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図1.2-37 24時間におけるSJ≦-2の危険船舶の密度分布
 
図1.2-38 06:00〜09:00におけるSJ≦-2の危険船舶分布図
 
図1.2-39 16:00〜19:00におけるSJ≦-2の危険船舶分布図
 
 L換算密度を示した図1.2-31は、浦賀水道航路、中ノ瀬航路における船舶の混雑を表しているが、SJ値による解析を行った図1.2-37では、船舶の横切り状態が発生しやすいアクアラインの東水路と西水路付近で危険な海域となっていることがわかる。
 また、時間帯別にみると、朝方(図1.2-35、図1.2-38)では、中ノ瀬航路の出口付近において横浜・鶴見方面と木更津方面を結ぶ船舶との横切り関係が発生するため危険な見合い関係となりやすい。
 夕方の時刻では、出航する船舶が中ノ瀬の西側を航行するため、横浜、根岸方面から出航してくる船舶と危険な見合い関係が発生するため、この海域が危険と判断されている。
 このように、L換算密度分布は各海域における船舶の混み具合を船の長さを考慮して表したものであり、当然のことながら船舶が集中する航路内で密度が高くなっている。
 一方、主観的な衝突危険度を表すSJ値による衝突危険判定では、船舶交通が整流されている航路内は比較的安全であるが、横切りの見合い関係が多く発生する海域は危険と判定されていることがわかる。
 
1.3 船舶航行監視・解析システムに関するまとめ
 以上、東京湾における船舶航行監視・解析システムについて、今年度の研究成果を述べた。今年度の大きな目標であった「2つのレーダ局からのレーダ画像を統合し、それにAIS情報を重畳表示する船舶航行監視システムの構築、およびそのWebサイト上での公開」については、計画通り実現することが出来た。東京湾内の船舶航行状態をほぼリアルタイムでレーダとAISにより監視できるこのWebサイトは画期的なものであり、今後、いろいろな目的で利用されると思われる。
 また、もう1つの大きな目標であった「レーダ画面上における船舶映像の自動トラッキングシステムの開発」についても、ほぼアルゴリズムを確立することができ、24時間の観測期間中55%の船舶について完全に自動トラッキングすることに成功した。(1277隻の処理船舶中、707隻について完全に自動トラッキングすることが出来た。)従来のマウスによる手動トラッキングに比べ、航跡取得の労力・処理時間を大幅に減少させることが出来た。
 来年度は、船舶航行監視システムの機能向上(例えば過去1時間のレーダ画像のアニメーション表示やより詳細なAIS情報の表示等)を図る予定である。また船舶映像の自動トラッキングのソフトウェアを改良して、より迅速・正確に船舶航跡の取得が出来るようにし、さらに長期間の船舶航行観測を行い、SJ値やバンパーモヂルなどの衝突の危険を表現する指標を用いて、東京湾における衝突危険海域の詳細な調査を行う予定である。
 
 最後に、2005年度において本研究の成果を発表した論文を示す。
 
(1)Shun LIU, Hideki HAGIWARA, Ruri SHOJI, Hitoi TAMARU and Tadashi OKANO: Observation and Analysis with Integrated Radar and AIS Network System in Tokyo Bay, Proceedings of International Radar Symposium 2005, pp.279-283, September 2005, Berlin Germany
(2)岡野匡、萩原秀樹、田丸人意、庄司るり:船舶交通解析におけるトラッキングの自動化に関する研究、日本航海学会論文集、第113号、PP.77-84(2005)
(3)Shun LIU, Hideki HAGIWARA, Ruri SHOJI and Hitoi TAMARU : New Method for Analyzing Traffic Flow Using Integrated Radar Network System and AIS in Tokyo Bay, The Journal of Japan Institute of Navigation, Vol.108, pp.69-76 (2005)


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