(2)排煙処理システム性能評価試験(ジェットスクラバ+ACF反応器)
システム全体の性能評価ではジェットスクラバ部、ACF反応器部ともに海水の循環使用は行なわず、フレッシュな海水を噴霧した。使用した海水はジェットスクラバ単体の性能評価試験と同様である。
本試験において採用したジェットスクラバの海水運用条件については4.2.3項にて述べる。ACF反応器では表4.2.6に示すフルコーンタイプのスプレーノズルを用いて、ACF触媒へ均一に海水を噴霧した。
表4.2.6 ACF反応塔スプレーノズル仕様
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オリフィス径
[mm] |
スプレー水流量
[L/min] |
スプレー角度 |
0.007
MPa |
0.15
MPa |
0.3
MPa |
0.5
MPa |
0.7
MPa |
0.05
MPa |
0.15
MPa |
0.6
MPa |
ACFノズル |
0.51 |
- |
0.16 |
0.22 |
0.28 |
0.33 |
- |
50° |
61° |
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排ガス源に使用した大型発電用ディーゼルエンジンの仕様を表4.2.7に示し、使用したC重油の燃料性状を表4.2.8に示す。硫黄分は2.4%となっている。試験では100%負荷運転時(C重油燃料)の排ガスの一部を抜き出した。ジェットスクラバ入口のSOX濃度は燃料中の硫黄含有量が4.5%のケースを想定して900〜1,000ppmになるように調整した。ばいじん、NOX等のその他の成分はエンジンの排ガスをそのままとし、濃度調整は行なわなかった。
表4.2.7 大型発電用ディーゼルエンジン仕様
項目 |
仕様 |
形式 |
4サイクル過給器付 |
シリンダ数 |
18 |
定格出力 |
7,800kW級 |
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表4.2.8 使用したC重油の燃料性状
項目 |
性状 |
灰分[wt.%] |
0.012 |
残留炭素分[wt.%] |
11.1 |
動粘度(50℃)[mm2/s] |
170 |
流動点[℃] |
-15.0 |
密度(15℃)[g/cm3] |
0.9538 |
引火点[℃] |
95.5 |
硫黄分[wt.%] |
2.40 |
水分[vol.%] |
0.00 |
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4.2.2 分析方法
(1)排ガス計測方法
表4.2.9に示すように、本試験ではジェットスクラバおよびACF反応器の入口および出口におけるSOXとばいじんの濃度計測を行なった。ばいじん計測については、ばいじん採取の際に等速吸引を実施する必要があるため、各計測点における排ガス温度、水分量、静圧、排ガスの流速等を求める必要がある。そのため各項目についても併せて実施した。
ディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質(PM: Particulate Matter)の成分を示す。PMの主成分は燃料に起因した黒煙(すす)であるが、種々の成分からなる混合物でもある。有機溶剤(ジクロロメタン等)により溶けるかどうかで不溶分と可溶分(SOF: Soluble Organic Fraction)に分けられる(4)。
本試験ではACF触媒性能および排水成分に影響を及ぼすと考えられるSOF(有機溶剤可溶分)の計測も行なった。SOFは石炭ガス化設備等において計測実績のある三菱重工業独自のタール計測法に準じて計測し、有機溶剤(トルエン)に可溶な成分をガスクロマトグラフ(GC)にて分析した。
表4.2.9 排ガス計測項目と計測箇所
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項目 |
備考 |
計測内容 |
ばいじん |
円筒ろ紙法(5) |
SOX |
過酸化水素吸収、沈殿滴定法(6) |
水分 |
塩酸カルシウム吸収法(5) |
SOF(油分) |
トルエン吸収法 |
計測箇所 |
ジェットスクラバ入口 |
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ジェットスクラバ出口 |
ACF触媒出口 |
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(2)排水分析方法
排煙処理システムを稼動させた際に排水として排出される副生成物の量を把握するため、ジェットスクラバおよびACF反応器からの排水について表4.2.10に示す項目の排水性状分析を行なった。本結果をもとに船外への排出方法および中和処理システムについて検討する(4.3.3項)。
表4.2.10 排水分析項目と分析排水
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項目 |
備考 |
分析内容 |
pH |
ガラス電極法(7) |
SS(8) |
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CODMn |
100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(9) |
n-ヘキサン抽出物質 |
不揮発性鉱物油類及び不揮発性動植物油脂類(10),(11) |
分析排水 |
ジェットスクラバおよびACF反応器排水 |
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