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 海水を用い、予冷および本冷部L/Gを1.9、19.4の条件(試験2-1)にて実施した際の温度分布およびガス計測結果を図3.2.4、表3.2.9に示す。図3.2.7においては、比較データとして純水を使用した際の結果も併せてプロットした。海水においても純水を利用したケース同様、装置出口において100%以上の飽和度を示し、L/G=1.9である予冷出口においてガス温度60℃以下を示した。ばいじん(NaCl)計測結果においては装置出口ヘの塩類の飛散を確認することはできなかった。したがって、増湿冷却に起因したACF触媒への塩類影響は小さいと想定された。
 
図3.2.4 海水を用いた際のガス温度分布
 
 入口ガス温度を50℃上昇させた300℃条件においてもほぼ同冷却水条件(試験2-2)にて試験を実施した。その際の温度分布およびガス計測結果を図3.2.5、表3.2.10に示す。本結果においても、装置出口において100%以上の飽和度を示し、L/G=1.6である予冷出口においてガス温度64℃以下を示した。
 
図3.2.5 ガス温度分布(入口温度影響評価)
 
 増湿冷却の平衡に達した時の到達温度は、ガス温度と組成、及び、ガス中の水分濃度、噴霧する水の温度などが決まれば、熱力学に一意に決定される。そこで入口ガスの温度、及び、水分濃度の計測結果から増湿冷却後の到達ガス温度を予測した。計算の手順は概略以下の通りである。
1)適当な増湿冷却水量を与えて全量蒸発した仮定したときに熱収支が合う出口ガス温度を求めた。すなわち、入口側のガスと加えた増湿冷却水のエンタルピーの合計と、出口側のガスのエンタルピーの合計と増湿冷却水の蒸発潜熱の合計が等しくなる出口ガス温度を求めた。
2)そのときのガス中の水分濃度と出口ガス温度での飽和蒸気濃度を比較し、前者の方が後者よりも大きければ、次のステップでは与える増湿冷却水量を減らした条件で、反対に、前者の方が後者よりも小さければ、次のステップでは与える増湿冷却水量を増やした条件で1)の計算を実施する。
3)最終的に出口ガス中の水分濃度と、到達する出口ガス温度での飽和蒸気濃度が等しくなる条件が、増湿冷却で平衡に達した時のガス温度と蒸発する水分量になる。
 
 表3.2.8〜表3.2.10の入口のガス温度、水分濃度から、上記の手順により増湿冷却で到達するガス温度の予測値を求めると表3.2.11の結果になった。図3.2.6に増湿冷却後のガス温度の予測値と計測値をプロットしたが、予測値よりも計測値の方が低くなっており十分増湿冷却されていることが分かる。これより、出口ガス中ではACF触媒によるSO2除去に必要な水分飽和状態に達していると考えられる。予測値と計測値が一致しない原因は、放熱などによる冷却のためと考えられる。
 
図3.2.6 増湿冷却後のガス温度の予測値と実測値の比較
 
 表3.2.8〜表3.2.10に示す通り、本試験では44%のSO2除去率、36〜54%のばいじん除去性能も確認することができた。また、今回取得したばいじん除去性能(試験2-2)より排水性状を想定した。単位ガス量当たり22.9mg/Nm3のばいじんが冷却水に混入することになり、単位時間当たりでは4.58g/h(57.25mg/h /kW)に相当する。これら増湿冷却において除去されたばいじんは増湿冷却に用いられた海水中に移行する。海水を循環利用する場合はばいじんの蓄積によりノズルのつまりあるいはポンプのつまり等が懸念されるため、排出水処理も含めた評価が今後の課題となる。
 
3.2.4 まとめ
 ディーゼルエンジンにより発生させた高温排ガスを海水と気液接触させ増湿冷却するシステムにおいて、増湿冷却水量、排ガス温度、飽和度の関係、ACF触媒への塩類飛散の影響を把握するため試験を実施し下記結果を得た。
・海水でも純水同様、増湿冷却が可能であることを確認した。
・L/G=1.6以上あれば装置運用条件の温度はクリアできることを確認した。温度から熱力学的に予測される飽和度としては十分である。しかし、装置からの放熱で温度が低下した可能性も考えられるため、ACF触媒によるSO2除去反応に必要な水分飽和に達しているか予冷出口の飽和度の計測による確認が必要である。
・海水を増湿冷却に用いても極端に塩類が飛散することは無いことを確認した。
・増湿冷却部で一部除じん出来ることは確認出来たが、完全に除じん出来るわけではない。舶用へ適用するためには、ディーゼルガスを海水で増湿冷却したあと、ACF触媒に導く一貫試験を実施し、長期連続運用した際のSO2およびばいじん除去性能、塩類飛散についての検討が今後の課題である。


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