5-6-2 事後アンケート結果に関して
アンケートの質問項目順に従ってそれぞれのご回答内容を以下示し、必要な場合はそれに対する捕捉説明を加える事とする。
5-6-2-1 事後アンケートの回答内容
(1)航行環境に関する状況把握の容易性(自船周囲の航行環境把握までの所要時間や危険と思われる対象船特定までの所要時間などに関して)
<景観画像とレーダ画像の合成による相手船の特定のしやすさ>
景観画像とレーダ画像の合成による相手船の特定しやすさに関しては、特定しやすいは少数回答となった。この主要因はカメラ映像に関するサービスエリアが事前アンケートにおける輻輳海域での必要目視距離に関する操船経験者の回答の平均距離3.3マイルまで到達していなかった事が大きな要因かと思われる。本システムはプロトタイプのために通常性能のカメラを使用したが、後述のように製品化にあたっては高額なカメラの導入はユーザの費用負担を考慮すると難しいと考えられるので、画像範囲が限定されるとしてもズーム機能を持ったカメラの応用などが考えられるところである。
<レーダ画像上のブイ等のシンボル合成による固定物標の特定のしやすさ>
レーダ画像上のブイ、灯台等の固定物標のシンボル合成表示に関しては7割以上の操船経験者が物標を特定しやすいと回答している。本表示法チャートレーダやECDISのレーダオーバーレイなどでも採用されている技術ではあるが、景観画像に対応したレーダ画像に対しては始めての試みであり、直感的に見やすいことに加えてARPA手動捕捉などにおいて固定物標をさけて手動捕捉がかけられる等、操船者の負担を軽減する事が予測される点で高い評価を得たものと思われる。
<特に近距離の相手船の認識性は従来のレーダ映像に比較してどうか>
近距離の相手船の認識性は7割以上の回答者から従来のレーダ映像に比較して認識しやすいとの回答が得られた。アンケートでは近距離に関する厳密な数値的定義をしなかったため回答者ごとに近距離解釈の定義が異なっているものと思われるが、この範囲では(1)景観画像における船影とレーダ画像の物標の対応から相手船の認識がしやすい、(2)PPIレーダでは近距離になるに従って、物標の表示サイズが小さくなる事が一般的傾向であるが、本システムの場合には近距離映像が方位方向に拡大されて表示されるため認識しやすい、以上の様に感じた回答者が多かったものと思われる。(ただし、近距離における物標の方位方向の拡大された表示は不自然との意見も操船経験者に対する聞取り調査の回答にもあり、この点は今後の要検討事項のひとつである。)
<特に輻輳海域での複数相手船が存在した場合の相手船認識の容易性(対象となる相手船の認識をするまでの時間や認識度など)>
・相手船の認識度は従来システムに比較して向上したか? また向上したとすると認識に要する所要時間はどの程度短縮したと評価するか?
次ページに示した回答結果のグラフから分かるように、回答者全員が所要時間の短縮効果ありと回答し、10%〜20%の短縮と回答が約4割、20%〜50%が約3割、さらに50%以上という高い評価も約3割あった。これは一つの画面にレーダ画像と景観画像を座標系を合わせて同時表示する事で、景観画面で捉えられている相手船に対してレーダ画面のターゲット表示との対応が、従来の目視とレーダ、ARPA、AISなどの使用による相手船の認識に比較してかなり容易になるはずであるという期待度も込めた評価であると考えられる。景観画像のサービスエリアを新たな手段で向上させる事ができれば、この評価はさらに高くなるものと考えられる。
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