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●第2部/モデル授業・ワークショップ
IT化にどう対応する?
長野県佐久市立中込小学校教諭 松島 恒志
 
 この4〜5年間、急速なインターネットの普及の中で、軽井沢でも小中学生の85%の家にパソコンがあり、そのうちの3分の2がインターネットにつながっている。
 松島先生は、当初、コンピューターの活用は現代の情報社会のなかで必要不可欠であり、教育現場への導入は当然の流れとしてとらえていた。しかし、昨年6月の佐世保事件に大きなショックを受け、これまでの実践を考え直すようになったという。先生のもとにも「このままでいいのか」、「禁止しなくていいのか」といった問い合わせが多く、教育現場では、頭ごなしの「モラル学習」や、管理や禁止を強化する“指導”が目立った。
 だが、「やらない、やらせない」という態度ではなく、とりわけ親と子の対話を重視しながら現実にしっかりと向き合うことの方が大事なのではないかと考え、子どもたちとともにインターネットに向き合い、掲示板やチャットを体験し、ともに考える授業を開発してきたという。
 
 このプログラムでは、前半は「子どもとインターネット その現状」についてのレポート、後半は、研修会場にセットした15台のパソコンを前に、参加者3人が組となって、掲示板とチャットを開き、書き込みをするなどの体験をした。参加者の約半数が、はじめての体験ということで、興奮気味で盛り上がる場面もあり、「子どもがはまるのはよく分かる」などの感想の声も。しかしその危うさも十分感じ取れる内容でもあり、大人もちゃんと内容を知った上で、子どもとも会話する必要が感じられる授業だった。
 
パワーポイントを使って説明する松島氏
 
参加者全員で「チャット」と「ブログ」の世界を体験
 
 
 授業の中で、「皆さんならどうしますか?」と投げかけられた「判断テスト」を紹介しよう。
 
[質問1] 「メールが来ました。“内容を変えずにこのメールを3人の人に出して下さい。もし出さないと不幸になります”。どうしますか?」
1. 出す 2. 出さない
[質問2] 「迷惑な広告メールが来ました。どうしますか?」
1. 配信停止と書いて返信 2. 返信しない 
3. 迷惑ですと書いて返信
[質問3] 「インターネット・ショッピングで、聞いたことのない会社ですが、“気にいらない場合は返品可能”として販売しているのを見つけました」
1. メールで確かめてから入金 2. 電話で確かめてから入金 
3. 入金しない
 
 「代金引き換え」の買物やアダルト系サイトの高額な料金請求、チャットをしていて優しそうな人から電話番号を聞かれた場合など、さまざまなケースの“危険性”についての解説も、子どもへの対応を考えさせられる提起となった。
 
(レポート:子どもとメディア常務理事 興津 武男)
 
●第3部/ノーテレビ・ノーゲームの取り組みは何をもたらしたか
事例報告(1)
「学校ぐるみノーメディアの取り組み 2年目の今」
埼玉県蕨市中央東小学校教諭 成田 弘子
 
 蕨市は人口6万8千人程度で人口密度が全国で最も高い、閑静な住宅地。取り組みのきっかけは清川輝基代表理事の『人間になれない子どもたち』であった。
 2004年の夏休みに中央東小学校の教育相談部からの提案として、保護者にまず「夏休みのノーテレビデー」を呼びかけた。次に日本大学でのメディアに関わる公開講座に参加した3人の教師を中心に、校内の教育相談・生徒指導部に具体化の話をしていった。
 取り組みの項目を小刻みにし、だんだんステップアップしようということで、「アウトメディア大作戦にチャレンジカード」という自己診断表を作成した。
 
 多様な参加を可能とするため、
1. 見る番組を選んでみる
2. テレビを見る時間を決める(1日□時間コース)
3. ゲームをする時間を決める(1日□分コース)
4. 食事のときはテレビ・ビデオを消す
5. 勉強するときはテレビ・ビデオを消す
6. ノーテレビデー(月1日コース)
7. ノーテレビデー(週1日コース)
8. ノーテレビウィーク(月に1週間コース)
9. ノーテレビチャレンジ(全く見ない週と2時間だけ見る週を交互に2回繰り返す)
 
といった中から選び、「チャレンジをして生まれた時間にどんなことをしたいですか?」「チャレンジをした感想を書いてください」といったことも記入させ、子ども自身が気づき、考えるようになっている。
 
 保護者への説明と並行して、子どもたちには保健の先生から「テレビやゲームの時間が長いとみんなの体にどう影響があるか」という内容の説明が行われた。
 『アウトメディアだより』を発行して家庭での理解を深めるための努力をしている。
 今後のこととして、アンケート結果を基にしたケータイとのよりよいつきあいのための取り組みが計画されており、こういった取り組みを蕨市全体へ広げていく動きもすでに始まっている。
 ラジオ番組でも取り上げられたが、成田先生を中心として独自に作成したチャレンジカードを活用してもらうための全国発信の取り組みも始まっている。
 10月30日、私たち実態調査グループでインタビューのため中央東小学校を訪問してわかったことは、成田先生が親に絶大の信頼を得ているということであった。
 今後の活動が実に楽しみな事例であった。
 
(レポート:子どもとメディア代表理事 井上 豊久)
 
 
中央東小学校の「アウトメディアだより」
(拡大画面:98KB)


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