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2.2 操船方法
 非係留式洋上風力発電は適度な風速を求めて移動し、必要に応じて台風を避けることに最大の特長がある。しかし、長さが1000m規模の大きさのため操船は容易ではない。風車抗力、波漂流力はヨットのように水線下のストラットの揚力で支えられる。しかし、この浮体は長大であるため、ヨットのように上手回し(タック)は現実的ではない。さらに下手回し(ウェアリング)にも大変時間を要するため、スイッチバックが現実的である。そのため、ストラットは十分な面積を持つ前後対称翼でなければならない。風上への移動は方向転換を繰り返して間切りながら行うこととなる。
 前後対称翼のストラットについては鋼板溶接で作る場合、実際の制作上薄さに制限が生じるが、厚翼に過ぎると揚力特性が極端に悪くなるので注意する必要があることが分かっている。
 
2.3 浮体形状と帆翼
 浮体形状は波無し周波数を利用することにより上下の波強制力を小さく出来る。波の中心周期が例えば9秒の場合、ストラット断面積がデミハル投影面積の20%位であると、プラットフォームの運動が小さくなることが期待出来る。
 風車抗力、波漂流力に十分対抗する揚力をストラットに発生させるためには、それに十分な前進速度が必要である。前進速度を得る方法として帆翼とスラスタが考えられるが、安全性確保の観点から両方を装備することが望ましい。現在知られている風車直径は2MWで80m直径、5MWで120m直径である。風車上面までの高さは140m位になる。帆翼の高さを風車高さと同じ位の約140mとしてみる。140mの帆となると、操作の観点から布帆は考え難く剛体帆となり、大型飛行機の翼より大幅に大きなものとなる。帆翼はかなりの重量になり、迎角の調整機構は特別の考慮が必要となる。現実には当面140mの帆は難しく、70m位が現実的なようである。帆翼の材料は重量当りの強度が優れたものが適しており、アルミ合金等がその候補となり、マストは強度の面で高張力鋼が考えられる。
 
2.4 波浪中運動、波漂流力
 浮体形状を波無し形状にすると造波減衰係数も小さくなり、水中に水平フィンが必要となるが、その時フィンを波喰い推進に有利な位置に設置することが考えられる。それはプラットフォーム全体でなく、一部だけの方が有利かも知れない。後に述べる部分模型による水槽実験の結果では超柔軟プラットフォームの場合、弾性振動を含む固有モードの同調周期以外では波漂流力は小さいが、同調周期では高い波高の時は風車抗力に匹敵する大きい波漂流力が加わることが分かっている。非係留式洋上風力発電の場合、暴風大波高の状況での安全性は極めて重要であり、大波高の時でも波に流されない波喰い推進浮体5)は安全性を増す上で大切である。
 波喰い推進はロワーハルを翼型にすることで実現できる。水槽模型実験で用いられた形状は、Fig. 3に示す様に、ロワーハル浮体の円柱の直径と同じ翼厚をもつNACA0030を選択している。これにより、翼に流入する流体の失速角を大きくし波浪中の推力発生を確保し、また全抵抗を小さくすることを狙っている。
 
Fig. 3 Wave devouring wing
 
Fig. 4 Model wave devouring test
 
Fig. 5  Wave drift force coefficient, o indicates without wing and > with wing
 
 Fig. 4の上図状態で図の右側から波を浮体に当て、翼の配置、枚数を通常円筒浮体と変え実験を行い、Fig. 5に示す結果を得た。横軸は波長/船長比であり、上側に推力を取る。図中◆印は、4翼の前縁を波上側に配置することを示し、ほぼ実験周波数全域で波に向かう推力発生を確認している。このときは、波浪推進により波漂流力を打ち消すばかりでなく、それ以上に大きな推力の発生が見られている。しかし、この実験からは翼は4翼前縁をすべて波上側に配置しなければ推力の発生がみられていない。今後さらにこの方面の研究が必要である。


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