(2)試験条件
・ACF触媒
ACF触媒としては、活性炭素繊維を陸用と同様にハニカム状に成型したものを使用した。陸用ACF排煙処理装置で実際に使用するサイズのACFハニカムシートから、ベンチ試験の反応塔サイズに合せて切断したシートを充填した。ベンチに充填するACF触媒の外形写真を図3.1.4に示す。図3.1.5にACF触媒を充填した脱硫反応塔の模式図を示す。
図3.1.4 ベンチ試験装置に充填するACF触媒の外観写真
図3.1.5 ベンチ脱硫試験装置反応塔の模式図
反応塔は下部からガスを導入するため、下から順に第1段、第2段、第3段とし、最上段を第4段とした。
・添加水条件
添加水として海水及び硫酸でpH5に調整した海水(以下、“海水+硫酸”と表記)を用いた場合の影響を調べるため、ベース条件としてろ過した水道水を添加水とした場合との比較を実施した。
海水は溶解している塩の影響で弱アルカリ性のため、硫酸でpHを酸性側に調整した海水についても試験を実施した。これはSO2除去で生成した硫酸を海水と混合したものを添加す意図する場合を想定しており、海水単独で使用する場合よりもSOX除去性能が高ければ硫酸と混合してpH5程度まで中和した海水を使用する可能性もある。
・ガス条件など
各成分ガスの濃度、添加水量などの試験条件はディーゼル排ガスを処理する場合に最も想定し得る値に設定した。
ガス流速は、陸用でも実績があり、舶用システムでも想定し得る一般的なガス流速に設定した。温度はディーゼル排ガスを増湿冷却した場合の典型的な値である60℃に設定した。各成分ガスはディーゼル排ガス中成分に準じた組成とした。添加水量は陸用での実績値の範囲で設定した。
(3)方法
添加水として清水(水道水)、海水、pH5に調整した海水を用いた試験を行い、SO2除去性能の比較を行った。海水がACF触媒に付着することの影響が未知であったため、初めに水道水で試験を実施し、比較の対象となるベースデータを海水の影響のない状態で取得した。以下順に、海水およびpH調整した海水での試験を実施した。
さらに、想定される舶用ディーゼルの排ガス中のSO2濃度からSO2除去率90%以上を達成可能なことを示すため、入口濃度を3分の1にした試験も実施した。
3.1.3 結果
(1)SO2濃度および触媒差圧
図3.1.6〜図3.1.7に、水道水、海水、海水+硫酸、及び水道水で入口SO2濃度3分の1で試験した場合の、触媒高さごとのSO2濃度を入口濃度に対する相対値で表した。データのばらつきの範囲をエラーバーで表した。
同じく、図3.1.8〜図3.1.9に、水道水、海水、海水+硫酸、及び水道水で入口SO2濃度3分の1で試験した場合の、触媒各段毎の差圧を表した。10%程度の多少のばらつきはあるが、圧力損失はぼぼ安定している。差圧で見る限りは触媒充填不良などの試験上の問題はないと考えられる。
(2)海水を添加水として用いた場合の影響
次に、水道水の場合の、触媒高さごとのSO2除去率を図3.1.10にプロットした。以下同様に、海水の場合、海水+硫酸の場合、及び水道水で入口SO2濃度3分の1で試験した場合を図3.1.11〜図3.1.13に、それぞれプロットした。それぞれのグラフでデータのばらつきの範囲をエラーバーで表した。
図3.1.14に水道水、海水、海水+硫酸を用いたときの各触媒高さのSO2除去率を表した。図より、各条件で多少の違いはあるがオーダーとしてはほぼ同じ程度にSO2除去反応が進むことが分かる。各段ごとに細かく見ても多少のデータのばらつきはあるが、海水を使用した場合を水道水の場合と比較して極端な性能低下は生じないと結論づけることができる。したがって、添加水として海水を利用しても、または、海水と清水を混合した水を用いても、清水の場合と大きな性能差は生じないと考えられる。
今回の実験は初期性能への影響であり、長期的な影響に関しては今後詰めていく必要がある
図3.1.15は触媒層トータルでの添加水を変化させた時の全反応塔でのSO2濃度の減少(ΔSO2)を水道水、海水、海水+硫酸、及び水道水で入口SO2濃度3分の1で試験した場合について比較したものである。ここで水道水の試験結果の値を1とし、各々の相対値で表している。
ΔSO2を見ても、海水を利用した場合に水道水の場合と比較して極端な性能低下は無いことが分かる。また、海水+硫酸を使用した場合も、水道水、海水の場合と性能は大きく変わらない。
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