11 船幅、満載喫水変更の検討
本研究開発におけるノンバラスト船型では船底傾斜による排水量減少を船幅増加のみで補ったが、縦曲げモーメントが大きくなること等から、船殻重量が在来船型に比べて大きくなる欠点がある。本章では、今後の具体的な船の計画、経済性評価等の参考とするために、船幅増加以外の対策についての検討を加えた。
具体的な対策としては、船幅だけではなく長さ、満載喫水の増加で補う、船幅の増加を抑え船底傾斜を小さくする(この場合、空荷状態の喫水を浅くできない場合は、多少のバラスト水が必要となる)等が考えられるが、図27に、船の型幅及び満載喫水を変化させた場合の必要バラスト量、軽荷重量、所要馬力の変化の概略推定結果を示した。ここで、●、○印は前章までの水槽試験等を実施したスエズマックスタンカーの在来船型、ノンバラスト船型である。
図27 
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満載喫水、船幅を変えたときのノンバラスト船型のバラスト量等
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スエズマックスタンカー LPP=267m DW=137,000ton
LPP/B(1-CP)>0.73 K=4m
空荷状態 dAP=7.9m dFP=3.0m
BW: 必要バラスト量=空荷状態排水量−軽荷重量−燃料1,800t
ΔHW: 船殻重量(在来船型に対する増加量)
P: 所要馬力(在来船型に対する増加量、%) 所要馬力は満載状態(14ノット)、空荷状態(16ノット)の平均値
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本図により、船幅や満載喫水を変えた場合の必要バラスト量、軽荷重量、所要馬力の概略を見積もることができる。満載喫水を16mに維持したまま幅を56mより狭くするとバラスト水が必要となり、船幅を50m(■印)にすると、空荷状態で約9,000トンのバラスト水を必要とし、馬力が在来船型の4%程度の減少に留まる。他方、この船幅50mでも、満載喫水を約17mにすれば、空荷状態のバラスト水が不要となる(□印)。この場合、B/dの増大も相まって馬力が在来船型に比べて10%程度減少する。
これまでの研究成果を基に、スエズマックスタンカー、VLCCについての試設計を行った。その概略仕様書を図28、29に、一般配置図を図30、31に、載貨重量等を表4に示す。また、載貨重量等の在来船型との比較を表5に示す。
試設計の過程で得られた知見は次のとおりである。
1)ノンバラスト船の経済性を上げるためにはその重量増を削減することが求められる。そのためには満載状態のサギングモーメントを下げるような配置上の工夫が必要であり、Inboard Ballast(Void)Tank(図32、33参照)の採用や機関室、ポンプ室をより短く、後方に配置することなどが有効と考えられる。
2)在来型スエズマックスタンカーでは2列タンクとなっているが、ノンバラスト船型では幅広化のため3列配置とした。最前部のサイドタンクで油を引けない部分ができてしまうことを回避するために2重底に傾斜を付ける等の工夫を要する。
3)縦曲げモーメント算定については、従来の計算式の適用性が不明であることから、本研究開発では水槽試験結果を用いて算定した。しかし、今後は、水槽試験を実施しなくとも直接的に設計に利用できる計算手法の開発が望まれる。
4)ノンバラスト船型の横強度については日本海事協会の「タンカーの構造強度に関するガイドライン(PrimeShip-Hull)」で確認した。
5)本研究開発の供試船型のように水面に対して凸になっている船型の船首船底スラミングに関しては、船首喫水を3mとしても、より喫水の深い在来船型のバラスト状態と同等であることが分かった。
図28 スエズマックスタンカーの概略仕様書
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