(2)堤体が複断面の場合1−Savilleの仮想勾配法
海底形状や堤体の形状・配置が図4-2-2のような場合に適用し、Savilleの仮想勾配法と呼ばれる。この方法は海底勾配が1/30よりも急な場合に適用する。
(1)沖波特性から砕波点Bを求める。
(2)波のうちあげ高Rを仮定して、その点(はい上がり点)Aと砕波点Bを結んで仮想勾配cotαを設定する。
(3)仮想勾配に対する波のうちあげ高(→図3.1.5)を算定し、仮定しておいたうちあげ高と比較し、両者が一致しない時は、Aの位置すなわち仮想勾配を修正して、両者が十分に近づくまで繰り返し、ある程度収束した時点でのRをうちあげ高とする。
図4-2-2 複断面と仮想勾配
(3)堤体が複断面の場合2−改良仮想勾配法
Savilleの仮想勾配法を中村ら(1972)が改良して中間の地形形状を考慮できるようにしたのが次に示す改良仮想勾配法である。本業務では複断面に対しては、この改良仮想勾配法でうちあげ高を算定した。
(1)沖波特性から砕波点Bを求める。
(2)波のうちあげ高Rを仮定して、その点(はい上がり点)Aと砕波点Bの高さの間の断面積Sを計算する。(図4-2-3)
(3)斜め格子部分の面積Sと等しくR+hbを高さとする仮想三角形を考え、このときの三角形の斜辺の勾配をもって仮想勾配とする。したがって仮想勾配cotαは次の式となる。
(4)仮想勾配に対する波のうちあげ高(→図4-2-6)を算定し、仮定しておいたうちあげ高と比較し、両者が一致しない時はAの位置、すなわち仮想勾配を修正して、両者が十分に近づくまで繰り返し、ある程度収束した時点でのRをうちあげ高とする。
図4-2-3 複断面に適用する改良仮想勾配法
(4)波の入射角によるうちあげ高の補正
うちあげ高は、グラフのように入射波の波峰線と堤体法線とのなす角βが大きくなるにつれ減少し、波形勾配が大きい波ほどその傾向は強い。この係数Kβをうちあげ高Rに乗じて入射角によるうちあげ高の変化を考慮する。(→図3.1.7)
(5)消波工の効果の考慮
堤体の前面を消波ブロックによって完全に被覆すると、波のうちあげ高を減少させることができる。グラフは一例で、消波ブロックの積み上げ方によって効果はかなり変わるので注意が必要である(→図3.1.8)。
(6)海底勾配
換算沖波波高H0の1.5〜2.5倍の水深の平均勾配を計算して適用する。
(7)砕波水深
砕波水深は、海底勾配と波形勾配を入力して図3.1.9を用いて計算する。
(8)算定図の取り扱い
うちあげ高算定の過程で適用する算定図は、過去の文献中に描かれた算定図の曲線をすべてデジタイザで読みとり、うちあげ高算定プログラムに数値表として組み込む。
算定図では離散的な波形勾配をパラメータとしてグラフが描かれているが、実際に算定する場合、波形勾配はその都度変化するため、いずれかの波形勾配の曲線に当てはめるようにすると、うちあげ高の時系列が不連続になる場合がある。それを緩和するために、表現されていない波形勾配のグラフを、既存のグラフから重みを掛けて内挿補間することで対応する。
うちあげ高算定に関わる算定図を再図化したものを図4-2-4〜図4-2-9に示す。
図4-2-4 垂直壁のhRの推算図(高田1977)
図4-2-5 仮想勾配法によるうちあげ高算定図(Saville1958)
図4-2-6 改良仮想勾配法によるうちあげ高算定図(中村ら1972)
図4-2-7 入射方向によるうちあげ高の補正(細井・首藤1962)
図4-2-8 消波工によるうちあげ高の減少補正図
図4-2-9 砕波水深算定図(合田1975)
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