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吟剣詩舞の若人に聞く[第77回]
伊達佳内子さん
 
伊達佳内子さん(九歳)東京都文京区在住
(平成十七年度全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部優勝)
父:伊達成春さん
母:伊達級世さん
師:奥村龍愛さん(岳精流日本吟院六郷岳精会)
宗嗣:横山精真さん(岳精流日本吟院)
 
悔しくて泣いた日も、いまは遠い過去
 昨年のコンクールでの失敗を糧に、今年は見事に優勝をつかんだ伊達佳内子さん。やると決めたら積極的に行動する彼女の吟詠に対する気持ちなどを、ご家族や師、ご宗嗣を交えながらお聞きしました。
(平成十七年九月十九日、全国吟詠コンクール決勝大会入賞者発表後、笹川記念会館にて収録)
 
――優勝した、いまの感想からお聞きします。
佳内子「(力強く)すっごく、嬉しいです」(笑)
――自信はありましたか?
佳内子「(力強く)ありませんでした。出番を待っている間に先に出場している人の吟を聞くと、『あー、だめだ』(笑)と思ったほどです」
――でも優勝だからすごいですね?
佳内子「ありがとうございます。昨年は吟じている途中で唾が詰まって失格になりました。それが悔しくて吟詠を辞めたくなりましたが、お母さんにいろいろ教えてもらい優勝できて嬉しいです」
――失敗は悔しかった?
佳内子「はい」
横山「ずいぶん悔し泣きしたという話を聞きましたね」
成春「舞台の袖から三十分も出てきませんでした」(笑)
級世「生まれて初めて失敗したという感じでしたね」
成春「本人も辞めたいといいましたが、今年の吟詠コンクール出場も、辛いから嫌だという気持ちと、失敗を乗り越えなければという気持ちの間で悩んだようです」
横山「しかし、泣くくらいの子だから優勝できたと思いますよ」(笑)
――負けず嫌いなの?
佳内子「意外と負けず嫌いです」(爆笑)
 
優勝インタビューに元気よく笑顔で答える(左より)伊達級世さん(母)、横山精真宗嗣、伊達佳内子さん、師の奥村龍愛さん、伊達成春さん(父)
 
――いま気がついたのだけど、佳内子ちゃんは学校が学習院初等科で『伊達』さんというと、もしかして仙台の伊達政宗公のご子孫?
成春「はい、分家ですが・・・」
――負けず嫌いなのも、政宗公の血を引いているからかな?
佳内子「そうかもしれません」(笑)
――今回、コンクールで気をつけた点は何ですか?
奥村「この子の吟じ方は、しっかりとした骨太の吟でして、荒削りではありますが吟が大きく、その持ち味を大切にする方向で指導しました」
――ところで、何歳から吟詠を習っているの?
佳内子「七歳くらいのときからです」
奥村「お母様が吟詠を習っていて、それについて来ていたのが佳内子ちゃんでした。お母様を待ちながら絵を描いたりしていて、まさか吟詠をするとは思ってもいませんでした。でも、ある時、岳精流の大会が開催されることになり、それに出ましょうということになって、練習をして出たのが吟詠をはじめるきっかけで、この子の初舞台でした。その舞台姿が堂々としていましたね」
 
インタビューを終えて。左より横山精真宗嗣、母の伊達級世さん、伊達佳内子さん、父の伊達成春さん、師の奥村龍愛さん
 
――小さな子を教えるのは大変だと思いますが?
奥村「一人っ子で、少し甘えん坊なので(笑)、厳しく教えて嫌になりやすい部分もあり、お母様も上手に気持ちを吟詠に向けるように家でも努力されているようです。それに関西にいるお祖母さまがとても熱心で、今度の出場では、着物をお祖母さまが見立てて、プレゼントされたと聞いています」
――練習は大変ですか、怒られたりするの?
佳内子「(強い口調で)はい、お母さんに」(笑)
――お母様としては何を注意しているのですか?
級世「言葉を大切にということです。きつく怒りすぎるのでしょうか」(笑)
――ご両親からみて、どんな性格のお子さんですか?
級世「自分でやると決めたら積極的で、集中して行動しますが、決めるまでに時間がかかります」(笑)
横山「昨年、『李白舟に乗って』(李白作「汪倫に贈る」)の起承転結を、ひとつずつ本人が『絵』にし、場面を想定しながら吟じたことがあり、わが流派の会報にも紹介されました。詩を理解していなければ絵にできませんし、そうした行動力はあると思います」
――詩の内容がわかっていたの?
佳内子「お母さんに、どんなところで、どんなふうに詩を作ったかを教えてもらい、お母さんが絶壁といったら絶壁を、河が流れているといったら山の間に河と舟を思い浮かべながら、自分で絵にしました」
――そういう風景を見た事があるの?
佳内子「お母さんがコンピュータで風景を見せてくれました」
――今後の佳内子ちゃんの指導方針はありますか?
奥村「これだけの才能があるので、それを上手に伸ばしていきたいですね」
横山「子供らしく、のびのびと、素直に育ってほしいと願っています」
――これからも吟は続けていきますか?
佳内子「う・・・」(笑)
奥村「とても忙しいのですよ。話したら・・・」
佳内子「月曜日がバレーで、水曜日が塾で、木曜日バレー、金曜日が塾で、土曜日が英語と水泳です」(笑)
奥村「テニスとか乗馬は?」
佳内子「前に習っていましたが、いま乗馬は習っていません」
横山「今のスケジュールに吟詠は出てきた?」(爆笑)
――最後になりますが、佳内子ちゃんヘアドバイスや何か話すことがありましたらお願いします。
成春「よくがんばったと思います。がんばって成し遂げたことを心の糧にしてほしいと思います」
級世「がんばってくれたことに感謝します。ありがとうといいたいです」
横山「優勝という貴重な体験をされたので、これを吟詠に活かし、練習を重ねてください。また、このような結果をいただいたことは、お父様、お母様のご努力があればこそと思いますので、ご両親には心から感謝の気持ちをもってください」
奥村「とてもすばらしい感性があるので、それを大切にしながら成長してもらいたいです。感性というものは、教えて覚えるものではありませんから、もって生まれたものを伸ばしてほしいです」
――本日は優勝おめでとうございました。これからの飛躍にも期待しております。


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