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5. 附属書 2
附属書2−WCO「枠組み」
税関と民間とのパートナーシップ
柱2にかかる技術的事項
 世界税関機構(WCO)メンバーと民間貿易セクターは国境を越えるサプライチェーンの安全を確保しながら、同時に物品の流れを円滑化することの重要性を認識する。世界税関機構(WCO)メンバーと民間貿易セクターはまた、その均衡の一方を改善する取組みにおいて、もう一方にもベネフィットを導き出すことができることを認識する。このことから、“サプライチェーンの安全確保を強化し、貿易を円滑化させる分野別協力的取極めのためのWCO枠組み”に注目したい。これは、「国際貿易の安全確保及び円滑化のためのWCO「基準の枠組み」」が実施の初期段階にある間、そのようなシステムの有用な青写真として機能しうるものである。税関と民間とのパートナーシップを成功させるために不可欠なのは、この分野における互いの役割や責任に対する相互の敬意を伴ったいくつかの重要な要素である。決して網羅的というわけではないが、以下の全体に渡るテーマは、税関と民間との共同の努力、すなわちパートナーシップ、安全確保、認定、テクノロジー、コミュニケーション及び円滑化を導き出すべきである。
 
1. 基準1−パートナーシップ
 国際貿易サプライチェーンに係わっている認定された経済関連業者は、彼らの内部の方針及び手続きが、仕向地において税関管理から解放されるまでの間、積荷及びコンテナーを危険にさらすことに対する十分な予防措置を提供していることを確保するため、事前に決定した安全確保の基準及びベスト・プラクティスに照らして測られる、自己評価プロセスに従事する。
 
 税関と民間とのパートナーシップ・プログラムは、AEOのビジネスモデルに基づいた安全計画の柔軟性とカスタマイゼーションを許容すべき。
 
 税関当局とAEOは、AEOによって実施され維持される適切なパートナーシップの安全措置を合同で決定し文書化すべき。
 
 合同で考案された税関と民間とのパートナーシップ文書は、可能な限り、そしてAEOのビジネスモデルに沿って、製造業者、サプライヤー、納入業者を含むAEOの民間パートナーが、「国際貿易の安全確保及び円滑化のためのWCO「基準の枠組み」」に規定された安全確保の基準を遵守するという意思を表明することを確保するための文書化された検証可能な手順を持つべき。
 
 (リスクに基づいた)AEOの手順や安全措置に対する定期的な検査がなされるべきであり、それはそれぞれのビジネス安全関連取極めに規定されている安全手順と整合的であるべき。
 
2. 基準2−安全確保
 認定された経済関連業者は、事前に決定された安全確保のベスト・プラクティスを、既存の民間のプラクティスに組み入れる。
 
 認定された経済関連業者(AEO)は、建物の安全を確保する安全措置のみならず内外周辺を監視管理する安全措置及び施設、運送機関、積込みドック、貨物地域に対する認定されないアクセスを禁止するアクセス管理を実施する。
 
 安全なサプライチェーンにおける施設へのアクセス管理は、身分証明バッジ(従業員、訪問者、納入業者等)や鍵、アクセスカードを含むその他のアクセス機器、企業の所有地や資産に対する自由なアクセスを許可する他の機器の発行と十分な管理にかかる経営的統制を組込んでいるべき。
 
 安全なサプライチェーンにおける施設へのアクセス管理は、退任した従業員の企業身分証、施設及び情報システムへのアクセスの迅速かつ完全な除去を組込んでいるべき。
 
 貿易の機密にかかるデータは、定期的な再証明を必要とする個人的に割り当てられたパスワード、適切な情報システム安全研修、認定されないアクセスや情報の誤使用からの保護といった、必要な自動バックアップ能力の使用を通して保護されるべき。
 
 個人安全プログラムは、適切で国内法によって許容される範囲で、従業員や将来の従業員のスクリーニングを盛込むべき。これらのプログラムは、従業員の明白な社会的経済的状況における不自然な変化に留意しながら、安全確保の機密に関る地位にある従業員に対する定期的な背景調査を含むべき。
 
 AEO のビジネスモデルに沿って、安全なサプライチェーンにおける貨物の運送、取扱い、保管に関する民間パートナーの手順の規律を促進するために、安全確保プログラム及び措置が実施されるべき。
 
 電子的であれマニュアルであれ貨物処理のために使用される全ての情報が判読でき、時宜を得ており、正確であり、変更、紛失、誤情報の挿入から保護されていることを確保するための手続きがとられるべき。AEOと税関は、商用及び安全確保の機密に関る情報の機密性を確保する。提供される情報はそれが提供された目的のためだけに使用されるべき。
 
 貨物の荷送り又は荷受けをするAEOは、貨物を適切な船積み書類と一致させるべき。AEOは、民間パートナーから受取る貨物情報は正確に時宜を得たやり方で確実に報告されることを確保する。貨物を配送し又は受領する人物は貨物が受け取られ又は引き渡される前に身分の確認を受けなければならない。
 
 AEOは、安全確保及びアクセス管理の保護に対する潜在的な内部の脅威を認識し、従業員が貨物の規律を維持することを支援するために特定の研修を行うべき。AEOは、疑わしい事象を特定し報告するために企業が実施している手続きについて従業員に認知させるべき。
 
3. 基準3−認定
 税関当局は、貿易業界の代表と共に、認定された経済関連業者という地位を通じて民間へインセンティブを与える認証プロセス又はクオリティ認定手続きを作成する。
 
 税関当局は、安全なサプライチェーンにおける共同参加によって導かれる合同のベネフィットを決定するために民間パートナーと(様々な方法で)協力すべき。
 
 税関当局は、AEOとその認定された代表者の懸念を受容し、彼らと協議することで、問題が適切に受取られ、対処され、解決されることを確保する正式なコミュニケーションの方法を決定すべき。
 
 税関当局は、当局が、安全なサプライチェーンにおいて十分に従事した民間パートナーに(その管轄権の範囲で)提供することを期待する目に見えるベネフィットについて文書化すべき。それらのベネフィットは、測定され報告されるべきであり、国内プログラムにおける税関の義務と足並みを揃えるべきである。
 
 税関当局は、AEOステータスの相互認証に合意すべきである。
 
 税関当局は、適当な場合には、規定を追求又は変更し、安全面からロウ・リスクと判断される貨物の消費又は輸出の処理を迅速化するための手続きを実施すべき。
 
 税関当局は、改善された情報処理、リスク評価能力及びより良いハイ・リスク貨物の絞込みが資源利用の最適化を導く場合には、国際サプライチェーンにおける強化された物品の安全確保を通してベネフィットを導き出す。
 
 税関当局は、AEOと同様に、自己評価と検証の使用からベネフィトを導き出す。
 
4. 基準4−テクノロジー
 全ての者は、近代的科学技術の円滑な使用を促進することによって貨物とコンテナーの規律を維持する。
 
 AEOは、1972年の税関コンテナー条約や1975年TIR条約を含む、しかしそれに限られない、様々な国際的取極めにおいて規定されている現行の要件に最低限従うべき。
 
 税関当局は、適切な付加的インセンティブを通して、コンテナーや貨物の規律をモニターし確立し、コンテナーや貨物に対する認定されていない干渉を報告するために、メカニカルシールよりも更に先進の技術をAEOが自発的に使用することを慫慂、促進すべき。
 
 AEOは、貨物に対する改ざんを防ぐ目的の高安全シール及び/又はその他の機器を備えた貨物やコンテナーの取付け具や処理にかかる内部政策を規定する文書化された手続きを備えるべき。
 
 税関当局は、シール検証体制や不一致を取扱う業務手続きについて規定する文書化された手続きを備えるべき。
 
 税関当局及びAEOは、産業基準やコンテナー規律技術の発展、安全シール違反の特定された事例に関する相互業務から共通してベネフィットをうるために、共通の懸念について開かれた対話を維持すべき。
 
5. 基準5−コミュニケーション
 税関当局は、最低限の安全確保のための基準及びサプライチェーンの安全確保のためのベスト・プラクティスを促進するために、税関と民間とのパートナーシップ・プログラムを定期的に更新する。
 
 税関は、AEO又はその代表者と協議して、緊急時に適切な税関職員に連絡可能な電話番号をAEOやその代理人に供与することを含め、関税事犯が疑われる場合にとられるべき手続きを確立すべき。
 
 税関は、国内及び地方レベルにおいて、施設や貨物の安全のための税関規則、手続き、要件を含んだ相互関心事項について話し合うために、国際サプライチェーンに関わる全ての者との定期的な協議に従事すべき。
 
 AEOは、上述のアウトリーチ努力に対する税関の調整に応えるべきであり、このプログラムが両パートナーにベネフィットを与える最低限の安全基準に関連し、それに基づいていることを確保するための意味ある識見を提供する対話に貢献すべき。
 
6. 基準6−円滑化
 税関当局は、税関領域から生じ、通過する国際貿易サプライチェーンの安全確保及び円滑化を最大化するために、認定された経済関連業者と協力的に作業を行う。
 
 税関当局は、適切な行動9により貿易を円滑化しハイ・リスク貨物を特定するために、規定を追求又は変更し、税関関連の通関に必要な情報の提出を一元化し合理化する手続きを実施すべき。
 
 税関当局は、民間パートナーが、サプライチェーンの安全を確保する彼らの役割に大きな影響を与える提案された改訂や修正に対してコメントすることを許容するメカニズムを構築すべき。
 
9 世界税関機構(WCO)改正京都規約は、これを可能にする世界的なモデルを提供する。


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