(2)装置構成機器の構造および仕様
a)増湿冷却試験装置(全体)
本装置の設計条件を表3.2.1に示す。図3.2.1に示す通り、装置入口および出口にガス計測座を、装置入口(TIR-1)、予冷部(TIR-2、3)、予冷部出口(TIR-4)、本冷部出口(TIR-5)にはガス温度計測座を配置した。
表3.2.1 装置設計条件
|
試験装置入口 |
試験装置出口 |
処理ガス量/Nm3/h |
150-250 |
|
ガス温度/℃ |
250-400 |
<65 |
ガス中水分濃度/% |
6 |
|
ばいじん濃度/mg/Nm3 |
50-150 |
|
|
b)予冷部
高温排ガスに冷却水をスプレーするため予冷室およびスプレーノズルにはハステロイ材(HC-22)を使用した。予冷部ノズル仕様は表3.2.2に示す。
表3.2.2 予冷部スプレーノズル仕様
圧力/MPa |
0.05 |
0.10 |
0.15 |
0.20 |
0.25 |
0.30 |
0.35 |
吐出水量/L/min |
6.0 |
8.5 |
10.0 |
11.5 |
13.0 |
14.0 |
15.0 |
噴霧角度/° |
- |
77 |
- |
79 |
- |
79 |
- |
|
c)本冷部
FRP製の反応塔に充填材(PP製)を内蔵し、充填層上部にはスプレーノズル2個を配して冷却水を均一散布できるようにした。接触方式としては、冷却水が充填層上部から下部へ流下するのに対し、ガスは下部から上部に向かって流れる気液向流方式を採用した。予冷部ノズルの仕様は表3.2.3に示す。
表3.2.3 本冷部スプレーノズル仕様
圧力/MPa |
0.5 |
1.0 |
1.5 |
2.0 |
2.5 |
3.0 |
吐出水量/L/min |
25.6 |
34.2 |
43.5 |
48.0 |
51.0 |
56.0 |
噴霧角度/° |
90 |
90 |
90 |
100 |
100 |
100 |
|
d)デミスタ
本冷部と同様の充填材を内蔵し、排ガス中の同伴ミストを分離除去させる。デミスタ下部にはスプレーを設け、定期的に洗浄することで運用できるシステムとした。
e)その他(排ガス発生源)
本試験では排ガス発生源としてディーゼルエンジンを用い、そのエンジン仕様は表3.2.4に示す。燃料にはA重油を用い燃料性状は表3.2.5に示す通りである。
表3.2.4 エンジン仕様
項目 |
仕様 |
用途 |
発電用 |
形式 |
水冷4サイクル |
気筒数 |
4 |
定格出力 |
80kW級 |
|
表3.2.5 燃料性状(A重油)
項目 |
性状 |
灰分[wt.%] |
<0.001 |
残留炭素分[wt.%] |
0.44 |
セタン指数(JISK2204) |
49 |
密度(15℃)[g/cm3] |
0.8680 |
引火点[℃] |
73 |
硫黄分[wt.%] |
0.94 |
窒素分[wt.%] |
0.02 |
推定水素分[wt.%] |
12.9 |
推定炭素分[wt.%] |
86.1 |
水分[vol.%] |
0.01 |
|
(3)試験条件および計測内容
冷却水に純水および海水を用い表3.2.6の冷却水量条件にて試験を実施した。また、処理排ガス温度の影響を評価するため、海水利用時においては装置入口ガス温度も試験条件に加えた。
本試験では上記条件における装置各点ガス温度(TIR-1.5)および排ガス組成を計測した。データサンプリング箇所および計測内容は表3.2.7に纏めた。
表3.2.6 試験条件
試験No. |
1-1 |
1-2 |
2-1 |
2-2 |
排ガス条件 |
ガス量[m3N/h] |
200 |
200 |
200 |
266 |
ガス温度[℃] |
〜244 |
〜244 |
〜246 |
〜303 |
冷却水条件 |
冷却水 |
純水 |
純水 |
海水 |
海水 |
予冷部L/G[L/m3N] |
2.1 |
2.0 |
1.9 |
1.6 |
本冷部L/G[L/m3N] |
4.6 |
21.6 |
19.4 |
14.6 |
|
表3.2.7 計測項目および方法
計測項目 |
計測場所 |
計測器および計測方法 |
排ガス量 |
装置入口・出口 |
ピトー管 |
ガス温度 |
TIR-1〜5 |
熱伝対および測温抵抗体 |
水分 |
装置入口・出口 |
吸湿管法<JISZ8808> |
SOX |
装置入口・出口 |
沈殿滴定法<JISK0103> |
ばいじん及びNaCl |
装置入口・出口 |
円形ろ紙法<JISZ8808> |
O2 |
装置入口・出口 |
オルザット法<JISK0301> |
CO2 |
装置入口・出口 |
オルザット法<JISK0301> |
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3.2.3 結果
純水を用い、本冷水量を変化させた際の温度分布を図3.2.3に示す(試験1-1、1-2)。
図3.2.3 純水を用いた際のガス温度分布
現状のACF排煙処理装置運用条件(ライニング材)を想定すると装置入口温度を70℃以下に設定する必要がある。本結果ではどちらの条件においても予冷部出口で55℃を示した。その後の本冷却ではL/G=4.6、21.6の条件で更に冷却されているのが確認できるが、冷却水量による差は確認できなかった。試験1-1条件におけるガス計測結果は表3.2.8に纏めた。ここで、飽和度は下記の通り定義した。
飽和度[%]=装置出口水分濃度(計測値)/出口飽和水蒸気濃度(理論値)×100
この条件では100%以上の飽和度を示していることから、計測点では排ガス中に凝縮水分が同伴していると想定される。
表3.2.8 |
ガス計測結果<試験1-1(純水:予冷部L/G=2.1、本冷部L/G=4.6L/Nm3)> |
表3.2.9 |
ガス計測結果<試験2-1(海水:予冷部L/G=1.9、本冷部L/G=19.4L/Nm3)> |
表3.2.10 |
ガス計測結果<試験2-2(海水:予冷部L/G=1.6、本冷部L/G=14.6L/Nm3)> |
表3.2.11 |
各試験の入口ガス計測結果と増湿冷却後の予測ガス温度と実測ガス温度 |
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