし、「Tan」はψ A=90°で最大となる山なりの傾向がある、ここでは、傾斜モーメントが大きくなる横風での値が重要であると考え、80°≤ψ A≤100°を対象としてL Kの平均値を求める。横軸にH C/L OAをとり、求められた値をFig. 11(b)に示す。
HC/LOAに対して非常に強い相関があり、HC/LOAが小さい場合は急激にLKが増加する非線形な傾向を示す。HC/LOAが小さい船としてはタンカー船型等が挙げられる。船上での流れの剥離に起因した傾斜モーメント成分が原因となり、見かけ上傾斜モーメントレバーは非常に大きな値を持つ。一方、HC/LOAが大きい場合、例えば客船型等では高さ方向船体中心に横力の着力点が存在する。最小自乗法によりLKの近似曲線を求め、CKを次式で表す。
C Kの代表値としてψ A=90°での実験値と推定値とを比較しFig. 13(a)に示す、また、 CN50と同様に平均推定誤差 CK90を計算し、Fig. 13(b)に示す。
Fig. 11(b)に見られるように、タンカー船型の傾斜モーメントレバー値が大きい上に、やや値にばらつきが存在するためタンカー船型の平均推定誤差は他の船に比べて大きく、特に「Tan」の誤差が大きい。CCFの場合も同じであったが、精度をより向上させるためには、デッキ上の流れの剥離やブリッジ形状の影響評価を推定式に反映させる必要があると思われる。
Fig. 13 |
(a) Calculated heel moment at ψA=90°, CK90, comparing with experimental results and (b) averaged standard errors on CK90 for each ship type |
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