日本財団 図書館


2. 絵図にみる坊津と薩摩の諸港
 江戸時代の元禄期に製作された薩摩國絵図には、薩摩の諸港の記述がみられます。坊津には、「何風ニても船繋り自由」(どんな方角から風が吹いても、船の繋留が自在である)と記されています。薩摩半島に所在する港のうち、同様の記述がある港は、坊津港のほかには山川港のみです。近隣の諸港に比べ、坊津が船の碇泊に大変すぐれた港であったことがわかります。
 
元禄薩摩國絵図
(パネル展示:原資料 東京大学史料編纂所蔵)
 
上写真 坊津周辺部分拡大
 
倉津(阿久根) 倉津湊口廣四拾五間、入貳町三拾間、干潮時深貳尋貳尺
滿潮之時深四尋、北風ニ船繋リ不自由、大船三拾艘程繋ル
京泊
(川内川河口)
此京泊川口廣貳町、干汐之時ハ深サ四尺、滿汐之時ハ深サ貳尋貳尺
干汐之時船々出入不自由、西風・南風之時ハ船繋不自由、水上三里貳拾町潮入
大船三百艘程繋ル、洪水之時ハ船かゝり不成
五反田川河口 大船出入なし
湊川河口 大船出入なし 湊川、汐入、廣三町四拾間、滿汐之時深五尺 干潮之時ハ深貳尺
万之瀬川河口 大船出入なし
片浦 此片浦湊口廣四町四拾間、入拾三町、深拾九尋
北風・東風船繋り惡シ、大船三拾艘程繋ル
秋目 大船出入なし
久志 此久志津口廣サ四町七間、入七町、深サ貳拾壱尋
船繋場深サ三尋、西風之時船かゝり不成 大船貳拾艘程繋ル
此泊湊口廣四町、入九町、深三拾壱尋、船繋場深五尋
西風之時船かゝり不成、大船拾艘程繋ル
坊津 此坊津湊口廣サ三町四拾間、入拾貳町、深サ三拾六尋
船繋リ場深サ七尋、何風ニても船繋り自由 大船三拾艘程繋
山川 一此山川湊入七町四拾八間、廣四町四拾貳間、深三拾尋
何風ニても船繋自由、大船百四五拾艘程繋ル 一此山川湊より琉球國未ノ方ニ當ル
甲突川河口 江月川口廣サ壱町、干汐之時深サ壱尺五寸
高汐之時ハ船出入有之、常之汐ニハ小船出入 水上七町汐入
稲荷川河口
(鹿児島)
川口廣サ五間、深サ壱尺、滿汐之時ハ廣サ四拾間、深サ七尺六寸、船之出入不自由
(松尾千歳1997『元禄十五年「薩摩國・大隅國・日向國」国絵図解説書』鹿児島県教育委員会より作成)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION