「新居書留帳(あらいかきとめちょう)」発刊のことばより
海辺と街道のまち新居。そこに住む人々の様子は、万葉(まんよう)の昔から鎌倉・室町・江戸と、各時代を通じて多くの手により書き記されている。浜名川の一掬(いっきく)の砂に似て、寡黙(かもく)に、しかしたゆまず生き続けた新居郷(ごう)、その里人(さとびと)の姿を、この後にまで語り継ぎ、書き残したい。
「新居書留帳」は、江戸時代新居宿の記録「諸事控(しょじひかえ)」を受け継ぎ、明治以降現在まで続けられた聞き書きや語り伝えを、住民の手により掘り起こす目的で発足した。われわれはこれら先人の仕事に、さらに変転きわまりない現代の諸相を継ぎ足していく。
自らの姿を知ることを通して未来を開く足掛かりとするこのささやかな事業に、一人でも多くの人が参加し、力を揮われん(ふるわれん)ことを願う。
昭和六十一年(一九八六)八月
新居書留帳(あらいかきとめちょう) 第四集
遠州新居 無人島漂流者の話
織田作之助「漂流」(復刻)と解説(山ロ幸洋)
地域の暮らしを記録する会
鳥島の姿(地形・地名は現在のもの)
南方から見た鳥島
鳥島東南端燕崎のアホウドリのコロニー
写真 平成5年・15年長谷川博氏撮影
■遠州新居船「鹿丸」の航跡
享保3年(一七一八)11月・今切湊出港→江戸→伊豆岩地→三河鷲塚→駿河・清水→伊豆妻良→下田→江戸→荒浜→銚子→宮古→気仙沼→石巻小竹浦
享保4年11月・九十九里浜沖で難船
享保5年1月・鳥島漂着
■3人の帰還
元文4年(一七三九)
4月27日・鳥島離脱
6月2日・将軍吉宗が謁見
6月24日・新居へ帰還
|