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6. コンテナ・セキュリティ・イニシアティブ (CSI)
6.1 CSIの目的
 2001年9月11日のテロ事件の後、米国関税庁(CBP) はコンテナ・セキュリティ・イニシアティブ(Container Security Initiative: CSI)の開発に取り組みました。CSIは、米国政府(税関当局)と外国政府(税関当局)の協定に基づいて実施されるプログラムです。CSIの主要目的は、米国の港と海外のCSI港を結ぶグローバルトレードシステムと国際海上輸送網の安全確保にあります。CBPは、潜在的に脅威とみられるすべてのコンテナを絞り込むため、主要国と協議をすすめ、2002年1月17日にCSI計画を発表しました。
 
6.2 CSIの4つのコア・エレメント
 CSIのコア・エレメントは次の4つです。
1)自動的情報システムの使用によるハイリスク・コンテナの絞り込み(targeting)
2)米国の港湾到着前に、海外の港でハイリスク・コンテナの事前スクリーニング(pre-screening)
3)大型X検査装置などによるハイリスク・コンテナの検査
4)Smart and Secure Containersの使用
 
6.3 CSIを導入した港
 2005年9月末現在、下記の40港がCSIを導入しています。(カッコ内:導入年月日)
ヨーロッパ(20港)
オランダ:Rotterdam (02年2月9日)
フランス:Le Havre (02年12月2日)、Marseille (05年1月7日)
ドイツ: Bremerhaven (03年2月2日)、Hamburg (03年2月9日)
ベルギー:Antwerp (03年2月23日)、Zeebrugge (04年10月24日)
スウェーデン:Gothenburg (03年5月23日)
イギリス:Felixstowe (03年5月24日)、Liverpool、 Thamesport、 TilburyおよびSouthampton(04年11月1日)
イタリア:Genoa(03年6月16日)、La Spezia(03年6月23日)、Livorno(04年12月30日)、Naples(04年9月30日)、Gioia Tauro(04年10月31日)
ギリシャ:Piraeus(04年7月27日)
スペイン:Algeciras(04年7月30日)
アフリカ(1港)
南アフリカ:Durban(03年12月1日)
南北アメリカ(4港)
カナダ:Halifax, Montreal, Vancouver(02年3月)
ブラジル:Santos(05年5月22日)
アジア(15港)
日本:横浜(03年3月24日)、東京(04年5月21日)、神戸および名古屋(04年8月1日)
韓国:釜山(03年8月4日)
台湾:高雄(05年7月25日)
中国:香港(03年5月5日)、上海(05年4月25日)、深(05年6月24日)
シンガポール:Singapore(03年3月10日)
マレーシア:Port Klang(04年3月8日)、Tanjung Pelepas(04年8月6日)
タイ:Laem Chabang(04年8月13日)
スリランカ:Colombo(05年9月29日)
アラブ首長国連邦(UAE):Dubai(05年3月26日)
 
6.4 積出港の税関とCBP検査官の協力体制
 CSI計画の下に、海外のCSI港にCBPの検査官が駐在し、疑わしいコンテナの絞込みに協力します。世界中で海上運送貨物の約90%がコンテナで輸送されていますが、米国に輸入される貨物額の約半分が海上コンテナで到着し、毎年米国の港で約900万個のコンテナが陸揚げされているのが現状です。そこで、船積国の税関当局とCBP検査官が協力して、潜在的に脅威となるすべてのコンテナを確認する技術・方法などの開発を行います。テロリストが海上コンテナを利用して、武器その他の危険物を米国に持ち込むだけでなく、海港を攻撃したり、船舶を破壊して海上貨物輸送路を遮断する危険が考えられます。したがって、CSIはテロリストの脅威に対する一種の保険であると考えられます。
 
6.5 CSI参加港の要件
1)CSI参加国の税関当局は、船積貨物、通過貨物、蔵置貨物、積替貨物を検査する体制・設備を維持しなければなりません。大型X線検査装置などの非破壊検査機器(Non-Intrusive Inspectional (NII) equipment)を使用してスクリーニングを行わなければなりません。この機器は、適正な貿易の流れを妨げることなく、コンテナを迅速に検査するために必要です。
2)CSI参加港は、米国の港との間に定期的に直接航路があり、多量のコンテナ貨物を取り扱っていることが要件の1つとなっています。
3)潜在的なハイリスク・コンテナを識別するためのリスク管理システムを構築し、このシステムの自動化に取り組むことが必要条件になっています。このシステムには、リスクを評価し、絞込みを決定し、かつベスト・プラクティスを認識するメカニズムを含みます。
4)CSI参加国の税関当局とCBPは協力して、コンテナの絞込みのための重要なデータ、情報処理装置およびリスクマネジメント情報を共有し、自動情報交換システムの開発をすることになっています。
5)港湾のインフラの無防備な点を調査・確認し、これを解決しなければなりません。
6)必要な人員を確保する総合的な計画を維持することになっています。
 
6.6 CSI計画のメリット・デメリット等
 CBPは、CSI計画のメリットとデメリットについて以下の諸点を挙げています。
1)CSI参加港は、貨物の流れに遅れが生じ、国際競争力が弱くなるといわれていますが、この点は、ロウリスク・コンテナの移動をより迅速にすることでカバーされます。コンテナの絞込み、スクリーニングのために、コンテナの積込みが遅れますが、その分は米国に到着したコンテナの迅速な通関でカバーできます。
2)スクリーニングおよび不積みコンテナに関する直接コストを誰が支払うかはホスト国が決めることになっています。しかし、米国では、当該コンテナの横持ち、検査、不積みに関連するコストは輸入者が支払うとのことです。
3)CSI港駐在検査官の人数は港の規模によって個別的に決定されます。また、CSIは相互主義に基づくので、CSI参加国の税関職員が米国の港に駐在して、米国から自国に向けて輸出される海上コンテナ貨物の絞込みを行います。05年10月現在、日本とカナダの税関職員が米国の港に駐在しています。
4)コンテナを利用したテロリストの攻撃が起きた場合、CSIプログラムの安全管理システムにより、最小限の被害で混乱を収拾できます。
5)CSIは貿易障害となるとの指摘がありますが、テロリストの攻撃が貿易を妨げる実際の貿易障害であります。テロ事件が生じたとき、貿易・港湾・海上輸送の安全確保ができない場合に被る損害は計り知れないほど大きなものです。CSIは、米国に到着した後でなく、米国向けのコンテナの積込前にコンテナの絞込み、検査を実施するプログラムであります。
 
7. テロ行為防止のための税関・産業界提携(C-TPAT)
7.1 C-TPATの概要
 テロ行為防止のための税関・産業界提携(Customs-Trade Partnership Against Terrorism: C-TPAT)は、旧US Customsにより2001年11月に提案されました。これは輸入者側のセキュリティ・プログラムで、2002年4月に導入されました。米国政府は2003年、CBPの監督の下で、グローバルサプライチェーンに係わる国家安全保障を強化する目的で、C-TPAT計画を整備しました。CBPは、サプライチェーン関係業者(輸入者、運送人、通関業者、倉庫業者、製造業者)との密接な協力によって、最高水準のセキュリティを確保できると確信し、C-TPATを実施しました。
 
 C-TPATに参加する企業は、CBPのガイドラインに従って、企業内のセキュリティ対策を整備し、サプライチェーン関係の取引先に自社のセキュリティ・ガイドラインを通知することが要請されます。2003年8月18日から、CBPは、メキシコ以外の製造業者と輸出用梱包業者を含む対米輸出関連業者に対して、C-TPATへの参加を奨励しています。基本的には、CBPから呼びかけがあるということです。
 
 2005年3月25日以降、米国の輸入者は、海外製造業者が基準を満たしていることを文書で証明することを、CBPにより求められています。“Low risk importer”には、“green lane”扱いとして貨物検査を省略し、到着即時引取が認められます(2005年現在)。
 
7.2 C-TPATへの参加手続
 C-TPATに参加するためには、以下の行為を実施する旨の合意をCBPと締結しなければなりません。
1)C-TPATセキュリティ・ガイドラインに従って自社のサプライチェーン・セキュリティ評価を徹底的に行うこと。
2)評価の対象は、手続上のセキュリティ、物理的セキュリティ、従業員等の人的セキュリティ、教育・研修、アクセス管理、マニフェスト手続、輸送関係セキュリティです。
3)サプライチェーン・セキュリティ・プロファイルをCBPへ提出すること。
4)C-TPATガイドラインに従って、サプライチェーン全体のセキュリティ向上計画を開発し、これを実施すること。
5)C-TPATガイドラインをサプライチェーンの他企業に知らせて、これらの企業との取引関係にガイドラインを導入すること。
6)2005年7月15日以降、C-TPATへの申請手続をすべてOnline C-TPATで行い、紙の書類による申請を受け付けないことになりました。
 
7.3 C-TPAT(改訂版)の影響
1)昨年3月25日、米国輸入者向けC-TPATの改訂版が発表され、新規にC-TPATに参加申請する米国輸入者について即日施行となり、既にC-TPAT参加者として認定されている輸入者は、180日以内に3段階を経て、社内のC-TPAT管理の内容を新規定にしたがって改訂しなければなりません。
2)今回の輸入者C-TPAT改訂の狙いは、海外の輸出者(製造業者、サプライヤー、ヴェンダー)をC-TPATサプライチェーン・セキュリティ・プログラムに取り込むことにあり、対米輸出者に大きな影響があります。
3)C-TPATの改訂により、米国の輸入者は、海外の輸出者(製造業者、サプライヤー、ヴェンダー)に次のことを要求することがあります。
・セキュリティ管理についてC-TPATと同等のセキュリティ基準を満たすこと
・C-TPATと同等のセキュリティ基準を満たしていることを文書で回答すること
・輸入者による検査を受けること
 
7.4 既にC-TPATに参加している企業
 改訂に伴い、輸入者C-TPAT基準を次のスケジュールに従って実施することになります。実施期日はすでに終わっていますが、クリアしなければならない基準を参考までに掲げます。
フェーズ1:物理的セキュリティの強化
1)コンテナセキュリティ(シール、検査、蔵置)
2)物理的セキュリティ(フェンス、照明、駐車、建造物の構造、施錠機器と管理、警報システム、ビデオ監視カメラ)
3)物理的アクセス管理(従業員、訪問者、配達、不審者に対する対応と排除)
フェーズ2:内部サプライチェーン管理体制
1)パーソナルセキュリティ(雇用前確認、バックグラウンドチェック、退職者手続)
2)手続上のセキュリティ(文書プロセス、マニフェスト手続、出荷および受取手続、貨物ディスクレ)
3)セキュリティ訓練およびテロの脅威に対する意識向上
フェーズ3:取引関係先要件
 輸入者は、取引先選定(製造業者、製品サプライヤー、ヴェンダーを含む)に対する文書化され検証可能なプロセスおよび、サプライチェーン内のすべての取引先がC-TPATセキュリティ基準、あるいは外国政府が実施しているC-TPATと同等のサプライチェーン・セキュリティ基準に適合していることを立証する文書を保持すること。
・証明書:セキュリティ基準に関する証明書を既に提出されている場合、セキュリティ・プロファイルを再度提出する必要はありません。改訂されたセキュリティ基準に適合しているか否かは訪問確認(Validation)で検証します。新基準を満たしてないことが発見された場合、輸入者はC-TPATのベネフィットの停止や資格の剥奪があり得ます。


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