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(4)沿岸海鳥調査結果報告 福田佳弘
調査方法
 海鳥類の海上分布調査は、調査船「ロサルゴサII」約50トンに乗船し、約7ノット以下で、船の喫水に考慮しながら出来る限り沿岸を航行し、船から沿岸側の海上に生息する海鳥類をカウントした。海鳥類の繁殖分布調査は、海鳥類の海上分布調査と同時に行い、ウ類・カモメ類については、抱卵中または育雛中の巣をカウントし、ウミスズメ類については、断崖の穴や岩の隙間そして地中などで繁殖するため巣の確認が困難なことから、今回は繁殖の確認にとどまった。また、ハルカリモシリ島では上陸して調査を行ったため陸上から海鳥類の調査とともに陸鳥の調査も行った。調査期間は、2005年6月8日〜6月12日の5日間。
 
調査結果
 
図−1)色丹島における沿岸海鳥の個体数と繁殖数
種類 学名 個体数 繁殖巣数
ウミウ Phalacrocorax capillatus 180 90
チシマウガラス Phalacrocorax urile 60 90
ヒメウ Phalacrocorax pelagicus 60 0
オオセグロカモメ Larus schistisagus 2600 1300
ウミネコ Larus crassirostris 19 0
ケイマフリ Cepphus carbo 840
エトピリカ Fratercula cirrhata 110
ウトウ Cerorhinca monocerata 170
ハシブトウミガラス Uria lomvia 1 0
ウミスズメ Synthliboramphus antiquus 7
シノリガモ Histrionicus histrionicus 110
オジロワシ Haliaeetus albicilla 7 1
 
 色丹島では、ケイマフリの個体数が多く北方四島と北海道を含めて最も個体密度が高いと考えられる。国後島・択捉島では繁殖の確認がなかったチシマウガラスの繁殖が確認された。また、陸鳥では海岸の断崖で繁殖するワタリガラスが確認された。
 
図−2)ハルカリモシリ島における沿岸海鳥の個体数と繁殖数
種類 学名 個体数 繁殖巣数
ウミウ Phalacrocorax capillatus 66 16
ケイマフリ Cepphus carbo 129
ウトウ Cerorhinca monocerata
オオセグロカモメ Larus schistisagus 81 20
ウミネコ Larus crassirostris 7 0
オジロワシ Haliaeetus albicilla 8 1
コシジロウミツバメ Oceanodroma leucorhoa
 
 ハルカリモシリ島で観察された陸鳥、ハヤブサ・ゴイサギ・クイナ・キョウジョジギ・ハクセキレイ・ノゴマ・シマセンニュウ・コヨシキリ・オオジュリン・カワラヒワ・ハシボソガラス。
 
(5)海底環境調査結果報告 向井宏
 
 北方四島の豊かな海産哺乳類や海鳥など高次消費者を支える生態系の基盤を明らかにするために、北方四島の各地で潜水観察やドレッヂ調査を行ってきた。今回は、歯舞諸島および色丹島において、その海底環境を把握するために、合計3ヶ所の潜水調査を行った。調査場所は、図1に示したように、色丹島の大島海域、大崎海域の2ヶ所、歯舞諸島のハルカリモシリ島南岸の海域1ヶ所の合計3ヶ所である。
 潜水調査は、2005.6.8日に色丹島大島沿岸、2005.6.11日に色丹島大崎北側の沿岸、6月12日に色丹島大崎周辺、2005.6.9日にハルカリモシリ島南海岸で行われた。
 
 わずか3ヶ所の潜水調査ではあるが、以下のような点を明らかにできた。
1. 色丹島・歯舞諸島の浅海海底環境は岩礁地帯がその大部分を占める。干潟や海草藻場はほとんどゼロである。砂浜はわずかに見られるが、構成粒子はほとんど礫で占められている。
2. 岩礁帯海底のほとんどすべてで、大型のコンブ属ナガコンブ、オニコンブ、スジメ、アイヌワカメ属のアイヌワカメが優占した海藻群落(藻場)が形成されており、道東と一部異なる種組成を示しただけでなく、その現存量も非常に大きいと思われた。しかし、海藻の種多様性は道東とそれほど変わらないと思う。
3. スガモもパッチ状に分布しているのが見られたが、択捉島・国後島におけるような大規模なスガモ帯を形成していない。
4. これらの海藻藻場がアザラシ(主としてゼニガタアザラシ)の採餌場所や隠れ場所として利用されている。また、生まれた直後の子アザラシの子育ての場所としても利用されているらしいことが確認された。
5. 大島、大崎の色丹島2ヶ所では、ハナサキガニが豊富に生息していた。また、ハルカリモシリ島においても、ハナサキガニの生息が確認されたし、そのほかにもクリガニが多数生息しており、これらがアザラシに利用されていることも考えられる。
6. 海産無脊椎動物では、オオバンヒザラガイが多数生息していることが確認されるなど、親潮系独特の生物相が見られた。これは予想されたことではあるが、四島の中では暖流の影響が非常に少ない(ほとんどない)海域であることが確認された。また、藻場の中にはアミ類が大量に生息しており、基礎生産と魚類生産の間をつなぐ重要な鍵種(key species)であることが考えられる。食物連鎖の詳細な調査が今後必要になるだろう。
7. 時期として植物プランクトンが大量に発生している時であり、海藻藻場周辺では大量のヨコエビ類の遊泳が見られたし、稚魚類も多く発生していた。
8. 河川は見るべきものはほとんど無く、河川が海底環境に与える影響はほとんどないと思われた。
 
 以下に潜水時のメモを記す。
色丹島南の大島沿岸:ゼニガタアザラシが遊泳している沖側を水深9mくらいまで潜水。水温3℃くらい。アイヌワカメ、スジメが目立つ。スジメは巨大。ハナサキガニが多い。ハナサキガニは大きい個体が目立つ。イソギンチャク類も多く目立つが、種類がわからない。2種か3種くらい。笠貝類も2種ほど。一つはシロガイ。ムラサキウミトサカがわずかに見られる。エゾバフンウニの小型のものが岩の隙間に多い。海藻および一部の動物を採集。スガモがみられない。
 
ハルカリモシリ島南岸:ビーチからエントリーする。ゼニガタアザラシが遊泳している中を潜水したが、目の前をアザラシが泳いでいくのが見える。何度も遭遇。しかし透明度は非常に悪い。アザラシの写真はとれなかった。遠浅で沖合200mくらいまでいっても水深3mまで。平たい岩盤が続いている。ナガコンブ、アイヌワカメ、オニコンブ、スジメなど道東でおなじみの大型海藻が全面を覆っている。コンブ類に絡まれて潜水が困難。やや沖側に行くとコンブ類がなくなりギンナンソウの群落があった。浅いところは波に巻かれて透明度が悪いが、水中に無数のゴカイ類とヨコエビ類が遊泳している。カジカ類の幼魚と思われる群れがアカバギンナンソウの群落の中から出てきた。クリガニが多い。ハナサキガニも見られたが多くはない。浅すぎるのかもしれない。笠貝類も2種ほど。ヒザラガイ類が多いが、種数もはっきりしない。おそらく数種はいるだろう。ここでもスガモがない。海藻および動物の一部を採集。潜水班がスガモを採集してきてくれた。少しは生えているようだ。
 
色丹島大崎北側海岸:潜水班は大崎北側の海底を潜る。アザラシの水中撮影に成功。ビデオを見る限りではアイヌワカメの大群落が広がっている。そのほかには、ナガコンブ、スジメなどおなじみの海藻。壁にカンザシゴカイ類が多数花冠を開いている。種は不明。イソギンチャク類、ムラサキウミトサカなども見られた。そのほかに、エゾヒトデ、イトマキヒトデ、アカヒトデ?も。イシコとキンコも多い。大黒島の海底によく似ている。
 潜水班が大崎付近の海底でサンプルを採集してきてくれた。アミ、オキアミをそれぞれ1個体。その他、ギンポ類の一種など。
 
 採集された海藻・海草は以下の通りである。
 
緑藻類
しおぐさ科 タマジュズモ (色丹島大島)
褐藻類
うるしぐさ科 ウルシグサ (ハルカリモシリ島)
ケウルシグサ (ハルカリモシリ島)
ちがいそ科 アイヌワカメ (色丹島大島・大崎・ハルカリモシリ島)
こんぶ科 スジメ (色丹島大崎・ハルカリモシリ島)
ナガコンブ (色丹島大島・大崎・ハルカリモシリ島)
オニコンブ (ハルカリモシリ島)
うがのもく科 ネブトモク (ハルカリモシリ島)
紅藻類
うしけのり科 フイリタサ (ハルカリモシリ島)
りゅうもんそう科 オキツバラ (ハルカリモシリ島)
オオバオキツバラ (ハルカリモシリ島)
さんごも科 カニノテの一種 Amphiroa sp. (色丹島大島)
すぎのり科 アカバギンナンソウ (色丹島大島・ハルカリモシリ島)
だるす科 ダルス (ハルカリモシリ島)
ベニフクロノリ (ハルカリモシリ島)
いぎす科 カタハベニヒバ (ハルカリモシリ島)
ベニヒバ? (ハルカリモシリ島)
ふじまつも科 ハケサキノコギリヒバ (色丹島大島・ハルカリモシリ島)
海草類
あまも科 スガモ (色丹島大島・ハルカリモシリ島)


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