IV 各主体の役割分担とそれを踏まえた連携のあり方
(1)国
・簡素で効率的な制度設計
・電子化の促進
・セキュリティ対策の基盤となる措置
・事業者に対する啓発普及と必要な支援
・セキュリティ強化等に関する技術開発の推進
・国際的な協調
(2)地方公共団体
・簡素で効率的な港湾運営
・電子化の促進
・港湾施設の保安措置
・事業者に対する啓発普及と必要な支援
(3)民間事業者
・国や地方公共団体の施策への協力
・貨物の内容についての十分なチェック、貨物保全措置
・電子化等を通じた貨物等に関する情報の円滑な交換
・電子申請システムの利用
(注)内容は、業種毎の特徴に応じたものとする。
※行政(国及び地方公共団体)によるサービスの提供や規制の導入の際には、密接に連絡・調整を行い、民間事業者の利便を最大限尊重することに努める。
V 具体的な施策等
1 物流セキュリティ等の強化
(1)物流セキュリティ関連情報の収集体制の整備
米国同時多発テロ以降、欧米等においてセキュリティ対策を強化するため、輸入貨物に関する情報を当該貨物が各国内に到着する前に、把握・分析するための措置を講じ又は講じることとしている状況にかんがみ、我が国に輸入される貨物に関するマニフェスト情報を、電子データにて事前に把握・分析するために必要な措置を含め、輸出入及び港湾・空港手続関係業務に係る業務・システムの最適化計画の中で検討する。なお、関係府省は、外航船舶運航事業者等の関係業界に対して、その理解を促進するための方策を検討する。
(2)船舶、港湾その他物流施設の保安対策の強化
改正SOLAS条約に基づくISPSコードや、後述のコンプライアンス・ガイドライン等を踏まえ、船舶、港湾施設その他物流施設における保安措置の強化を図る。このため、国際CT等の港湾施設における出入者・車両確認システムの自動化、全国共通化を行うことにより、なりすまし防止等出入管理の徹底といった保安性の向上を確保した上で、物流の効率化にも資するノンストップゲートシステムの構築等を進める。
(3)コンプライアンスに着目した施策連携
セキュリティ強化に向けて事業者毎の特性に応じ取り組むべき措置の内容は以下のとおり。
(1)物流事業者に関するコンプライアンス
国際海上コンテナに係るセキュリティ強化のために、外航船舶運航事業者、港湾運送事業者(ターミナル・オペレーター、海貨事業者等)、倉庫事業者、利用運送事業者及び貨物自動車運送事業者が、それぞれ自主的に取り組むことが望ましい具体的な措置とその評価に関するガイドラインを、既存制度との整合を図りつつ、官民が協働して、2005年度末を目途に作成する。
具体的には、社内体制の整備、社員の能力の向上、設備・機器等の整備、他の事業者との連携のあり方等について、電子タグの実証実験の成果等を踏まえつつ検討を行い、取りまとめるものとする。
(2)輸出入者に関するコンプライアンス
セキュリティ対策を強化することは、セキュリティ対策の強化の責任を果たそうとする輸出入者と行政の双方に共通する課題である。このため、輸出入者と行政のパートナーシップによって、双方が協力し合い、セキュリティを強化していくという方向性が必要である。また、コンプライアンスを高めセキュリティ対策を強化することは、それを実践する具体的行動が伴って、はじめて実現されるものである。したがって、具体的行動の内容を明確にしていくことが重要である。
また、セキュリティ対策の的確な実施のほか、その内容を行政と共有することにより、行政におけるリスクマネジメントに反映させ、その強化を図る必要がある。その強化を通じて、問題のある貨物の早期発見、重点的な取締りによって安全な国際物流や安全保障貿易が実現されるとともに、セキュリティ対策の強化の責任を果たす輸出入者の貨物についてリスクが低いことを確認することによって、効率的な国際物流にも資する。
輸出者、輸入者のコンプライアンスを行政に反映させるにあたっては、輸出、輸入それぞれの特徴を踏まえたものとする必要がある。これまで、輸出者等における輸出管理社内規程の整備等を通じて安全保障貿易の推進を図ってきたところであるが、貿易関係企業におけるコンプライアンスの実施も踏まえつつ、通関に関して、輸出については、コンプライアンスの優れた者について貨物を保税地域に入れることなく輸出申告を行い、輸出許可を受けることを可能とする制度を導入し、その適正な運用を実施していく必要がある。また、輸入については、関税等の納付の前に貨物を引き取ることを可能とする簡易申告制度を導入したが、それをより一層使いやすいものとし、引き続き適正な運用を実施していく必要がある。
(4)米国等における物流セキュリティ対策への対応
米国への輸出に際して、船積24時間前までにマニフェストを米国税関に提出しなければならないため、従来、船積1日前程度に設定されていたコンテナ搬入のCYカットが約48時間程度前倒しされているが、荷主、海貨事業者、利用運送事業者等と船会社の間での情報交換の方法や責任分担のあり方に関するガイドラインを、官民が協働して2005年度末を目途に作成し、III(2)(1)に掲げた評価指標の水準までリードタイムの短縮を図る。
また、米国の措置に伴う物流効率の低下等の実態に関する情報を日米間で共有し、セキュリティ強化と効率化の両立に向けたより良い方策を模索する。
(5)国際海上コンテナの陸上における安全輸送
国際海上コンテナの陸上安全輸送対策の強化のため、外航船舶運航事業者、港湾運送事業者(ターミナル・オペレーター、海貨事業者等)、利用運送事業者及び貨物自動車運送事業者が、それぞれ取り組むことが望ましい具体的な措置に関するガイドラインを、官民が協働して2005年末を目途に作成する。
具体的には、EDI及び電子タグ利用によるそれぞれの事業者間のコンテナ情報の共有のあり方等について、電子タグの実証実験の成果等を踏まえつつ検討を行い、取りまとめるものとする。
2 国際物流の効率化
(1)物流事業者のオペレーションの効率化
アジア主要港を凌ぐコスト・サービス水準を実現するため、スーパー中枢港湾プロジェクトを推進する。具体的には、民間ターミナル・オペレーターによる大規模CTの一体的な運営を支援するため、民間ターミナル・オペレーターが整備する荷さばき施設等に対する無利子貸付制度等を創設するとともに、CTにおける24時間フルオープン支援施設や広域港湾内のコンテナ物流の円滑化に資する「共同デポ」の整備を促進する。また、内航フィーダー輸送の効率化や、空コンテナ流動の効率化に向けた社会実験等を実施する。
また、新たに「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」を制定すること等により、流通業務(輸送・保管・流通加工等)を総合的・効率的に実施する事業者に対する支援措置を講じ、港湾におけるロジスティクス・ハブ機能を強化する。具体的には、港湾等の社会資本の近傍に立地し、情報システム等の効率化に資する設備を備えた流通業務施設を利用して、輸送・保管・流通加工等の流通業務を総合的かつ効率的に行う計画である「総合効率化計画」に関する認定制度を創設し、認定を受けた事業者に対して食品流通構造改善促進法、中小企業信用保険法及び中小企業投資育成株式会社法の特例による資金調達面の支援並びに倉庫業法、貨物利用運送事業法、貨物自動車運送事業法の許可・登録のみなし規定及び規制緩和等の措置を講ずる。
(2)FAL条約の締結等及び次世代シングルウィンドウの導入
2005年の秋頃に予定されているFAL条約の締結とあわせて、入出港届等のFAL条約対象手続については、関係府省共通のFAL様式を採用する。また、FAL条約対象手続以外の入港前の諸手続についても、項目を大幅に簡素化し、共通様式化を図る。さらに、夜間入港規制を廃止する。これらの簡素化手続を、11月までにシステム及び書類双方で行えるようにシステムの変更を行う等の措置を講じる。
さらに、操作方法の改善や、港湾手続に係る各種申請情報の基礎情報項目を、NACCSの船舶基本情報及び船舶運航情報に統合しデータベース化を図る等システム自体の見直しを進め、全ての手続の原則電子化を実現するとともに、より一層利用しやすい効率的なシステム構築を図る。
以上に関する具体策を2005年度中に輸出入及び港湾・空港手続関係業務に係る業務・システムの最適化計画として取りまとめ、システム改定作業に着手し、可及的速やかに同作業を完了し、新システムを稼働させる。検討の際は、申請者と行政で真に利便性の高いシステムとなるようチェックする機会を設ける。
(3)コンプライアンスに着目した施策連携(再掲)
3 ITの活用
(1)電子化促進に向けた環境整備
電子申請の原則化等に関する諸外国の動向を踏まえ、我が国で電子申請の原則化等を実施する場合に必要な措置と具体的な課題について、官民が協働して実務者レベルでの検討を行い、2005年度末までに検討結果を取りまとめる。その成果を踏まえ、関係省庁調整会議で具体的な電子化促進支援策を検討する。
なお、国際コンテナ物流においては、荷主、船社、船舶代理店、コンテナターミナル、海貨・通関事業者、陸運、検数・検量事業者等多くの関係者間で、各種手続や書類の授受、情報の交換、貨物の受け渡し・輸送が行われており、物流の効率化を図るためには、これらの事業者間での情報の伝達を円滑化することが不可欠である。しかし、これまでのところ、個別事業者での情報化は行われつつあるものの、関係者間で情報の共有化ができる状況にはなっていない。このため、電子化を前提とした業務プロセスの統一化、EDIのための国際標準であるUN/EDIFACT(United Nations/EDI For Administration, Commerce and Transport)に準拠したメッセージ、またその共通手引書(MIG: Message Implementation Guideline)を構築し、その普及を図る(港湾物流情報プラットフォームの実現)とともに、ebXML(Electronic Business using eXtensible Markup Language)等の新たな国際標準化への動きへの対応についても検討を進める。
また、上記の輸出入及び港湾・空港手続関係業務に係る業務・システムの最適化計画策定の取組等と連携して、官と民及び事業者間での電子化促進に向けたグランドデザインを検討し、2005年中にとりまとめる。この際、費用負担のあり方、費用対効果等も考慮しながら検討する。
(2)FAL条約の締結等及び次世代シングルウィンドウの導入(再掲)
(3)電子タグ等高度なITを活用したコンテナ管理体制の検討
国際コンテナ物流において、サプライチェーンとリスクのマネ−ジメントを効果的に実施するためには、サプライチェーン上の要所要所で現場の貨物情報を的確に把握し、迅速に処理することが不可欠である。このため、諸外国等の国際的な動向を踏まえながら、電子タグ等の高度なITの国際コンテナ物流への活用可能性を検討することが重要である。
検討にあたっては、電子タグについては物流効率化及びセキュリティ強化への活用が期待される一方で、様々な課題を抱えており、今後官民が連携して、国際的な標準化の動向や諸外国の制度等の整合も十分に考慮しつつ、次のような事項を中心に検討する。
・港湾物流情報プラットフォームと電子タグとの連携等
・民間事業者のコンプライアンスに着目した施策が実施される中での、民間事業者のセキュリティ確保 方策への電子シール等ITの活用
・電子タグの運用技術の検証及び改善、向上
・電子タグ等ITのグローバルな運用を考慮した、電子タグの新たな周波数帯の設定、再利用等のコスト低減方策、費用対効果の検証、ビジネスモデルの構築等の利用環境整備
・電子タグに係る国際的な標準化、各国における動向等の把握とわが国としての積極的対応
これらの検討課題のうち、検証が必要な事項については、関係省庁、関係団体、民間事業者等が、役割分担を明確にしつつ、相互に連携して効果的かつ効率的に実証実験を実施する。
(4)港湾施設の出入管理の徹底のためのノンストップゲートシステムの構築(再掲)
4 国際社会との協調
(1)交通セキュリティ大臣会合
セキュリティの確保と円滑かつ効率的な輸送を両立させ、テロに対し脆弱な分野における脆弱性を克服するため、2006年1月に東京で交通セキュリティ大臣会合を開催する。
当該会合においては、リスク管理及びサプライチェーンに関する一定の保安水準を満たす事業者への利益の明確化に関し、当該事業者が講じるべき措置等に関するガイドラインについて、各国政府及び関係国際機関が協調して作成する必要性や、その内容の検討のための専門家会合を実施してガイドライン案を検討し、その案をIMO等所管機関に対し提案することを議題とする。
(2)IMO、WCO、UN/CEFACT
(1)IMO
海上安全委員会や簡易化委員会において、物流セキュリティの強化と船舶航行の円滑化の両立に向けた検討がWGで行われており、貿易立国である我が国を支える海事分野の安定的成長を促すため、積極的に検討作業に参画していく。
(2)WCO
改正京都規約の早期発効のために、未受諾国がその障害を取り除き早期に受諾が出来るよう、我が国としても、積極的な技術協力活動を引続き実施していく。
また、「国際貿易の安全確保及び円滑化のためのWCO「基準の枠組み」」の策定に積極的に参画すると共にその実施に努める。なお、実施に困難を有する途上国のキャパシティ・ビルディング構築にも貢献する。
さらに、WCO税関データ・モデルについては、ハイリスク貨物特定のためのデータ・エレメントが特定・反映されており、WCO税関データ・モデルの実施を進める。
(3)UN/CEFACT
2004年9月にUN/CEFACTにより承認された「シングルウィンドウの設置に関する勧告とガイドライン」を考慮した次世代シングルウィンドウの導入に向けて、輸出入及び港湾・空港手続関係業務に係る業務・システムの最適化計画を検討する。また、民民手続においても、EDIのための国際標準(UN/EDIFACT及びebXML)の利用促進を図るとともに、我が国においてこれらEDIのための国際標準を活用する際に障害となるものがある場合は、積極的にUN/CEFACTへ意見提出し、円滑に使用できる環境の整備に努める。
(3)二国間協力
TSAのOSC(Operation Safe Commerce)等の取組と協力するとともに、我が国で実施する実証実験の成果を活用して、G-SCMにおけるセキュリティ強化と物流効率化の両立に向けたビジネスモデルの構築を目指す。
また、相手国毎の状況を踏まえ、協力関係を強化する。
VI 施策の推進体制
検討委員会を母体として、推進協議会を設置し、毎年度、施策の進捗状況を点検・評価し、必要に応じて施策の見直しを行なう。また、推進協議会の下に実務者レベルで、原則電子化の検討、実証実験結果の評価等分野別の部会を設置し、具体的な推進方策の検討を行う。
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