4.2.3 結果および考察
(1)ジェットスクラバ単体性能評価試験
各条件において処理ガス量が若干異なるため、処理ガス量に対するスプレー水流量の割合をL/Gとして表し、運転条件のパラメータとした(表4.2.5)。
L/G[L/Nm3]=スプレー水流量[L/h]/処理ガス量[Nm3/h]
L/G、スプレー水粒径等の各ジェットスクラバ運用条件(Run1〜6)におけるばいじん、硫黄酸化物(SOX)、SOFの除去率を表4.2.11、表4.2.12、表4.2.13にまとめた。
表4.2.11 排ガス計測結果(ばいじん)
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除去率[%] |
Run 1 |
31 |
Run 2 |
24 |
Run 3 |
20 |
Run 4 |
32 |
Run 5 |
8 |
Run 6 |
15 |
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表4.2.12 排ガス計測結果(SOX)
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除去率[%] |
Run 1 |
100 |
Run 2 |
98 |
Run 3 |
90 |
Run 4 |
98 |
Run 5 |
47 |
Run 6 |
55 |
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表4.2.13 排ガス計測結果(SOF)
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除去率[%] |
Run 1 |
36 |
Run 2 |
38 |
Run 3 |
28 |
Run 4 |
39 |
Run 5 |
13 |
Run 6 |
3 |
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各試験(Run1〜6)におけるばいじん、SOX、SOFの除去性能を評価するために下記の通りまとめた。また、ジェットスクラバにおける圧力損失(=ジェットスクラバ入口圧力−ジェットスクラバ出口圧力)についても同様に纏めた。
(a)噴霧圧を0.5MPa(スプレー水粒径:小、水滴の速度:大)とした際のL/G依存性
(b)噴霧圧を0.1MPa(スプレー水粒径:大、水滴の速度:小)とした際のL/G依存性
(c)L/G=2.9におけるスプレー水粒径(噴霧圧、水滴速度)依存性
(d)ノズルA、B、CのL/G依存性
ジェットスクラバ圧力損失、ばいじん除去性能、SOX除去性能、SOF除去性能結果を図4.2.3〜4.2.6、図4.2.7〜4.2.10、図4.2.11〜4.2.14、図4.2.15〜4.2.18、に示す。
ジェットスクラバの圧力損失については図4.2.3〜4.2.6に纏める。ジェットスクラバ採用のメリットとして、出口ガス圧の昇圧が挙げられる。本試験では噴霧圧が0.5MPaの条件(スプレー水粒径:小)において出口ガス圧の昇圧が確認されており、L/Gの増加に伴い圧力損失が低下した。スロート部においてガス流速よりも水滴の速度が小さくなる噴霧圧0.1MPaの条件では、確認されなかった。
図4.2.7〜4.2.10に示すように、ばいじん除去率はスプレー水の粒径(および水滴の速度)に依存する。噴霧圧0.5MPaにおける除去率はL/G=6L/Nm3の条件で約30%を示し、L/Gを19L/Nm3まで増加させても性能向上は認められなかった。
SOX除去性能は図4.2.11〜4.2.14に纏めた。硫黄分の含有量が約0.9%程度であるA重油を燃料に使用しており、ジェットスクラバ入口のSOX濃度は200〜300PPm程度となった。低濃度条件のため、噴霧圧0.5MPaの条件ではL/G=6L/Nm3以上で90%以上の除去率を示した。高SOX濃度条件での性能評価はシステム全体(ジェットスクラバ+ACF反応器)の性能評価試験にて行なう。
SOFの除去率(図4.2.15〜4.2.18)は、ばいじん除去性能と同様の傾向を示し、噴霧圧0.5MPaにおける除去率はL/G=6L/Nm3の条件で約30〜40%を示し、L/Gを19L/Nm3まで増加させても性能向上は認められなかった。
以上の結果から以下のことが分かった。
(a)L/Gが同一の条件であっても、スロート部においてガス流速よりも水滴の速度が大きくなる条件(噴霧圧0.5MPa)では、小さくなる条件(噴霧圧0.1MPa)と比較し、ばいじん、SOX、SOFの除去率が向上した。
(b)(a)項条件ではジェットスクラバ出口ガス圧力の昇圧を確認することができ、システム全体の低圧損化を図ることが可能。
(c)ばいじん、SOFの除去率についてはL/G=6L/Nm3以上において性能向上が認められない。
高L/G条件でのジェットスクラバ運用は、ポンプ動力および排水量の増加につながるため、本システムでは可能な限り低L/G条件での運用を目指したい。そのため、ACF反応器を加えた排煙処理システム全体の性能評価はL/G=6L/Nm3(噴霧圧=0.5MPa)の条件で実施することとした。
図4.2.3 |
噴霧圧を0.5MPa(スプレー水粒径:小)とした際のジェットスクラバ圧力損失とL/Gの関係 |
図4.2.4 |
噴霧圧を0.1MPa(スプレー水粒径:大)とした際のジェットスクラバ圧力損失とL/Gの関係 |
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