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(2)ばいじん対策
 ジェットスクラバ単体及びACF反応器と組み合わせた舶用排煙処理システム性能評価試験のばいじん除去に関する結果をまとめると、表4.3.1の通りである。
 
表4.3.1 ばいじん除去に関する試験結果の概要
試験 項目 結果の概要
ジェットスクラバ単体
 
[共通条件]
・エンジン:小型発電機用ディーゼル
・燃料:A重油
スプレー水の液滴径
(スプレー水噴射圧力)
液滴径が小さいほど(噴射圧力が高いほど)ばいじん除去率が高い。
ガス、スプレー水液滴の流速 スロート部においてガス流速に比較しスプレー水液滴速度が大きいほどばいじん除去率が高い。
液ガス比L/G 液ガス比L/G=6/Nm3以上の条件ではL/Gに依存しない。
排煙処理システム
(ジェットスクラバ+ACF反応器)
 
[条件]
・エンジン:大型発電用ディーゼル
・燃料:C重油
ジェットスクラバ出口
ばいじん除去率
除去率はジェットスクラバ単体試験の除去率よりも低い。
エンジン、燃料の違いによりばいじん粒子径が小さくなった可能性もある。
ACF脱硫塔出口
ばいじん除去率
システム全体での除去率は62%。ただし、短時間の試験ではACF脱硫塔の圧力損失に変化は見られなかった。
 
 ジェットスクラバ出口でのばいじん除去率は、当初期待したほどの性能が得られず、ジェットスクラバ単体性能評価試験で除去率30%、排煙処理システム性能評価試験のジェットスクラバ出口で除去率17%であった。ジェットスクラバ単体性能評価試験と舶用排煙処理システム性能評価試験での除去率の差については、使用したディーゼルエンジン、燃料、スプレー水用海水温度の違いなどが要因として考えられるが、当初期待した90%のばいじん除去率より大きく下回った。生成したばいじんの粒子径がジェットスクラバで捕捉できる粒子径よりも大幅に小さかった可能性と、一旦スプレー水液滴に捕捉されたばいじんがジェットスクラバ下部吸引管、デミスタで回収されず再飛散した可能性がある。
 本システム性能評価試験における短時間の排ガス流通ではACF反応器の圧力損失に大きな変化は見られなかったが、ジェットスクラバで除去・回収できなかったばいじんは、そのままACF脱硫塔へ流れACF触媒の閉塞や圧力損失上昇を引き起こす原因となるため、今後長期の検証試験で本システムの信頼性についても評価する必要がある。
 ジェットスクラバでのばいじん除去率を向上するには、以下のような方法が考えられる。
・ジェットスクラバのスプレー水の液滴径を小さくする。
・スプレー水の流速を速くする。
・ガス流速を遅くしてスプレー水の液滴とガスの流速差を大きくする。
 液滴径を小さくしたり、液滴の流速を早くするためにはスプレー水の噴射圧力を高くする必要があるが、スプレー水のポンプ圧力は今回の設備でも0.5MPaであることから、設備コストおよびランニングコストを考慮して最適化する必要がある。
 一方、ガス速度低下のためにスロート部の内径を拡大することは、ジェットスクラバの体積が大きくなることから、システム全体のサイズを考慮して最適化する必要がある。
 今後、上記の対策等により、ジェットスクラバ高性能化を図る予定である。
 
(3)舶用排煙処理システムの最適化について
 ばいじん除去性能を有する増湿冷却装置として導入したジェットスクラバではあるが、本試験条件の範囲内では当初期待したばいじん除去よりもSOX除去に高い効果があることがわかった。これに加えて、ジェットスクラバは低圧力損失で運用することが可能であり、圧力損失が制約される舶用排煙処理システムに適した特徴を有する装置であると言える。一方、ACF反応器は少量の水の添加のみで運用することが可能であり、ランニングコスト(所内率)が低減できるといった特徴がある。
 以上の結果、ジェットスクラバとACF反応器の性能(ばいじん除去率、SOX除去率)と運用方法(所内率、圧力損失、メンテナンス性)、船内配置方法(位置、機器寸法)、設備コストを考慮し最適に組み合わせることで、船舶用排煙処理に適したシステムとすることができる(図4.3.3)。
 ジェットスクラバとACF反応器を組み合わせたシステムの最適化に関しては、4.4項にて詳述する。
 
図4.3.3 舶用排煙処理に適した排煙処理システム


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