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3.2.3 ETエリアでの作業位置検出評価
 10×10mの測定エリアにおいて,作業員の腰部に移動端末を,環境中に固定基地局を配置し(Fig. 11),2時間の連続計測(約7,000点)を行った.目視観測によって取得した作業員の実際の位置と,計測位置との誤差を評価した.目視観測の精度は0.5m程度である.
 Fig. 12に計測結果の一例を図示する.Fig. 12(a)は,ETの操作盤前にて入力作業を行っているときの計測結果であり,Fig. 12(b)は,作業台上で部材へのマーキング作業を行っているときの計測結果である.
 
Fig. 11 実験環境と固定基地局の配置
 
Fig. 12 ETエリアでの位置計測結果
(a)ET付近での作業
 
(b)作業台上での作業
◇・・・実際の位置,×・・・計算位置
 
 2時間の全作業工程において位置誤差の平均を求めたところ2.6mの精度が得られた.このうち,目視結果とETの位置との関係からETがLoSを遮断していない場合のみをサンプリングした場合,位置誤差は1.9mとなった.
 ETによってLoSが妨げられ精度が悪化することを考慮して,ETによるLoS遮断が起こりにくいように固定基地局の一つをETに固定し(Fig. 13),同様の計測を行った.全体での位置精度の平均値は1.6mに向上した.
 
Fig. 13 ETの影響を考慮した固定基地局の配置
 
4. 結論
 本研究では,造船所での作業計測を目的としてBluetoothによる位置計測システムを開発し,造船所環境において評価実験を行い以下の結論を得た.
・固定基地局を密に配置することで位置精度を向上させることができた.固定基地局を2m程度の間隔で配置し,端末を人体に装着しない状態で,平均誤差0.8m,標準偏差0.2mの位置精度が得られた.
・人体の影響により計測結果のばらつきが大きくなることを考慮して,前後の端末による補正をすることでばらつきを約2/3に低減できた.
・5×6mの計測エリアに6台の固定基地局を配置した場合,人体の影響補正をしたうえで平均誤差0.7m,標準偏差0.9mの位置精度が得られた.
・固定基地局を広範囲に設置し,作業員の作業エリアを概観するための広域エリア検出を行った.30×2mの広さの作業エリアを4分割してエリアの一致判定を行ったところ,認識率は80〜90%程度となった.本システムによる広域エリア検出の有効性を示すことができた.
・造船所環境においてアイトレーサ作業員の位置計測を行ったところ,2.6mの位置精度が得られた.さらにアイトレーサによる見通し経路遮断が起こりにくくなるように固定基地局配置を工夫した結果,1.6mの位置精度が得られた.単一作業エリア内で2m程度の位置精度という要求仕様を満足する結果が得られた.
 
謝辞
 本研究はシップ・アンド・オーシャン財団の技術開発基金による助成を受けて行った.
 
参考文献
1)安藤英幸, 榎本昌一, 大和裕幸, 佐々木裕一, “サーバ・クライアント型の音声認識エンジンによるウェアラブル作業計測システムの開発”, 日本造船学会秋季講演会論文集, 2004.11, pp. 135-136
2)J. Hightower and G. Borriello: "A Survey and Taxonomy of Location Systems for Ubiquitous Computing”, Extended paper from Computer, Vol. 34, No.8, pp.57-66
3)H.T.Friis:"A Note on a Simple Transmission Formula", Proceedings of the I.R.E and Waves and Electrons, May. 1946, pp.254-256
4)V. Erceg et al, "An empirically based path loss model for wireless channels in suburban environments," IEEE Journal on Selected Areas in Communications, pp. 1205-1211


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